第二百八十四話 子供に突き刺さる事実?子供が言う事じゃない!?
二話目。
「聞こえなかったのか?ならもう一回言うぞ。おれにその剣を」
「却下。」
なんで森で拾ったって言ったら渡せって話になるんだ。意味が分からない。
「なんでだよ!オマエは剣をもう一本持ってるだろ!!」
「確かに持ってる。でも、それがお前に渡す理由にならない。それに…」
俺は鞘から抜かないまま、ルソードの柄を子供に向けて、とる事を促す。
「お?なんだ?くれるのか…うおっ…」
「持てるのか?その剣が。結構重いぞ。」
子供はルソードを引き抜くが、どうしてもルソードを上に向ける事はできなかった。
「これで分かったか?お前には渡せない理由が。まあ、当然それだけじゃないがな。」
「う、うるせー!おれだってこのくらい持て…おっとっと…」
足元は常にふらつき、切っ先は下を向き、時折支えきれずに地面に刺さる。これのどこが持ったというのだろうか。
この重さで言えば、剣の切っ先が少し持ち上がっただけでも御の字だ。むしろ、持ち上げる事さえ敵わないを思っていた俺は、少し驚いていた。
「……もういいだろ。」
「あ…」
俺は子供から剣を取り、鞘に収める。
「返せよ!それはおれのものだぞ!」
「俺のだ。」
「おれは!おれは!その剣を持って旅に出るって、ずっと前から決めてたんだ!だから…」
「………」
さすがに俺はここまで言われて罪悪感を全く感じないような冷徹な人間ではないが、だからと言ってこの子供にルソードは渡せない。
ルソードが認めたのは俺なのだ。この子供に渡しても、ルソード本人が納得するか否か。考えるまでも無い事だ。
「……俺はこの剣に選ばれたんだ。俺は苦労して手に入れたこいつの鞘を持って、こいつの前に来た。少しきつい事を言うが、
だからお前には渡せないし、渡してもこの剣が納得しない。」
「でも!」
「この剣は危険だ。例え出来ても、子供が振り回すようなおもちゃじゃない。れっきとした、危険な武器だ。分かってくれ。じゃあな。」
「ま、待てよ!」
俺は子供の言葉を無視し、歩く。
その先には申し訳ないような顔をした、トーナが居た。
「……ごめんなさい。あの子は昔からその剣を持って旅に出るんだって、楽しそうに、本気で言ってて…
でも、気にしなくてもいいですよ?所詮、子供の言うことですから…」
俺たちはあの後、トーナの家に着いた。トーナの両親は出かけているらしく、見当たらなかった。
トーナの言葉を聞きながら、先程のことを思い出す。
…この剣を渡せと言ったあの子供の目、アレは本気の目だった。
子供が滅多にするようなものではないほどの本気度を持った、文字通り真剣な眼差しだった。
俺は気付かぬ間に一人の子供の夢を壊していたのか…と、自嘲する。例え生意気でも、小さい子供相手に大人気無い事をしたな…
『……気休めになればいいが、我も気にしなくて良いと思うぞ。ルソードの鞘を持っていくということは、我に認められる必要があったのだからな。
あの子供が国王の城にその鞘が眠っているなんて考えないだろうし、もし知っていても見つけられずに終わっていただろうからな。』
『なにぃー!?俺の鞘って、国王の城にあったのかぁー!?えげつなさすぎだろぉーいぃ!』
…まあ、言ってしまえばそうだろう。だがそれが分かっていても俺は…
『だぁーから気にすんなぁーってのぉー!仕方ない事だったんだからよぉーう!』
「それでも気になるんですか?」
「ああ…」
「なら、あなたは良い人です。でも、優しさというのは、時にこうして自分を苦しめることだってあるんですよ。ですから、今だけは…」
「…ああ。心を鬼にするさ。そして、ルソードはあの子供には渡さない。絶対にだ。」
「それでいいんです。」
皆に慰められ、俺は何とか罪悪感から立ち直った。
今更だが、年下の子供に慰められるとは…情けない。
いや、これはトーナが異常に大人びてるせいだ。そうに違いない。だってアレ子供が言う事じゃないだろ。
追記 本当にどうでもいいですが、ルソードの声は某アナナントカさんの声優の若い本の人をイメージしていたり。
…マジでどうでもいいですね。なんでこんな事をわざわざ追記したんでしょうか?




