第三百六話 お互いに譲れない?結果オーライってことで…良くねえよ!?
一話目。
「ギーーーーーーーーーナーーーーーー!!」
俺たちは突然森に響いた声で我に返った。
この声はまさか…えっと…誰だっけ?名前忘れたままだった。
「この声は…シン…!」
ものすごくめんどくさそうな顔で隣のギーナが…言う。
あー、そうだそうだ、あいつシンって言ったんだった。やっと思い出せてスッキリした…じゃない。面倒だから早く隠れないとな。
障壁で隠れる場所を…出ない!?あ、今はギーナの体だからか…って、どうすりゃいいんだ!?
あ、ギーナに頼めばいいのか。
「ギーナ!隠れるための障壁を頼む!」
「障壁の創り方なんて知らないわよ!」
「なに!?そしてその喋り方は止めてくれ!!」
「守こそ!って、来るわよ!」
「だからその喋り方は」
「ギーーーーーナーーーーー!!」
シンの声がしたので急いで隠れる場所を探すが、木しかない。
隠れる場所が見つからないのであっけなくシンに見つかってしまう。あーあ、ギーナの奴かわいそうに…
「ギーナ!捜したんだよ!」
あれれ~?おかしいぞ~?なんで俺に来るのかな~?
あ、ギーナと入れ替わったせいか。なるほど。
「大丈夫だったかい!?今すぐ戻ってあいつらに復讐を」
「ゴチャゴチャうるせえーーーーー!!」
ゴッ!!
「うわあああああああああああああああああああああ!!??」
あまりのウザさに、ついついナンパ以上の力で殴り飛ばしてしまった。
間違いなく今のは魔法で強化された一撃だっただろう。無意識だったが。
その一撃を受けたシンは、空へと消えていった。
「ナイスナックル。」
ギーナはというとパチパチと拍手しながら笑顔で言ってきた。
仮にも知り合いなんだからそれは無いだろ…と、前の俺なら思っていたかもしれないが、今の台詞だけでかなりうんざりした。ようやくギーナの気持ちが分かった気がする。そう思うと、この拍手にも納得がいくというものだ。
「ああ。それより、皆のところに戻らないとな。いつまでもここに居ても何もならん。」
「そうね。」
俺たちはキャンプ地点へと歩き出した。
だが、一つだけギーナに言いたい事がある。
「…俺の姿なんだからその喋り方は止めてくれ。」
「それは私もよ。」
どうやら、喋り方はお互いに譲れないらしい。
「あ!やっと戻ってきた!」
皆のところに着いたのは歩き始めてから数分後だった。
避難させる気ならもっと遠くに転移させろよ…と思ったが、合流する事を考えると近いところの方が良かったのかもしれない。
だが結局シンに出くわしてしまったので、本末転倒になってしまったが。
まあアイツを追っ払えたんだし、結果オーライって事で…良くねえよ。ギーナと入れ替わっちまったんだよ。
一応、歩いている途中にギーナがレアモンドの結晶と機能や性質を付ける能力のことを思い出したのだが、レアモンドの結晶を包む障壁が消せなかったので断念。ちくせう。
あの能力が使えればそこら辺の物に入れ替わりが出来る機能を付けて戻れたのに…あ、ギーナがその能力の使い方も分からなきゃ駄目じゃん。
「遅いぞ!何をしてたんだ!?」
「遅くもないだろ…数分だったし。」
「ん?ギーナ、どうしたんだ?喋り方が変だぞ?」
「ああ、実はムグッ」
「実はさっきシンに会っちゃってね!アハハハハ!」
ギーナが解説を始めようとしたところで俺にある考えがよぎったので、ギーナの口を塞いでごまかす。
「ちょっと待ってて、ギ…守に話があるから。」
「お、おい!」
「…挙動不審。」
明らかに怪しまれつつも、ギーナの腕を引っ張って皆から離れる。
話が聞こえないように充分な距離を開け、ギーナの腕を放す。移動している間は、暗についてくるなと言うかのように皆を見ていた。
「どういうつもり?まさか、皆に隠す気じゃないでしょうね?」
ギーナは空気を読んでくれたのか、小声で話してくれた。
「そのまさかだ。」
俺も小声で返す。
「へえ…一応理由を訊いて良いかしら?」
「それを説明する気でここに来たんだ。で、その理由だが…」
俺は少し間を空け、理由を言った。




