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第二百八十九話 仮説確信?何故に落とした!?

三話目。

 最終的には、ギーナが俺を監視する事になった。

 一応デュアとルソードは居る。ルソードの存在はまだ気付かれてはいないらしいが。

 多分、家に元々置いてあるオブジェか何かと思われているのだろう。全く気にも留めなかった。

 俺は怪我人なので、ベッドに横になることを強いられている。

 そう。俺の意思じゃない。強いられているんだ!


「………」


「………」


 俺が眠るように目を閉じているため、ギーナも黙っている。

 眠っているかもしれない人間に話しかけはしないだろう…ん?この前ルーがそうしてたような…


「……起きてるんでしょ?」


「…ああ。」


「少し聞きたいことがあるんだけど…良い?」


「ああ。」


「じゃあ聞くけど、一体どうしたの?」


「…どういうことだ?」


「今の守はいつもと違う。さっき私達が言い合ってたとき、完全に戸惑ってたよね?」


「見られてたか…」


「偶然チラッと見えただけよ。でも、いつもの守ならあんな反応はしない。だからおかしいって思ったの。」


「実を言うと、俺も皆の様子がおかしいと思ったんだ。フォルフには話していたんだが、フォルフもギーナと同じ事を言っていた。」


「……皆はまだ気付いてないらしいけどね。」


「恋は盲目、ってことか。」


「…本当にいつもの守じゃないわね。いつもの守はそういう時だけ鈍感なのに…」


「鈍感って…どっかの俺のそっくりさんじゃ…ある…まいし…」


 ここまで言って、俺はある一つの可能性に辿り着いた。

 まさか…だとすると全てのつじつまが合う…かもしれない。

 もしそうなのだとしたら、この世界は…いや、ギーナに”あの事”を聞けば分かるか。


「なあ、一つ質問がある。」


「…なに?」


「俺はキャビと出会った時に、キャビに勝てたか?」


「え?何を言ってるの?苦戦はしたけど、勝ったって、自分で言ってたじゃない。」


 やっぱりそうか…これで確信できた。


「……俺の仮説を言わせてくれ。」


「なに?」


「俺の仮説が正しければ…俺は”お前らが知る”俺じゃない。」


「…続けて。」


「”今ここに居る”高壁守はお前たちにとっての”平行世界”の高壁守なんだ。

 俺は、いや、俺の世界では俺はキャビに出会ったとき、俺はキャビに一瞬で負けた。それに、俺自身勝ったなんて言ってない。」


「……」


 恐らく、この世界は異世界ドタバタ騒動記が現実になった世界なんだろう。

 現に異世界ドタバタ騒動記の俺はキャビに勝ってたし、苦戦もしていた。


「どうだ?この線はあるんじゃないか?」


「なるほど…それなら色々と納得がいくわね…」


 だとすると、俺は早く元の世界に戻りたい。

 あいつらに恋愛感情を向けられるのはどうしても慣れそうにないし、この世界のあいつらに悪いからな。


「じゃあ、俺は早く帰るとするよ。んで、こっちの世界の俺もこっちに送る。だから、早くここに来た時に使った障壁を渡してくれ。」


「………」


「ん?どうしたんだ?」


「…嘘じゃないよね?」


「嘘をついてどうする。というかこれ仮説なんだが。とりあえず、元の世界に戻れば分かる事だ。」


「……あのね、その障壁は私は持ってないわよ。持ってるのはタカミ。」


「なら頼む。貰ってきてくれ。」


「させると思う?その仮説が全部でたらめで、私が頼みに行ってる間に逃げる可能性も無くは無いし。」


「じゃあお前も来ればいいだろ。別にこの部屋に居ないといけないわけではないし。」


「あ!ちょっと!」


 俺はギーナの返事も聞かずに部屋を出て行く。

 デュアとルソードも持って。







「あぁー!障壁落としたーーー!」


 ギーナにも手伝ってもらいながらタカミに俺の仮説を話し、障壁を貰おうとしたら、しばらくポケットを探ったタカミからそんな返事が返ってきた。


「落とした!?何故に!?」


「多分守が倒れた時に落としたんだと思う。あの時は慌ててたから…」


「仕方ない!捜しに行くぞ!」


「守!?アンタは怪我人…」


 俺はタカミの声も聞かずに飛び出していった。

 怪我が痛むが、それを無視して走った。

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