第三百三十八話 写真とはなんだったのか?見限ってくれ!?
一話目。
掲示板に載っていたという写真は、俺が机の下で震えている写真と、津瑠に引っ張られていく写真だった。
その写真を見て親友四人が黙っているわけが無い。当然質問攻めにされた。新聞に群がっていた生徒からもだ。
テキトーにそれをごまかし、昼休みは終わった。また昼飯が食えなかった。
神は言っている…今日は昼食を食べる定めではないと。
『そんなこと言ってません。』
アンタじゃない。
とにかく、いろいろすっ飛ばして放課後。
「今日はどうしたんだ?遅刻したりボケッとしたりしてよぉ。」
俊太がついにそのことを訊いてきた。
ここはさっきみたくテキトーにごまかして…
「ねえ、これは完全な勘なんだけど、さっきのスキャンダル絡みじゃない?」
…ごまかしてもこの様子だとバレるな。下手に隠すくらいなら、正直に言った方が良いだろう。
「ああ、実は…」
俺は昨日と今朝の事を話した。
「……という訳だ。」
「なるほど。元気が無くなる訳ね。」
話し終えるまで、結構な時間が掛かってしまった。
既に学校からは出ていて、もうすぐ四人と別れる場所に着くところだ。
「…自分がしたことに後悔するな。」
移図離が突然発した言葉を聞いて、俺はピタリと歩みを止めた。
「…どこかの本で読んだ言葉。何の本かは忘れたけど、結構気に入ってたから覚えてた。」
「そうだね。自分が良い事だと思ってしたことなら、そのことを後悔するのはおかしいよ。」
「…そうだな。」
津瑠をふった理由は不誠実だからだけではない。異世界の事だ。
俺は週末に異世界に行き、旅をする。
その旅は危険なものだ。幾度と無く魔物に襲われ、それを撃退した。
魔物を倒す事は決して楽なものではない。耐久力もあり、攻撃力も高い。一度攻撃がかすったことがあったが、その痛みはしばらく無くならなかった。
かすっただけでそれだ。まともに攻撃を受ければどうなるかなんて、考えたくも無い。
だから必死で回避しなければならないのだが、早い魔物は避けることで精一杯になるほど避けづらい。
その事を知れば、彼女はその旅についてこようとするかもしれない。そしてついてきて何かあったら…
だから俺は彼女をふった。危険な目に遭わせないようにするために。
「泣かせる話だね~、彼女を危険な目に遭わせないようにするためにふるなんて。」
「やかましい。」
「あんたに言ったんじゃないわ。そこで聞いてるお嬢さんに言ったのよ。」
「え…あ。」
学校を出た時点でついてきた気配。
俺は事情を話すことと罪悪感で頭がいっぱいになり、そのことを頭から除外していた。
その気配は、今まで気付かなかったが良く覚えのある気配だった。
「今の話は本当なの?」
津瑠だ。
全て知られてしまった。
今朝悩んでいたことも、ふった理由も。
「…本当だ。」
「なんでふった本当の理由を言ってくれなかったの?」
言える訳が無い。
そんな信じてくれるかどうかすら分からない事を。
本当の理由を言っていたら、津瑠は自分をフるためにわざわざ作った、下手な嘘としか思わなかっただろう。
「あれも本当の理由だし、なによりそれを言っても信じなかっただろうと思ったからだ。」
これで見限ってくれれば楽なものだ。
友達を一人失うというのは悲しいが、それで関係の一人の人間危険に巻き込む事が無くなると思えば、そっちの方が良い。
「……信じる。」
「え?」
「あの時に言われても信じなかったと思うけど、今は信じる。
でも、私のことを見くびりすぎだよ。多少危険でも、高壁君にならついていける。」
……恐れていたことが…
「あのね、恋人なら多少の危険くらい乗り越えていかないといけないんだよ。」
…告白を承諾したわけじゃないから恋人って訳じゃないんだが。
「だから私はついていくんだ。それに、もし何かあってもあの時みたいに高壁君が守ってくれるでしょ?」
…ついてこないで下さい。マジで危険です。最悪命落とします。
「おいおい、お前はモテモテでいいな~。」
「黙れ俊太。
…本当に来るのか?異世界は危険だ。それに、俺一人で津瑠を守りきれるかどうかは分からないぞ。それでもか?」
「貴方が行くならどこにでも。」
「……分かった。なら明日の朝、俺の家に集合な。早速異世界に行くから。」
「え?でも家が分からない」
「ならついて来い。こっちだ。じゃあな皆。」
「おう!じゃあな!」
「また明日!」
「じゃあね!」
「…シーユー。」
こうして俺たちは別れ、津瑠に俺の家の場所を教えた後に帰らせた。
…本当に大丈夫かなコレ。
まさかのレギュラー追加。
津瑠は短編にちょっと出てきて終わりの予定だったのに…どうしてこうなった?
作者ですら予想できない…それがこの作品だから!(理由になってない)




