第三百四十話 いきなり事件?なにやら違和感が!?
一話目。
明日は来年…なんか大晦日って不思議ですね。
津瑠への説明が終わり、もう歩いていた森をそろそろ抜けるというところまで来ていた。
「そろそろ次の町ですね。」
「町?村じゃないの?」
どっちでもいいだろ…
「はい、地図には町と書いてあります。」
「珍しいよね~。この世界は村ばっかりだったし。」
「通ってきたところがたまたま田舎だったんじゃないの?」
地図を持ったリセスとその周囲は、どうでも良い論争を繰り広げ始めた。
今回新たに加わった令音と津瑠はそれを興味深そうに聞いている。
そんな風景をぼんやり見ていると、前から誰かが走ってきた。
「ハァ、ハァ…」
「そいつを捕まえてくれー!!」
走ってきた奴の後ろから、また誰かが走ってくる。
どちらも息を切らしていて、相当走り回ったと思われる。
「とりあえず捕まえるか。」
事情は分からないが、見逃して取り返しのつかないことになるよりはいいだろう。
捕まえてから逃がす事はできるが、逃がした後に捕まえるのは大変だからな。
「ほい。」
ビタン!
「いだぁ!?」
障壁を足元に出し、追われている奴を転ばせる。
顔から地面に突っ込んだので痛そうだ。
「ありがとう…って、その黒い物は…まさか!あんた達がレッドサーカス団を救った人達か!?」
「え?まあそうだが…なんだ?その話はそんなに有名になってたのか?」
「そりゃあ有名なサーカス団を救った話だからな!貴方達のことはこの国中に知れ渡っていると思うぞ!!」
…マジか。俺たち有名人になってるのか?
「…それはまずいですね。」
リセスが小さい声で呟く。反応からして追っていた奴が聞くことは無かったようだが、俺には聞こえた。多分他の皆も聞こえただろう。
リセスはお忍びでこの国中を回っている。その為、リセスが旅していることが知られたら都合が悪い。なにしろ一国の王女だしな。
もしかすると、それを知った奴らの中に国家転覆を狙った悪党がリセスの命を狙ってくるかもしれない。なので、余り目立った行動は出来なかったのだが…思いっきり目立ってしまったようだ。
しかし、追っていた奴は俺の障壁を見るまでその一行だとは気付かなかった。
それに、リセスは国民に顔が割れていないらしく、リセスを見てもまさかそれが王女だとはそう気付けないだろう。
でなければ、ギファードがリセスを見た時に王女だと気付いて騒いでいたはずだ。自分の国の王女が突然自分の家に来て、騒がないはずが無い。
つまり、自己申告や俺たちだと特定されることをしなければ、誰にも俺たちが有名なサーカス団を救った一行だと気付かないと言う訳だ。
「なんで追いかけっこなんてしてたの?」
「追いかけっこって…そんな呑気な雰囲気じゃなかったけど。」
追いかけっこにしては殺伐としすぎだろ。リアル鬼ごっこくらい必死だったぞ。
「ああ、そいつがバックを持ってるだろ?」
「ええ、持ってるわね。」
「それを取られてな。あのバッグが無いと俺が困るんだよ。」
「なるほど。スリって訳か。」
「ち、ちが…ぐえっ。」
「喋るな。言い訳は聞かねえぞ。」
追ってた奴がまだ立ち上がっていない追われていた奴を踏みつけ、喋る事を中断させる。
「そこまですることは無いだろ?ただでさえ無抵抗なんだからさ。」
追われている奴が立ち上がれないのは、空中固定の障壁で足を固定しているからだ。決して捕まえた奴がボーっとしてたとか立ち上がろうとしたのに立ち上がれなかったと言う訳ではない。
「ただでさえこっちは大事な荷物を取られてんだ。黙ってる理由も無いだろう。」
気が立ってるのは分かるが、わざわざ無抵抗な相手を痛めつける理由も無いと思う。
「そんなことよりそのバッグを俺に返してくれ。こっちは急いでるんだ。」
追っていた奴が急かす。
そこで俺はどこからか感じる違和感に気付いた。
その違和感はどこから……!
「それは出来ないな。」
俺はその申し出を断った。
明日の0時に短編を予約投稿しました。詳しくは活動報告へ。




