第三百八話 不毛で意味が無い?だから言っただろ!?
一話目。
『守、何故我等を使わなかった?』
あれから苦戦は長くは続かず、主にタカミのおかげで魔物の大群は全滅した。どうやらあれがピークだったらしい。
ちょっと前までは戦闘できないものは居なかったのだが、どうやらタムとトーナは戦えないらしい。でなければ戦闘している皆から離れてただ待っていた訳が無い。その上俺とギーナも戦えなかった。
そのため、少し前までは全員で魔物と戦っていて、自分の身は自分で守るという方針が出来ていたのだが…今回はそれが出来なかった。
庇う必要があるものが出来た、というのも苦戦を強いられた理由の一つでもあるだろう。
考えるのはここまでにしよう。とりあえずデュアをなんとかごまかさないと…
「だから、具合が悪かったって言ったでしょ?」
『確かにそう言ってはいたが…顔色は普段と変わらんように見えるからな。』
「表に出してないだけよ。」
『……そうか。では、何故それをギーナが答える?我は守に聞いたのだが。』
あ、しまった。つい答えてしまった…
言い訳言い訳………
「さっきの転移の影響かどうかは知らないけど、さっきから守に言語障害が起きてて…」
「起きてないわよ!」
「おいバカ!」
「しまった!あ、これが言語障害って訳なんだ…」
『……なるほど。大分深刻なようだな。』
ギーナがとっさについた嘘でなんとかごまかせたらしい。危なくなった原因もギーナにあるわけだが。
いや待てよ?そもそも俺がギーナの代わりに答えたからこうなったわけで、元はと言えば俺が悪いのか?
…止めよう。あまりにも不毛だ。意味が無い。
「実はさっきからこらえてはいるんだけど、私も言語障害が起きててね…とっさに言葉遣いがおかしくなるかもしれないけど、そうなっても気にしないで置いて。」
『分かった。』
なんとかなったな…
「移図離の転移で喋り方がおかしくなるのか…良いことを聞いた。」
俊太がなんか不吉な事を言った気がしたが、ボソリと小声で言っていたため聞こえなかった。
村に着いたが、この村はどこかおかしい。
何故そう思うのかというと、外に誰も歩いていないからだ。人の気配はしない。少なくとも外からは。
あたりの家には今でも誰かが住んでいるのであろう。でなければ、窓から見える家の中がこんなに綺麗なわけが無い。誰かが掃除している証拠だ。
それに…
「誰も居ないな…なんなんだこの村は?」
「いや、家の中にはしっかり居るぞ。ちゃんと気配がする。しかも俺たちを警戒してるらしい。」
「ん?ギーナは気配を察知できるのか?」
「…しかも喋り方がおかしい。」
あ、今の俺はギーナだった。
「あっ…さっき言った言語障害みたいね。」
「それに、私はもともと気配察知くらい出来るわよ。魔物を狩るのに必要だし。」
「……守、なんでそんなことを知ってるんだ?しかも喋り方は言語障害だとしても」
「あ、ああ!この前聞いたからな!!」
「え、ええ。確かに言ったわ。」
「なるほど。」
ギーナも嘘がうまいな。
と関心している余裕を持ちたい。今のでものすごくヒヤヒヤして安堵で一杯だった。
「とりあえず、どっかの家に入れば人には会えるんだよな?」
「おい馬鹿やめ」
ガチャ
俊太はすぐそこにあった家のドアを開けてしまった。俺の制止の声は間に合わなかった。
あの馬鹿、警戒されてるって言っただろうが…
ドシュ!
「どあ!?」
ドアから剣が突き出したが、紙一重で俊太には当たらなかった。あっぶね~…
「だから言っただろ…」
「言うのがおせえよ!危うく死ぬとこだったぞ!?」
「いや、そっちじゃなくて警戒されてるってさ。」
「こんな事になるなんて分かるか!」
「分かれよ!!」
察しが悪い奴だ。その内マジで死にかねないな。早くなんとかしないと…
「お前等は何なんだ!奴らの一員か!?」
剣が突き出してきたせいで穴が開いてしまったドアから、そんな声が聞こえてきた。
…奴らとは何ぞや?




