第三百二十七話 殴っておくべきだった?近道は遠回り!?
一話目。
なんというメロなんとかス回。
俺たちは激怒した。
必ず、邪知暴虐の新聞部を除かねばならないと決意した。
俺には新聞がわからぬ。ケータイ小説やらラノベやらを読み、時には異世界への冒険に興じる事もあった。
けれども自分への侮辱に対しては、人一倍敏感…でもないな。いたって普通だ。
はたから見ればどっちが邪知暴虐なのかと思うであろう思考を脳内に巡らせながら、俺は走っていた。
そう、目的地は新聞部の部室。そこに居る悪の部員どもの心を完膚なきまでに叩き潰した挙句に木っ端微塵に粉砕玉砕大喝…
「ストップ!何か恐ろしい事を考えてるっぽいけどストップ!正気に返って!」
「…はっ!俺は何を…」
怒りで我を忘れかけていた。それはさすがにオーバーキルだ。周りの黒いオーラも増えているように見える。
どうやら正気を失っていたらしい。ギーナの一声でなんとか帰ってきた。お帰り正気。
とにかくあいつらの悪の心を打ち砕き、あの新聞を訂正させ、俺たちに謝ってもらえばそれでいいのだ。それを念頭に入れて…
「守!前方に大勢に人が!!」
ギーナに言われて前を見ると、そこには大勢の人がいた。あの先に新聞部の部室があるのに…!
そいつらは壁をある一箇所を見ている。確かあの壁は…そうだ!南凧野新聞が掲示されてる場所だ!
南凧野新聞は一部だけ発行され、それをあの壁に掲示することになっている。
さっきの不良が持っていたのは間違いなく掲示されているはずの新聞。と言う事は…
「なんで新聞が無いんだ?」
「ああ、一人の生徒が持って行ったんだって。」
「ああ~、だから画鋲で止められてる部分以外は破られてるのね。」
これは新聞が無くなっている事で起きた人だかりってことか。
あの不良を一発殴っておくべきだったか…
「なんか考えてるとこ悪いけど、アレはどうやって突破するの?別ルートから行く?」
「…いや、力尽くで突破する!」
あの不良のせいで回り道しなければならないと言うのは腹立たしい。もしそうしたら、確実に後で殴る回数が増えるだろう。
身体強化系の魔法を使い、人ごみに飛び込む。
ああ、神々も照覧あれ!人の怒りとその他諸々の力を!!
人ごみの数人を力尽くで押しのけ、出来た隙間に肩から飛び込む。
押し寄せてくる人々を何のこれしきとかき分け続け、見事人ごみの対岸に渡ることができた。これで部室は目と鼻の先…
「遅いよ!」
「…なんでもう居るんだ?」
人ごみをかき分けて進んだ先に居たのはギーナだった。人ごみを渡り始めたのは俺の方が早かったし、他にそうして進む奴は居なかったのに…
「回り道したのよ。こっちのほうがよっぽど早くて楽じゃない。」
……急がば回れってな。ハハッ。
つまんねープライドなんて捨てて回り道すれば良かった…
と、燃えつきかけながらも足を動かした。
「ちょっと待って!」
その時、突如横から声を掛けられた。
「なんなんだ?俺た…私達は新聞部に急ぎの用があるんだけど。」
いつもの喋り方で話そうとしたらギーナから殺気が飛んできたので、すぐさま直した。
「あ、だったら私に話してください。」
「え?なんで?」
なんでこいつに話さにゃならんのだ…意味が分からない。
「だって私、その新聞部ですか…なにこの殺気!?」
…なるほど。飛んで火に入る夏の虫って訳か。
ギーナと軽くアイコンタクトを交わし、自称新聞部員の肩をつかむ。
「え、ちょ、本当になんなの!?あなた達は高壁守とギーナだよね!?取材のネタ提供じゃないの!?」
「…まあ、ある意味そうだな。」
「ただし…訂正のネタのね!」
新聞部員の肩から腕につかみなおし、新聞部の部室に
バーン!
と派手に入る。
「なに!?」
昼休み中に新聞を書き進めていたのであろう、部員らしき人は数人いた。
「大人しくこちらの要求をのめ!出なければこいつは地獄の一端を見ることになるぞ!」
「だ、誰でもいいから助けて…」
「守、喋り方。」
おっと、つい。
でも、ここは多分流してくれるだろう。強盗とかのテンプレな決まり文句みたいなものだしな。
さて、交渉を始めようか。
どんどん主人公が悪役になって行く今日この頃。




