第三百三十七話 出した結論は?台無しにされる!?
二話目。
気が向いたので書きました。
最近一日で二話以上投稿する事が無くなってきましたね。
一日で四話とかを書き上げていた時期が懐かしい…
「俺は分からない。勇気付ける事なんて誰にでも出来る。それが俺でなくてもだ。
あの時勇気付けたのが俺でなければ、津瑠はその俺じゃない人物に告白していたと思う。
だから、俺が勇気付けられたのは偶然。その偶然で津瑠の人生を変えるのは」
「その偶然を起こしたのは誰?」
「…?」
俺が考えたのは、悩んでいる所を正直に話すことだった。
必死に考えてそれか、と自分でも思うが、これしか思いつかなかったのだ。
だが、その途中に津瑠に遮られてしまった。
「その偶然をものにした人は誰って訊いてるの。
私は貴方に勇気付けられた。誰にでも出来るって言うなら、なんで高壁君しか勇気付けてくれなかったの?
あの時にそれが出来たのは高壁君しかしかなったからじゃないの!?」
「…!」
確かにそうかもしれない。
俺は”誰でも”に囚われ過ぎていたのだ。
誰でもが自分である事に、背徳感を持ってしまったのだ。まるで他人の物を奪い取ったように思って…
しかし、それは完全に勘違いだ。誰かが受け取る物とは、言い換えれば必ず誰かが受け取らなければならないのだ。それを俺が受け取った。それだけのことじゃないか。
「…確かにな。」
しかし、これは第一段階を突破したに過ぎない。
背徳感は無くなったが、付き合うかどうかはまた別問題だ。津瑠はともかく、こちらは恋愛感情を持っている訳ではない。
それなのに付き合ったりなんだりするのは不誠実だ。
というのは頭では理解しているのだが、俺の中に存在するリア充願望が告白を断る事を阻害している。
女の友達はたくさんいるが、彼女が出来た事は無い。なんで異世界の奴らって女ばっかりなんだろうか。まさか男女比が女の方に偏ってるのか?
そう考えると、町で歩いているのも男は若干少なかった気がしてきた。まさか本当に…
「…ねえ、返事を貰っていい?」
あ、思考が線路から車道くらいまで脱線した。
考えを戻そう。
とにかく、俺の中では明確な誠実さとリア充願望が闘っていて、決着がつくのは相当後になりそうなんだった。
でも何か見落としてるような気がする。俺はそれを必死に考えていた。
…あ。それか。
俺がそれに気付いた瞬間、長きに渡りそうだった闘いは終わりを告げた。
「…津瑠。」
「なに?」
「俺は…津瑠とは付き合えない。」
俺はきっぱりと、そう断った。
「……」
授業中、俺はぼんやりとしながら先生の話を聞き流しつつ、ただ朝の出来事を振り返っていた。
あれで良かったんだ。そうするべきだったのだ。
何度自分にそう言い聞かせたのか分からない台詞をまた自分に言い聞かせる。
あの後は大変だった。
津瑠は泣きながら理由を訊いてきて、それを俺が恋愛感情を持ってないから付き合うのは失礼だと、建前であり本命でもある理由をその度に言った。
そんなの関係無いと言ってくる津瑠に、関係無くないと言った。
魅力が無いのと言われればそうじゃないと答えた。
そのやり取りが何度も続いてしまったせいで今日は学校に遅刻してしまったが、そんなことはどうでもいい。
俺は大切な友達の心を、傷つけてしまった。
その事実が重く俺にのしかかっていて、周りのことなんて全く気にする余裕が無い。
罪悪感は何度も襲ってくる。だから俺はまた自分に言い聞かせる。仕方なかったんだと。
ため息なんて何度ついたか、数えられたものではない。
ただ、憂鬱な気分が心を支配していく…
「いたっ!?」
その時、頭に衝撃が走った。
何が起こったかを確認するため、意識を思考の中から外の世界へとフォーカスを合わせる。
そしてはっきりと目に映ったのは、チョップしたであろう姿勢の俊太だった。その周りには他の三人もいる。
「俊太?」
「俊太?じゃねえよ。いつまでボーっとしてんだ?授業終わってるぜ?」
そう言われて時計を見てみると、確かにもう昼休みの時間だ。
…え?俺って教室に来てから今に至るまでずっとボケッとしてたのか?
「それより聞いてたの?昨日の守の写真が、また新聞に載ってたって。」
「へ?俺の写真?」
「…全く聞いてなかったみたいだね。とにかく、これから僕達は掲示板までその記事を見に行こうとしてるんだけど、守も来る?」
「もちろん行く。変な記事だったらまた新聞部に殴りこみしなきゃいけないからな。」
「……分かった。じゃあ行こう…それと、」
光が何かを言いたそうに言葉を区切る。なんだ?
「何に悩んでるのかは分からないけど、いつまでもそのままでいるのは止めた方が良いわよ。俊太が台無しにするから。」
…確かにな。
俺は少し笑みを浮かべながら、先に行った四人について行った。




