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第三百五話 って、何故に?ノリノリだった!?

お詫び?の二話目。

 走ってきたギーナは、俺の腕に掴まった。


「って、何故に!?」


「守!今すぐ転移して!お願い!!」


「転移!?転移なら移図離の領分だろ!?」


「…転移ならお任せ…あ。」


 移図離が転移させたのだろう、障壁やナイフの鞘で世界間を転移する時のような感覚がした。

 …あ、転移ってナイフの鞘を使って別の世界にってことだったのか。急な行動に驚きすぎて頭が働かなかったみたいだな。






 目の前の景色が変わり、多くの木が目に入る。遠くには育毛剤の村が見えた。キャンプ地点に移動している最中にこんな景色を見たような気がする。

 そう言えば、転移する直前に移図離があって言ってたような…アレはなんだったんだ?


「きゃああああああああああああ!?」


 突然大声が隣から聞こえた。

 その声は中性的だが、若干男寄りのものだ。分かり辛いが。

 男がキャーじゃねえよ…耳が…

 と思って声の方向を見る。


「あれ?リセ…じゃない!?」


 するとそこには、リセスっぽいがリセスではない誰かの顔があった。ある部分が目に入ってそうではないことが分かった。ある部分がどこかなんて訊かないでくれ。

 その顔は、俺を見て目を見開いて固まっている。

 そう言えば声が高くなっていたような…また女になったのか?

 だが、今回は果物を食べたわけでも、宝玉に触れたわけでも無い。移図離に転移させてもらっただけだ。どこに性転換の要素があるんだ…

 と、そこでいつもと服の感触が違うことに気付く。

 いつの間に着替えたのだろうか?と思って見下ろしてみると、


「これは…ギーナの防具?」


 ギーナがいつも着ている、皮の防具が見えた。

 ……まさか…まさかとは思うが…


「体が入れ替わったのか?」


 しばらく俺たちは硬直したかのように動かず、復活までかなりの時間を要した。







「消えた!?ギーナが消えた!?」


「……ギーナ様?ギーナ様!?一体どこへ行ってしまわれたのですか!?」


 残念すぎるイケメンと筋肉は、突然ギーナが消えたことに驚き、喚いている。腕をつかまれていた守は全く見えていなかったようだ。


「…イエ~イ。」


 移図離がウザイあいつを困らせる事が出来たことに対して喜んでいるのだろうか。棒読みで歓声(?)をあげ、ピースしている。

 顔文字にすると、


 v(・_・)<イエーイ


 こんな感じだろうか。我ながらなんだコレ。あんなに無表情で、なおかつ腹に黒いものがあるピースなんて見たくもなかった。


「君はボクのギーナに何をしたんだ!」


 残メン(残念なイケメンの略。残った麺みたいだが)は、怒りが全く隠れていない顔で移図離に詰め寄る。


「……」


 俺達五人にしか分からないような微妙な変化だったが、移図離がニヤついた。

 あの表情が出た時は大体ろくな事にならなかった事を、俺は痛いほど知っている。何を言うつもりなのか…


「…ギーナは最早私の手の中。絶対に返さない。」


「なんだと!?ふざけるな貴様!!」


「…おっと、私に手を出して、ギーナがどうなっても良いのか?」


「グッ…」


 移図離は食って掛かる残メンに、悪役染みた台詞を言って黙らせた。

 完全にノリノリである。


「ギーナ様!ギーナ様ーーーーーーー!!」


 誰でも良い。この筋肉を黙らせてくれ。


「やかましい!」


 パアアン!


「ハブッ!?」


 タカミのハリセンは迷い無く筋肉の顔の横に行き、そのままの勢いで直撃した。

 その一撃を貰った筋肉はハリセンの勢いのままに倒れ、そのまま気絶した。

 ナイス、タカミ。


「………太郎、なんか悪い顔してんな。」


 俊太に言われたくない。お前も大概な顔してんじゃねーか。


「クソッ!だが、ここにギーナが居ないことくらい分かっているからな!すぐに捜し出して、貴様をギーナと一緒に倒してやるから待っていろ!

 ギーーーーーーナーーーーーーーーー!!!」


 と叫びながら、残メンは走り出した。

 …なんだったんだあの二人は?名前も言わずに…

追記 ハスキーボイスの意味を中性的で男よりの声だと勘違いしていたので修正。何故調べなかったし。

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