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第三百十話 とうとうバレた?どっちか分からない返事!?

二話目。

五時間も寝ればこんな時間でも起きられるか…

「俺が逃がすと思うか……!?放せ!!」


「待って!勘弁してあげて!!」


 追いかけようとする俺を、ギーナが俺を羽交い絞めにして放さない。

 三人はそのまま逃げて行き、見えなくなってしまった。


「何故止めたんだ!」


「あのままだったら死人が出てたわ!!もう怒りを静め…うっ!」


「あ…」


 飛び散っていた電気がギーナに当たる。

 それを見た俺は頭が冷え、同時に飛び散っていた電気や火などが一度に消えた。


「……ゴメンな。」


 俺は走り出した。この時の俺はどれだけ酷い顔をしていただろうか。


「あ!守!!」


 ギーナの声も、この時の俺には届かなかった。







「…守、いや、ギーナ。やっぱり二人は入れ替わってたのね。」


 とうとうバレてしまったらしい。守もどこかに行っちゃったし…最悪な状況ね。


「……なんでそんなに重要な事を俺達に隠してたんだ?もし知っていたら、こんな事にはならなかったかもしれないのに…」


「………くだらない理由よ。」


 一瞬俊太のことを言おうとしたけど、今考えてみれば本当にくだらない理由だったのかもしれない。今はそう思えてくる。

 こんなにくだらないことでこんなに大変な事に…ティエスの実を食べた時の守もこんな感じだったのかもしれない。

 あの時の守は皆を心配させた事を後悔してたみたいだから…


「それじゃあ今走って行ったのは、ギーナじゃなくて守?」


「そうなるわ。そして、私がギーナ。」


「ややこしいな…っと、そうじゃない。早くアイツを追いかけないとな。」


「今行くのは止めた方が良いわ。精神が不安定な状態みたいだから、今何を言っても余計に酷くなるだけよ。」


 多分、今の守はいつかあったように、ストレスのせいで一時的にあんな事になったんだと思う。私が傷ついた事がきっかけで。

 私はなんとも無いのに…今の守の心の方がよっぽど重傷よ。


「……なあ、どういうことか誰か説明してくれ。何がなんだか俺にはさっぱりだ。」


「「「「「「「「「「「「『『……』』」」」」」」」」」」」」


 皆が呆れた目で俊太を見る。

 なんてバカなの…


「…プッ。」


「あ!おい!笑うなよ!!」


「あ、いや、なんてバカなのと思って…」


「なんだとー!?」


「「「「「「「「「「「「『『あははははは!!』』」」」」」」」」」」」」


「笑うなぁーーーーー!!」


 どうやら俊太が居ると、どんよりした雰囲気はどうしても出来ないらしい。

 そんな俊太に少し感謝しつつ、皆で思いっきり笑った。






 あれからどれくらい走ったのだろうか。

 あれからどれくらい経ったのだろうか。

 ギーナは大丈夫なのだろうか。皆は心配しているのだろうか。

 色々な考えが頭を巡り、軽く眩暈がする。

 ここがどこかは分からない。どうすれば良いかも分からない。


「ミャ~?」


 森の中の石の上に座っていると、動物の鳴き声がした。顔を上げて鳴き声の方向を見る。

 そこには一匹の赤い毛の猫がいた。


「お前は一人なのか?俺は…」


 猫に言おうとして思った。俺は一人なのだろうか?

 俺は皆から逃げてきただけで、皆が俺を追い出したわけではない。

 まあ、勝手に逃げただけとはいえ、今は一人には変わらないか…


「俺も一人なんだ。今は。」


「ミャ~。」


 そう言って猫を撫でる。猫も気持ち良さそうに鳴いている。

 動物って癒されるな…これがいつだかギーナが言っていたアニマルセラピーか。

 猫のかわいさに自然と笑みがこぼれる。

 最近フォルフの身内補正で犬派気味だったが、猫派に移ろう。これを見て犬派でいられるか。


「なあ、俺の悩みを話してもいいか?」


「ミャ~?ニャ~。」


「おお、ミャ~だけじゃないのか。じゃなかった。その返事はどっちか分からないが、勝手に話させてもらうぞ。」


「ミャ~。」


「俺は我を忘れて大切な友達を傷つけてしまったんだ…わざとじゃなかったんだが、結果はこのありさまだ。情けないよな…」


「ミャ~…」


 なんで話も分からない猫相手にそんな事を話しているのか…俺にも分からない。

 だが、不思議と少しだけ気が晴れた。誰かに悩みを話すと気が晴れるらしいからな。猫だし話が分かるとは思えないが。


「ありがとな。お前のおかげで大分気が晴れた。」


「ミャ~。」


 あの時の俺はどうかしていた。前にストレスで走った時に似てたので、ストレスのせいだろう。

 猫のおかげで落ち着いた俺は、走ってきた道を戻ろうと立ち上がった。

 だが滅茶苦茶に走ってきたので来た道が分からないことに気付いた俺は、また石に座り直したのであった。


「ミャ~…」


 うるさい。俺をそんな目で見るな。

 涙目?ハハッ、そんな訳が無いだろう。ちょっと目から水が出てきただけだ。目が潤う程度にな。

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