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第二百九十二話 ついて来る意味が無い?あばよ!?

一話目。

 

「俺のターン!ドロー!」


 異世界に到着した俺は、有無を言わせず向こうの俺の障壁を奪う。


「おい!何がドローだ!返せ!」


「後で返す!今は借りるだけだ!」


 と言って転移しようとしたが、


「逃がさないよ?」


「そう簡単に逃げられるとでも思った?」


 ギーナとタカミに捕まった。


「放せ!ちょっと物を取りに行ってくるだけだ!」


「なら見張り役としてついていく!」


「必要ない!」


 俺は元の世界を思い浮かべる。

 そして、二人を振り払おうとする。


「なら勝手についていく!」


「ついて来なくても良い!」


「出来ぬ!」


「なんでお前まで!?」


 俺は準備が完了し、転移しようとする。

 その時ギーナとタカミに加えて、どういう訳か向こうの俺まで腕を掴んできた。

 結局誰も振りほどけなかった俺はそのまま転移する。マジですぐに済むのに。


「ただいま!」


「あれ?今行ったはずじゃ…」


「忘れ物だ!」


 転移は一瞬だった。リビングに戻ってきた俺は、まだ残っていた皆に色々言われながらもまだ腕を掴んでいる三人を引っ張って俺の部屋に行く。

 部屋についた俺は、机の中の鞘つきナイフとレアモンドの結晶を引っ張り出し、先ほど行った平行世界を思い浮かべる。

 で、戻ってきた。


「しゅーりょー。」


「え?アレで終わったの!?」


「本当についていく意味が無かったわね…」


「だから言ったのに。ほれ、返すぞ俺。」


「え?ああ…」


 俺は世界を移動する手段が欲しかったために鞘つきナイフを取りに行ったのだ。あと念のためレアモンドの結晶も。


「それより、今女になってるが…」


「あ、しまった!直に触れたからか!」


 俺は急いで男に戻り、レアモンドの結晶を障壁の中に封印する。


「……本当に顔変わってないわよね。」


「私もそう思う。」


「まさかここまで変化が無いとは…」


「お前ら!特にそっちの俺!自分の事だぞ!!」


「そうだった!チクショー!」


「……漫才…」


「「漫才じゃねえよ!」」


 なんでこんなに漫才チックなやり取りしか出来ないんだろうな俺たちは…

 と考えつつ、俺たちはトーナの家へ向かった。







「という訳で、こんな事になってる。」


 四人でトーナの家に着き、俺たち四人以外の皆が「守が二人いる!?」と騒いでいる中説明したのが数十分前。

 誰も聞いてないことに気付いたのが十数分前。

 皆が落ち着いてようやく話を始められたのが数分前。

 例の本にもリセスのときに似たような騒動があったみたいなこと書いてあったぞ。耐性つけとけよ…


「……だから守が二人いると。」


「お得だなお前ら。」


「何がだ?」


「やはり鈍感か…」


 駄目だコイツ…早くなんとかしな…いや、こういうことは本人が気付かないと駄目か。

 なら、駄目だコイツ…早くなんとかなってくれ…か。これだけ聞くと他人任せの駄目な奴じゃねえか!


「んで、連れてこられたは良い(俺的には良くない)が、俺は具体的に何をすればいいんだ?」


「基本は私達の旅に同行してもらうつもり。」


「…俺の世界での冒険は?学校は?」


「……しばらく休むってことで。」


「何だその間…実は考えてなかっただろ。」


「そ、そんなことは…」


「あるだろ!俺必要ねえじゃねえか!用が無いならこんなところに居られるか!俺は帰るぞ!!」


「おい!それは明らかに死亡フラグだろ!」


「確かにそうだが俺は帰るぞ!」


「させない!」


 機能付きナイフを持って元の世界に戻ろうとする。

 だが、ギーナがナイフの柄を掴み、引き抜いた。


「このナイフは預かっ」

「あばよ!」


 だが、機能がついているのは鞘の方だ。残念ながら今ギーナが持っている方には何の機能も無い。ただのナイフだ。

 俺は逃げたことを確信した怪盗の気分ってこんなのなんだな~と思いつつ、転移した。

 転移する俺の腕には誰も掴まっていなかった。

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