第二百九十四話 まだ作戦は続いている?使いまわし良くない!?
三話目。
「なんで貴方がここに!?しかも、病欠だと聞いていたのに元気そうな顔で…まさかサボっていたのですか!?
終わったな…所詮、守は馬鹿なのだ…と思った諸君へ。
…何を勘違いしているんだ?俺の作戦はまだ終了していないぜ!!
俺はずっと仕込んでいたのだよ!生徒会長との会話の間になぁ!!
「高壁守…聞き覚えがありませんね?誰ですか?」
と腕を組みながら、演技力を使って本当に知らないように言う。
苦しいごまかし方?違うな。これも作戦だ。
「なっ…この期に及んでそんな言葉で…ごま…かせ……す、すいませんでした!」
突然生徒会長の態度が変わり、謝るなりこの場を去っていく。まあ、向こうは人違いだと思ってる訳だしな。
何故かって?そりゃ簡単だ。俺はローブを創った後、生徒会長に会う前にレアモンドの結晶に触って事前に女になっていたからな。
普通性別が違う人物を同一人物として見れるのか?答えは否。そんな訳が無い。
生徒会長との会話の中で言葉遣いがいつもと違ったのはこの作戦のためだ。
まさかここまで追い詰められるとは思って居なかったが、向こうもまんまと策に嵌ってくれた。
これも生徒会長に見つかって説教を食らっている間にギーナに見つかるということを避けるためだ。
さて、ギーナに見付からないように逃げ
「見つけたわよ!」
…見つかりました~。
い、いや、生徒会長に使った作戦を使いまわし…もとい再利用して…
「あなたは誰ですか?私は知りませんが」
「そんな手に引っかかると思う!?さっき女になった守を見てたのに!」
って、そうだったー!思いっきり見られてたんだったー!最悪だー!!
作戦が通じないと分かった俺は一目散に逃げだした。
結果から言うと、勝った。
ついに地元補正が天才補正を凌駕したのだ…運もあっただろうが。
恐らく、夏休みの間に溜まりに溜まった運は、たった今尽きただろう。
また不幸の始まりだー!アッハッハー!(泣)
恐らく家で待ち伏せされているだろうが、なにも出入り口は一つではない。裏口からだろうが、窓であろうが帰る事は出来る。
ギーナ達には悪いが、あの世界には行けない。居てはならないのだ。
あいつ等が好いているのは向こうの俺であって、この俺ではない。
俺に向けられる好意は、本来向こうの俺に向けられるものだ。そんな居心地の悪くなるような、背徳感が感じられるような好意なら受けたくない。
となると、またしばらく異世界で旅をすることになるんだろうな…現代だと堂々とあっちこっちに逃げることが出来ないしな。
そう考えながら帰路を急ぐ。早く帰らないと碌な目に遭わないことは学習済み。触らぬ神に祟り無しっと。
「やっと見つけた!」
…………忘れていた。俺の場合は向こうから触られに来るんだったな。そして爆発する。いつものことながら理不尽だ。
「……どうしたら俺を諦めてくれるんだ?俺は向こうの俺じゃないんだ。」
「…そんな事、分かってるわよ。」
あれ?知ってたのか?
「なら何故…」
「…頭では分かっていても、心では理解できない。そういうことよ。」
ギーナは切なそうな表情をして言う。
知っているのだろう。こんな事をしても無意味だと。
分かっているのだろう。俺は向こうの世界の高壁守と同じ存在ではない事を。
だが、それでもなお自身の想いを止められないのだ。きっとその事は本人にとっても辛いのだ。
俺たちの中では最も頭が良い天才だからこそ、その結論に辿り着いたのだろう。
天才故の悩み、という訳か…まあ、俺は知ったかぶりしているだけで、本人の辛さは微塵も分かっていないのだろうがな。
「……そうか。なら、俺から一つ提案がある。」
「何?」
こんな事しか思いつかない自身の頭の悪さを呪いそうになるが、それでも俺のために、そしてギーナのために、言う。
「俺と勝負しろ。そして、その勝負に俺が勝ったらスッパリ諦めるんだ。」
「負けたら?」
「…お前らの好きにしろ。で、この勝負、受けるのか?」
これなら後腐れが無いだろう。要するにギーナにはきっかけが必要なのだ。俺を諦めるきっかけが。
なら多少強引でも、そのきっかけを作る。それが俺に出来る事だ。
俺はそんな事を考えながらギーナの返事を待った。




