第三百四十一話 なんで用意したんだ?その方向は!?
一話目。
昨日は家族に捕まっててパソコンがあまり使えませんでした。
正月休みということで勘弁してください。
「なんでだよ!俺はそのバッグの持ち主だぞ!」
「このバッグは本当にお前のものか?」
「なに…?」
「お前の気配がおかしいんだよ。」
俺が感じた違和感の正体は、気配だった。
「人は悪い事をする時、またはしようとする時に、気配に悪いものが含まれる。盗みは言わずもがな悪い事だ。
しかし、気配に悪いものが含まれているのはそこで転がっているソイツじゃない。お前だけだ。これはどこからどう考えてもおかしいだろ?
つまりひょっとしたら盗もうとしているのはお前の方で、実は今倒れているコイツがそれを取られまいと逃げていたってことかもしれないと考えられる。
そう考えると、さっきそいつが何かを言いかけていたことにも説明がつく。あれは荷物を盗んだと言うところに反論しようとしていたってことなんだろ?」
今倒れている奴は、コクコクと頷いた。
そして、追いかけていた奴の顔はと言うと、もう少しだったと言うのに!と言わんばかりの悪人顔だ。
これで誰からしてもどちらが悪かは明白だ。
「さて、このバッグの中身を見せてもらうぞ。」
「見るな!」
飛び掛ってくる奴を軽くいなし、バッグの中身を見て取り出す。
そこにあったのは…
「…指輪?」
スポーツバッグくらいの大きさのバッグだというのに、入っていたのは普通の大きさの指輪…の形をしたパールのような色の石だった。
ぶっちゃけ拍子抜けだ。なんでこんなバッグを用意したんだ?これならポケットとかでもいいだろ。
「…ねえ守。それだけなの?」
ゴソゴソ…なかはゴミだらけ!
ということは無く。
「……ああ。これしかない。」
バッグの中をいくら調べても、この指輪以外は何も見つからない。
なんだこりゃ?
「返せ!」
「おっと、とりあえずこいつには渡せないな。」
バッグの中身が何であれ、そいつに渡すのはだめだと言う事だけは分かっている。
俺は再び飛び掛ってきた奴をまたいなして、前傾姿勢の奴を下方向に障壁を伸ばしてねじ伏せた。
「…さっきから出てくる黒いのは何なの?魔法?」
「あれは能力よ。能力っていうのは…」
なんか後ろで説明が始まっているが、俺はそれどころではない。
「これ、どうすればいいんだ?」
障壁はかなりの勢いで伸びたため、ねじ伏せられた奴は気絶している。強すぎたか?
「ああ、それなら俺の村に持ってきてくれ。こっちだ。」
俺たちは追われていた奴についていった。
着いた場所は、俺たちが目指していた村だった。こいつここの住人だったのか?
「じゃあ、俺はコイツを狩人のギルドに引き渡してくる。その荷物はあんたらが持っていてくれ。」
狩人のギルドは、こちらの世界の警察署のようなものなのだろうか。って、そうじゃない。
「なんで俺たちに預けるんだ?盗まれたくないような大切なものなら自分で持ってた方が安心だろ?」
普通、大切なものなら肌身離さず持っているだろう。なのに何故俺たちに預けようとするんだ?
「俺よりお前らの方強いからな。あんたらが持ってた方が盗まれなさそうだ…もし俺に何かあったら、その荷物を持ってこの村から速やかに出て行け。」
「おい!縁起でもない事を呟くな!不安になってくるだろ!!」
「…今のは聞き流してくれ。何かあったら…頼むぞ。」
「念押しすんな!」
そして、アイツは俺たちにバッグを預け、まだ気絶している盗もうとした奴を担いでいった。
…盛大にフラグを立てて行ったな。死ななきゃいいが…
「ねえ、あっちの方が騒がしくない?」
あれからしばらくして、キャビが人だかりを発見した。
その瞬間なにやら嫌な予感がした俺は、人だかりに走りだした。
「おい!守!いきなりどうしたんだ!?」
「嫌な予感がしたんだ!ちょっと行ってくる!!」
人だかりを突破するのが面倒なので、魔法で脚を強化して近くの建物の屋根に飛び乗って走り出す。
早く行かなければならない。そんな思いに駆られる。
しかし、あの方向に何が…
待てよ。確かあの方向は…まさか!
気配察知を始めるのと、人だかりの中心が見える位置に辿り着くのはほぼ同時だった。
人だかりの中心には……
「……」
「守!急にどうしちゃ…!?」
追いついてきた数人も、その光景に驚いていた。
何故なら人だかりの中心にあったものは…
「あの二人、まさかさっきの…」
村に来る前に出会った二人が倒れていた光景だったからだ。




