第三百三十六話 長い繰り返し?固まった!?
一話目。
バトンを受け取ったので、活動報告に書きました。
興味を持った方は、作者のユーザーページから見てみてください。
津瑠に引っ張られて行った先は、一昨日行ったテーマパーク…のとある物陰。
何故ここに連れてこられたのか。引っ張られている間何も喋らず、話しかけても答えてくれなかった。
しかもなんかブツブツ唱えてたし…どんな魔術を使う気なんだ?
「一昨日、ここで私は貴方に励まされたよね。」
「そうだったな。」
一昨日、利区を制裁するために津瑠を勇気付けた。
そして津瑠は勇気を出して脅されている事を白状してくれて、おかげで俺は心置きなく利区に制裁を下す事ができた。
「それで…実は、あの時私…私…」
津瑠の顔は真っ赤で、何かを言おうとしているのは分かるのだが…なかなか言葉が出てこないようだ。
だが、今声を掛けてはならない。それを直感的に理解した俺は、津瑠が何かを言い切るまで声を掛けない。
「私は…私は…」
…一人称繰り返すの長いな。
五分後
「わた…わ…た…」
長い。
というか、一人称を言い切ることすら出来なくなっている。
更に十分後
「わ……………」
…わしか言えなくなってんぞ。
十五分後
「…………」
最早何も言わない。
向こうから聞こえてくるアトラクションの音や、時折聞こえる絶叫が虚しい。
相変わらず津瑠は真っ赤のままだ。頭に血が上って倒れたりしなきゃいいんだが…
「………」
もう、喋っていいよな?
津瑠に無理させる必要は無いよな?
ポン
「無理するな。」
肩を軽く叩いて手を乗せ、できるだけ優しい口調で言った。
「…いえ、言う。だから聞いてて。」
「わかった。」
本人が言うんだ。なら待つ。例え一時間掛かろうとな。
一時間後
「私!貴方の事が好きになりましゃ!」
…まさか本当に一時間掛かるとは…
しかも噛んだ…重要なところを言い切って安心したからか?
「……」
この告白を聞いて、思ったことがある。
…ちょろすぎじゃね?
何故そう思ったのかと言うと、これまでの俺の経験が原因である。
ピンチを助けたのは津瑠だけではない。トーナは出会った時、自衛もあったとはいえ魔物の大群を撃退したし、普段の魔物との戦いでも誰かのピンチになっていると助けることなんてざらだ。
なので俺としては、なんでピンチから助けたぐらいで恋愛感情が芽生えるんだ?と、疑問に思うのだ。
でも、現代日本においてそういう命に関わるピンチになる事は少ないからな…だからこうなったのかもしれない。
ちなみにこの間、噛んでしまった恥ずかしさからか、津瑠は真っ赤になって黙り込んでしまっている。だからこうして考える時間がたっぷりとできたのだ。
「…お~い、しっかりしろ~。」
「……」
声を掛けても、真っ赤になった津瑠はフリーズしたままだ。
ここからどれだけ待っても動かなかったので、仕方なく帰った。
後に聞いた話によると、この後正気に戻ったのはテーマパークの閉園時間ギリギリだったとか。
「待って~!」
翌日。
家からしばらく歩くと、津瑠に声を掛けられた。
「津瑠。」
「昨日はゴメン、告白の途中で固まっちゃって…」
「いいさ。むしろ置いていって悪かった。」
「それより、昨日の続き。付き合ってください!」
昨日の反省を活かしてか、素早く言い切った。
短い言葉にしたのも同じ理由だろう。
「……」
勇気付けることなんて、誰でも出来る。
あの場にいたほかの誰かが俺と同じことをしていたら、津瑠はそいつに惚れていただろう。
だから俺は今、この告白を了承することを躊躇している。
その”誰でも”を受け取ることに罪悪感があるのだ。
「えっと…返事は…」
「……」
わからない。どうすればいいのかが分からない。
了承するか、それとも…
「ねえ、何をそんなに悩んでるの?そんなに私に告白されるのが嫌だったの?」
「…俺は…」
必死に考えた末の答えを言うために、俺は口を開いた。




