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第三百四十二話 ずれたツッコミ?過労死すんなよ!?

二話目。

 倒れていた二人は医者に運ばれ、死んでいなかったもののかなりの重傷とのことだ。フラグなんて立てたからこんな事に…

 二人が死んでいなかったことに安堵したが、この事件には謎が多い。

 一体誰があんなことをしたのか。二人は何故重傷を負わされたのか。

 手がかりは預けられたバッグと、その中に入っていた指輪のような石。それだけだ。


「なんでこんな事に…」


 他の手がかりを現場から探しつつも呟いた津瑠の言葉は、俺たち全員の気持ちを代弁していた。

 ここに来て最初の出来事がこれだ。ショックは大きいだろう。


「一応言っておくけど、今回みたいな事はこれまで無かったわ…」


 そうだ。こんなミステリーのような出来事は、今まで一度も無かった。

 しかし、この言葉は焼け石に水だろうか。何を言っても同じだと思うけどな。


「ああ、そうだ…こんな謎解きは今までに無かった…!」


「俊太?」


 なんか俊太の様子がおかしい。

 心なしか、目が輝いている様に見える。


「面白そうじゃねえか!こういうサスペンスみたいな謎解きはよぉ!!」


「不謹慎にも程があるだろ。喜ぶなお前は。」


「なっ…いいじゃねえか!誰も死んでねえんだから!!」


「死んでなければいいのかお前は。良い訳あるかバカモンが。」


 太郎の鋭いツッコミが冴え渡る。


「そうよ!しかもサスペンスじゃなくてミステリーでしょ!?」


 光はなんかずれたツッコミをする。


「そっち突っ込むのかよ!どっちも同じだろ!?」


「同じじゃないわよ!サスペンスは緊張感を楽しむもので、ミステリーは…」


 光はこの後、サスペンスとミステリーの違いについてを熱弁した。どんだけ好きなんだよ。

 なにあともあれ、俊太の言葉を皮切りにして陰鬱な雰囲気が無くなった。

 嫌な気分を無くしたいのは皆に共通する思いのようで、誰も元の雰囲気に戻そうとはしなかった。もちろん俺もだ。

 やはり俊太はこういうことに関しては天才のようだ。狙っていた訳でなくても、それがありがたく思えた。






「で、どうするの?言われた通りにこの村を出てく?」


 ギーナの台詞を聞いて、このバッグを預かった時に何かあったら村を出て行けと言われたことを思い出す。

 この村は危険ということだろう。現にこのバッグの持ち主は今でも…


「…仇をとろう。」


「え?」


「あの二人の仇をとろうよ…このままじゃ、そのバッグを預けてくれた人が浮かばれないよ。」


「いや、死んではいないんだが…」


「…そうだな。俺もそうしたい。」


「それはお前がしたいだけ」

「そうね。私もそうしたいわ。」


 津瑠の真剣なんだかボケなんだか分からない言葉に、またしても太郎のツッコミが冴え渡ろうとした。

 しかし、俊太とギーナも加わって止められてしまった。


「でもさ、そう危険を冒してまで仇をとる必要は無いんじゃない?預かったバッグが誰かに盗られたら、それこそその人が浮かばれないんだし。」


「だから死んでねえよ。」


 なんでこうも皆はあいつを死んだことにしたいんだろうか。

 その度にツッコむ太郎が過労死するだろ。


「確かにね。頭では分かってる。けど、気持ちが納得しない。理屈じゃないのよ。」


 その気持ちは良く分かる。さっきからツッコむ太郎も、恐らく仇をとりたいのだろう。

 だが、世の中は感情だけを優先にしてうまく生きていけるほど甘くない。時には理屈も重要なのだ。

 それを分かっているからこそ太郎はツッコミを入れるのだろう。


「そうは言ってもな。もし仇をとるとしても、誰がやったか分からないんだぞ?

 なのに、どうやって仇をとるんだ?あの二人はまだ意識が戻ってないらしいから訊く事も出来ないんだぞ?」


「それは…」


 太郎が言った事情により、本人から訊くという手段は使えない。

 それでどうやって仇をとるつもりだったんだ?

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