第二百九十話 悪いのはお前じゃない?考える事を増やすな!?
四話目か…今日だけでも結構投稿したな…
「無い!無い!無い!どこにも無い!」
トーナの家の周りを捜しているが、見当たらない。
「な、なあ…」
「なんだ!?」
俺に話しかけてきたのはこの前の生意気な子供。
「今必死に探し物してるから後にしてくれ!」
「なあ、何を捜してるんだ?」
「黒い直方体の石だ!」
父さんにあげた障壁は、直方体だった。自然の石と間違えないように綺麗な直方体にしていたのだ。
「え?ひょっとしてこれか?」
「ん?って、それだ!それを捜してたんだ!」
子供が持っていたのは、間違いなく俺が捜していた障壁だった。
「なあ…これはやるから、一つ聞いて欲しい事があるんだけど…」
「なんだ?」
まさかルソードのことじゃないだろうな?だったら諦めるしか…
「アンタ、おれのせいで怪我しただろ?だから謝ろうと思って…」
「お前が謝る必要は無い。悪いのは油断した俺と、あの三人だ。肩の怪我なんて、完全に自爆だったしな。」
あの一件で、この子供は何も悪い事をしていない。むしろ、あの時よくルソードを取り戻してくれたと褒めてやりたいくらいだ。
「むしろ、お前はあの剣を取り戻してくれたしな。ありがとう。」
「あ、ああ…じゃあ、せめて礼は言わせてくれ!ありがとな!お姉さん!」
……………………
「え?なんで固まるんだ?顔が引きつってるぞ…?」
ハッ!思考が止まっていた!
「あ、あのな…俺は男なんだが…」
「え!?マジで!?じゃあおれと同じだな。」
「同じ?」
同じってどういうことだ?
「ああ、おれもよく男に間違えられて…」
「え?お前女だったのか?」
マジでか。一人称と言葉遣いからして男だと思ってたぞ。
顔も服装もどっちとも言えるような格好してるからそりゃ間違えられるな。
「そうだけど…反応薄いな。」
「ああ、俺自身そうだってのもあるけど…この前同じような奴を見たからな。」
文化祭でな。あの女装は完璧だった。
っと、せっかくこいつと会ったんだ。危うくアレを忘れるところだった。
「話は変わるが、もうこの剣は諦めるのか?」
俺は背中のルソードを指差して訊く。
「え…ああ。諦めるよ。おれにあの剣は似合わないからな。」
「そうか。じゃあ、代わりといってはなんだが…」
俺は能力を使い、障壁で出来た黒い剣を創る。鞘も忘れずに。
「え!?どこからそんな物を出したんだ!?」
「能力で創った。」
「能力!?能力持ちだったのか!?」
「そうだが。とにかく、これをやるよ。大事に使ってくれ。」
そう言って、たった今創った剣を子供に差し出す。
「え?いいのか?」
「ああ。どうせ能力でいくらでも創れるからな。これを持って旅に出てくれ。」
「おう!約束だぞ!!」
子供は嬉々として障壁の剣を受け取る、その時、
「あ!いた!そこを動くなー!」
タカミの声がした。声がした方向を見ると、ギーナもいるようだ。
「じゃ、俺は行くぞ。時間も無いみたいだしな。」
俺は走ってくるタカミとギーナを見て言い、転移する前に子供をちらりと見て少し微笑む。子供も少し笑い返した気がした。
俺はそのまま転移した。
「……帰ってきたか。」
気が付くと、俺は自分の部屋にいた。あ、そう言えば靴履いてなかった。足が滅茶苦茶汚れてやがる。洗っとかないと母さんに叱られる。
「さて、足洗ってくるかなっと…………」
……今、見てはいけない、もしくは見えてはいけないものが見えてしまった気がする。
まあ、気のせいだろ…
「ま、待って!置いて行かないで!」
「そうよ!さすがに置いてけぼりは無いんじゃない!?」
………俺の肩を掴んでいるギーナとタカミの幻覚が見える。あと、幻聴も聞こえる。
い、いや、これはアレだ。こっちの世界のギーナとタカミは現代に留まってたのかもしれない。きっとそうだろううん。
「ん?なんで守がここに?確かさっき台所に…」
…考える事を増やさないでくれるかな~母さん。
「……俺はたった今異世界から戻ってきたばっかりだぞ?」
「え?何言ってんだ。一時間前に戻ってきて、今昼飯食ってただろ?」
………はぁ?




