第二百六十九話 結構余裕?作戦思案中!?
一話目。
俺は徐々に意識が戻ってきていることを確認しつつ、男に引きずられていた。
意識は戻ってきているが、力はまだまだ戻っていないため、下手に抵抗は出来ない。だからこそこうして歯がゆい思いをしながら引きずられている。
ちなみに、世界の意思が言っていた虚無感の方に関してだが、最初から無かったに等しい。
意識が薄かったから虚無感なんて分からなかったしな。今は今で状況が状況だから無視してるし。
ともかく、今考える事は一つ。力が入らない状態で、どうやって魔法無しで戦うかだ。
一応能力は使えるだろうが、何かしら物が無ければ意味が無い。人には使えないしな。
…とりあえず、こうして考えられる程度には意識が回復してきたか。何で力の回復はこんなに遅いんだ…
って、待てよ?この前は魔法が使えたからこそ人を殴り飛ばすなんて出来たが、魔法無しでそれが出来るのか?
女になると筋力が低下する。一応特訓はして筋力はある程度あるはずだが…それはこの男の筋力に対抗できるほどのものなのか?
「よし、ここだ。」
考えていると、男が止まり、目的地と思われる空き地に着いた。ここには人気が無い。
というか、考えすぎてて今までどんな道を通ったかなんて確認してなかった。まあ確認してても引きずられてたから良く分からなかったとは思うが。
しかし、これはまずい。この町で育って十五年と一年弱な俺でも、ここがどこなのか分からない。だから逃げる時にどう逃げればいいのかが全く分からない。最悪行き止まりにぶつかるかもしれないしな。
「さて、まずは何からするかね…やっぱり殴られたんだし、殴るか?」
殴ったら殴り返す、倍返しだ!
という言葉が頭をよぎったが、当然スルー。
こんな時にふざけられる俺って一体…まさか結構余裕なのか?命がかかっていないとかそう言う理由でそうなってるのか?死ななければなんでも良いのか?
…良い訳が無い。
だからこそ俺は打開策を考えなければならない。そして、無事に皆のところに帰る。
男が一旦手を離し、俺の頭を掴もうとする。だが、俺はそれを転がって避ける。力はまだまだ戻ってきているわけではないが、転がるくらいは出来る。
力が戻るまで少しでも時間を稼ぐつもりで、執拗に来る男の手を避け続ける。
「おい、テメッ、避けるな、コラ!」
「そっちも、そっちで、しつこい、ぞ!」
必死な攻防の最中、俺の力は今更ながらどんどん戻ってくる。
だが、ついに転がっての回避に限界が訪れ、頭をつかまれる。
「さ~て、ようやく捕まえてやったぞ~?」
「放せ!女に手を上げるなんて最低だぞ!」
自分で言ったくせに俺の心にその言葉が刺さる。俺は男なのに…少なくとも心は。
…何だこのブーメラン。
「最低で結構!とにかく喰らえ!!」
男の拳が迫る。狙いは顔だ。こいつが手を放しさえすれば避けれるくらいには力は戻ってるのに…!
「グッ!」
男は拳が当たる直前に手を放したため、俺は少し吹っ飛び、頭から着地する。幸い地面はコンクリートでは無かったため、重症にはならずにすんだ。
「まだまだ続くぜ?さあ、覚悟しな!!」
くそっ…一応立ち上がって走る事はできるんだが、今の力でこいつから逃げられるかどうかが分からないし、道も分からない。分からない事だらけだ。
こいつをどうにか足止めしないと、逃げるのは厳しい。と言うか多分無理だ。
魔法、力が封じられている以上、今使えるのは能力しかない。だが、能力をどうやって使う?考えろ…この能力はほぼ何でも出来るんだ…
…………今更ながら殴られたところが痛くなってきた。考え事に必死になってたから気にならなかったのか?
……ん?そうだ!!
作戦を思いついた俺は、男に向かって頭から突進した。
何で今日は学校だったんだ…代わりに月曜日は休みになったけどさぁ!!




