第二百八十話 補正同士の戦い?なんじゃありゃあ!?
一話目。
「はっ!待てぇ~!守ぅ~!!」
遠くからフラルの声が聞こえてくる。今更気が付いたようだが、もう遅い。
俺は既に先程のゴミ捨て場から大分離れたところにいる。二人の硬直時間が長くて助かった。
二人は振り切った。後はまた見付からないように帰るだけだ。
俺は地元補正を使い、見つかり辛い道ばかりを行き、多少遠回りしつつも着実に家に近づいていく。
そんな道を使ったせいか、そこから俺は誰にも見つからずに家に到着する。
「フッフッフ。やっと着いたぜ。後は母さん達を説得して…」
ガチャ
「おかえり~…逃亡は楽しかった?」
帰ると、ギーナがいい笑顔で出迎えた。しかも、その後ろには俺を追いかけてきたはずの皆がいた。
……何故だ。何故もう皆帰っている。まさか…
「まさか…待ち伏せか!?」
「あのね、私が最終的には守は帰ってくることに気付かないと思う?」
…そうか。俺は地元補正を使い、対してギーナは天才補正を使った。
そして、地元補正と天才補正の戦いの結果、天才補正が見事に勝利を収めた…そう言うことだったんだな。
「なら俺はまた逃げ」
「させないよ?」
玄関から出て行こうと振り返った俺の目の前に、フラルとキャビが立ちふさがる。皆帰ってきてたんじゃないのか!?
「さあ、どうする?この状況でもまだ逃げる?」
「……諦めなければ、活路は開ける!うおおおおおおおおおおおおおお!!!」
この後、二秒で捕まりました。
やっぱり、今回も駄目だったよ。
翌じ…次の日。
昨日は説教のせいであまりよく寝られなった。ぶっちゃけものすごく眠い。だが、平日だから二度寝という訳にもいかない。
なので、目覚ましで目が覚めた俺は朝飯を食うためにまずは廊下に出た。
そこに、何故かソードホルダーをつけ、それに鞘をつけたデュアがいた。
昨日まではソードホルダーなんてつけてなかったのに…なんでそんな事を?
「デュア?なんで鞘を持ってるんだ?確か、タカミに預けてたはずだったが…」
『守か。実はタカミに頼んで、我がずっと持っていたのだ。』
「だとしてもなんで今付けてるんだ?」
『……一昨日少し夢でな。詳細は言えないが。』
「夢?」
夢で何かあったからといってなんでそんな事をするんだ?訳が分からない。
「まあ、とりあえず飯にしよう。」
『ああ。』
俺たちはリビングに行く。俺の家はあまりにも人数が多すぎるため、キッチンとつながっているリビングも食事に使っている。
リビングには、俺たち以外誰もいなかった。
「あれ?皆まだ起きてないのか?いつもなら、俺が着てる頃には皆揃ってんのに…」
俺は時計を見てみた。すると、何と言う事でしょう。時計が指していたのは四時だった。
「そりゃ誰も起きてねえよな!」
通りでやたら暗いし眠すぎると思った。そりゃそうだ。
『……なあ、アレは何だ?』
「ん?そこにあるのは鏡…って、なんじゃありゃあ!?」
確かに、俺が言った通り鏡があった。だが、その鏡は真っ黒になっていた。
これはどっかで見たような…と思って、近づいてみる。すると、
「うおっ!?吸い込まれ…」
『守!くっ!』
俺は真っ黒な鏡に、なす術もなく吸い込まれた。そんな俺を追うように、デュアも吸い込まれた。
…ここはどこだ?視界は朝焼けのような空が広がっている。
しかし、ここやたら風強いな。なんか心なしか空が離れていく気がするし…空が離れる?
俺は下を見てみる。すると、そこには徐々に近づいていく地面が見えた。森みたいな場所だな。
……地面が近づいてくる?まさか今…俺は…俺は…
「落ちてんのかあああああああああああああ!!」
その声に答える奴は居ない。だが、俺は今ものすごい危険な状況にいる。落ち着いて対処して、何とか生き延びねば…下手すりゃ死ねる!
『守うううううううう!障壁を使えええええええええええ!!』
「デュア!お前も来てたのか!?」
『いいから早くしろおおおおおおおお!!』
「わ、分かった!」
俺はすっかり失念していた自分の能力を使い、俺たちの落下予想地点に柔らかい障壁を出現させた。




