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第三百二十八話 何かを諦めた?お恵みではない!?

一話目。

帰ってきてすぐに雪かき…勘弁してくれ~…

「こ、この二人はまさか…さっき掲示した新聞のカップルか!?」


「カップルじゃねえよ!勝手に勘違いすんな!!」


「守、また喋り方。」


 部員がなんか戯言を抜かしていたので、強く否定しておく。


「なんだって!?そのくせ息ピッタリだとかなんとかって噂」

「噂で記事なんて書くな!もっと確証を取れ確証を!!」


「…もう何も言わないわ…」


 ギーナが何かを諦めたようだが、今の俺には関係あるまい。


「とにかく!あの熱愛報道は取り消してもらおうか!これがさっき言った要求だ!事実無根で何も無いからなぁ!!」


「それに関しては同意する。」


「わ、わかった!わかったからとりあえず人質を放してあげてくれ!」


「え?」


 そう言われて勢いで取った人質を見る。


「ぐ、ぐるじぃ…」


 そこには苦しそうな表情を浮かべた新聞部員がいた。

 どうやら熱くなりすぎていたらしい。要求ものんでくれるようなので手を離す。


「ゲホッゲホッ…こ、殺す気…?」


「それに関してはマジで悪かった。すまん。だが、大本の原因がそっちにあることも忘れるな。

 とりあえず、訂正の記事は書いてくれるんだよな?」


「もちろん。ただ…」


「ただ?」


「二人を取材して良い?」


「「…は?」」


 なんで取材?


「最近校内をうろつくここの生徒じゃない集団とか、夏休みが終わってから顔が変わったとか、色々聞いてるからさ。

 その辺に関していろいろ訊こうかと」

「その情報は一般人進入禁止です。」


「…そうかい。じゃあ、この記事どうするかな…」


 そう言って新聞部員がギーナに放ってきたのは数部の新聞。

 それを読むギーナの横から覗き込んでみると…


「”高壁守、顔面整形疑惑”…”校内をうろつく美人集団と他数名”…”美人銀髪転校生高壁ルーマ、来てすぐに転校”…これはなんだ?」


「最近の記事さ。で、この記事に関して何かコメントは?」


「……黙秘権を酷使する事によって、全ての問いに対してノーコメントを貫く。」


「そうか…じゃあ、とにかくさっさと訂正の記事を書く。

 新聞部として、間違った情報をそのままにするのはいただけないからね。」


 だったら最初から裏を取ればよかったのに…

 そう思いつつ、俺とギーナは部室を後にした。


 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン


「あ!昼休み終わっちゃう!まだ昼食食べてないのに!!」


 …まあ、そんな日もある。

 その後、放課後にはその訂正の記事が掲示され、俺たちの誤解はなんとか解けた。







「バイト?」


「そうだ。」


 新聞部騒動があった日の夕食中、父さんがそんな単語を言った。


「バイトってアレ?旋盤とかに使われる」

「違う。アルバイトの方だ。」


 昼には忘れていたギーナの演技をする。

 このボケはいらなかっただろうが、なんとなく言わないといけない気がした。


「おっと、言い忘れていた。バイトするのは守じゃない。」


「え?んじゃ誰が?」


 俺の演技をしたギーナが答える。ギーナは演技のコツがつかめてきたようで、最初よりもなかなかうまくなっている。


「今居候しているデュアとルソード、更にフォルフとレイを除いた十人だ。実を言うと、そろそろ家の家計がまずい事になってきたんだ。食費のせいでな。」


「向こうと同じ状況ってことね…」


 ギーナの家でも似たようなことが起きていた。それをきっかけにして旅に出ることになり、流れで俺の家に居候という形でこいつらが居座っているのだが…人数が多すぎて食費がやばい、と…とうとうこの家の貯金もか。むしろ、良く四週間以上もちこたえたものだ。


「でも、店への事情説明とかはどうするの?皆には学歴も何も無いよ?」


「俺の友人に三人ほど飲食店を開いている奴が居てな。親戚の子供とでも言えば納得もするだろ。

 実はな、最近人手が足りないから何人か紹介してくれと頼まれたんだ。で、家も家計がやばくなってきたからその話に乗ったんだ…って、なんでギーナが学歴なんて知ってるんだ?」


「あ、えっと、前に守からこの世界について訊いてた時に一緒に訊いたの。」


「…そうか。」


 なんとかごまかせたか…

 伝手なら学歴もなにも関係ないか。

 しかし、その父さんの友人もなかなかナイスなタイミングで頼んできたな。ありがたいが、なんか釈然としない。

 どっかの女神様がお恵みでもくれたのか?


『私は関係ないですよ?』


 あ、そうですか。じゃあこれは100パーセント偶然と…父さんの運が良いんだかなんなんだか。


「と言う訳だが、働くのが嫌な奴はいるか…居ないみたいだな。じゃあ割り振るぞ。」


 居候組は一人残らず目が輝いている。

 恐らくこの世界の仕事に興味があるのだろう。こいつらはこの家で暮らす事によってこの世界の文化に触れてきたからな。

 …面倒な事にならなきゃいいが。

明日は朝から雪かき…勘弁してくれ~…

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