第二百八十二話 デュアの意味深な一言?まさかの知り合い同士!?
一話目。
間に合わなかった…昨日に間に合わせたかった…!
「これで片付いたか?」
『うむ。もう大丈夫だろう。』
あれからしばらく。俺たちは何とか無傷で魔物の大群を撃退した。
途中からは立ち向かってくるより逃げていくもののほうが多かったが。
「あ、あの…ありがとうございました。」
木の陰から一人の少女が出てくる。声からしてさっき俺たちの戦闘に巻き込まれていた人だろう。
その少女は、キャビとタカミの間のような年齢だと思われた。
「お礼はいいよ。アレはただの自衛だ。」
「でも…」
「いいからさ。じゃあ、俺はもう行くよ。」
俺は障壁の剣を消し、デュアを鞘に収める。そして少女に背を向け、立ち去ろうとした。
その時だった。
「待ってください!その鞘には収める剣が無いのですか?」
その少女に呼び止められたのは。
「……まあ、そうだが…」
「だったら!少し来て欲しいところがあるんです!」
来て欲しいところ?
『……まさかその鞘は…いや、行ってみれば分かるか。守。行くぞ。』
「デュア?どうしたんだ?」
『恐らく行ってみれば分かる。だから行くぞ。』
デュアも行く気満々らしい。
なんか意味深な事を言ってたが…まあいいか。
「じゃあ、行くよ。」
「はい!
…あと、さっきから聞こえるあの声は何なんですか?会話してましたけど。」
「ああ、それはこの剣が話してるんだ。ほれ、自己紹介…あ、俺がしてなかったな。俺は守。」
『我はデュア。』
「わ!本当に喋った!
…っと、私はトーナです。よろしくお願いします。その…デュア…さんですよね?の事を訊いていいですか?」
『構わんぞ。』
「ありがとうございます!まずは…」
俺とデュアは、案内するトーナについていく。案内される場所に着くまで、俺たちは雑談をしながら楽しく歩いていった。
…今更気付いた。俺たちが闘ってた時と態度が違うような…
まあ、あっちからすれば助けられたってことになってるらしいし、恩人とかそんな認識されてるなら別に不自然じゃないか。
「ここです。」
トーナは森の開けた場所で止まった。どうやらここが目的地だったらしい。
ここには大きな木が一本あり、その木の根元には台座のような石があり、遠くて良く分からないが…そこにはなにやら細長いものが鎮座している。
色はサファイアのように透き通るような青。綺麗だな。
「あの剣に近づいてください。」
アレは剣だったのか。
俺は言われた通りに剣に近づいていく。
『…ん?次はなんだ?ま~た手作りの偽鞘でも持ってきたんじゃないだろうな?』
そしたら剣が喋りだした。デュアと同じくテレパシーでだ。
というか、手作りで鞘作ってどうすんだ…そしてなんで偽物扱いするんだ?
『その声、やはりお前か。ルソード。』
『ん?その声は…デュアか!?なっつかしいな~何十年ぶりだよおい!』
え?デュアと知り合い?
確かに喋る剣同士ではあるが…まさか知り合いだったとは。
『ってぇーと、アレか?デュアを持ってるこいつがお前の主か!?』
『そうなるな。』
『かーっ!しかも俺の鞘まで持ってやがるぜぇー!!ってことは俺の主でもあるんじゃねーかぁー!』
何だコイツは。しかも、”俺の鞘”って言ったよなコイツ。デュアが収まってないほうの鞘の事を言ってるのか?
『まあ、俺の主がこぉーんなにかわいい女だったなんてなぁー!俺ぁ幸せもんだぜぇー!』
…コイツ、今何つった?
『お、おい…止めろルソード…』
『なぁーに怯えてんだぁー?俺ぁ自分の主を褒めただけだぜぇー?』
「おい、ルソードとか言ったな…」
『えぇー?そうですよぉー?なぁーんでそぉーんなに不機嫌なんですかぁー?』
「あのな……俺はな…俺は男だああああああああああああああああああああああああ!!!」
『な…何ぃーーーーーーーーーーーーー!!??』
「え…えぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」
二人の絶叫で、近くの木に止まっていた鳥が一斉に飛び立った。
俺は静かにルソードとか言うやつはともかく、トーナにも女だと思われてたんだ…と、がっくり肩を落とした。




