第二百八十五話 本人の前でよく言えるな?何故そんな事が出来る!?
一話目。
時は夕方。トーナの家で少し遅めの昼飯をご馳走になってたりしたが、それは割愛しておく。
あえて一言で感想を言うなら…うまかった。終わり。
…手抜き?俺には何のことやら。
「さて、そろそろ行くか。いつまでもトーナの家に邪魔してるわけにもいかないしな。」
とりあえず、元の世界に戻りたい。
いきなり連れてこられたが、俺は学生。今日は仕方なかったとしても、学校を無断で休み続けることなんて出来ない。
え?…レアモンドの結晶で女になって能力使えばいいって?レアモンドの結晶なら俺の部屋の机の中で眠ってるよ。
『そうだな。行くぞルソード。』
『んんー?食事は済んだのかぁー?』
「ああ、ありがとなトーナ。そんじゃ。」
「はい。またいつでも遊びに来て下さい。」
俺はトーナに別れを告げて家を出た。
扉を閉めた直後に、さっきの子供が走ってきた。
「おい!捜したんだぞ!今までどこに居たんだ!?」
「トーナの家だ。少し昼飯をご馳走になってた…というか、お前はさっき別れた時からずっと俺を捜してたのか?」
「そうだぞ!」
なんと言う執念。子供は飽きっぽいというイメージがあったが…これは訂正しないとな。
「あー、なんと言うか悪かった。」
「本当にそう思うならその剣を渡せ!」
…まだ諦めてなかったのか。最近の子供は執念深いらしい。覚えておこう。
「だから、さっきも言ったように、これはお前が持つような代物じゃない。あれだけ言ったのに分からないのか?」
「分かってたまるか!」
理解放棄と来たか。つくづくめんどくさいなコイツは…
「あのな」
「そこの二人。少し尋ねたい事がある。」
「うん?」
子供を説得しようと思ったら、突然横から会話に割り込まれた。
声を掛けてきた奴は少し…いや、かなり太っていて、いかにも悪人面な奴だ。その横には取り巻きと思われるどちらも痩せ気味の二人の男がいる。
「この辺りに、すばらしい切れ味と美しさを誇る剣があると聞いたんだが、どこにあるか知らないかね?」
会話に割り込んできた太った奴が訊いてきた。
「ああ、確かにあるな。だが、その剣の場所を知ってどうするんだ?」
「当然、その剣を手に入れる。それ以外になにかあるかね?」
眺めに来たとか観光に来たとかあるだろ…ん?この場合どっちも同じか?
「させるか!あの剣はおれのだ!」
子供が太った男に喰らい付くように言う。
「ん~?なんだこのガキは。我々の邪魔はしないで頂きたいなぁ~。」
お前ら三人、誰が見ても邪魔しないとろくな事にならないみたいなあくどい顔してるんだが。そんな顔されて少しも邪魔しない奴が居たら見てみたい。
「おれはあの剣の未来の持ち主だ!例え持ち主だって言ってるやつが現れても、後でおれが絶対に持ち主になる!」
…本人(×2)の前でよく言えるものだ。俺とルソードの前で。まあ、コイツはルソードに自我があることを知らないかもしれんが。
「うむ?お前は持ち主だと言っている奴が現れたといっているが…それは誰なんだ?そして、そいつはその剣を持っているのか?」
「もちろん!だってそれはコイツのことだからな!」
ズビシッ!と、子供が指差したのは俺。右に避けても左に避けても指が追ってくる。
そこで、空気気味だった俺に、ようやくスポットライトが当たった。
「お前か?剣の持ち主だとか言っているやつは。」
げぇー、めんどくさそー。
よくも俺に話を振りやがったなこのジャリボーイ…一人称”おれ”だし、ボーイで合ってるよな?
「そうだ。俺がこの辺に落っこちてた剣に認められた持ち主だ。」
「落っこちてたってお前…まあいい。では、その剣を見せてみろ。」
「そんな事をする義理も無い。じゃあな。」
俺は悪人面三名と子供を置いて、その場から離れる。
「おい!これを見てもそう言えるのか!?」
俺は面倒事の気配がしたので、嫌々ながら振り返ってみる。
振り返った俺が見たものは…
「放せ!放せよ!」
「黙ってろ!この子供がどうなっても良いのか!?」
子供を人質にした、大人気無い悪人面三人だった。
あの子供は羽交い絞めにされ、首に剣を突きつけられている。なんでそんな事が出来るのか…理解に苦しむ。
さて、あの子供をどう助けるかね…




