第二百六十三話 これ詰んだ?組織の正体!?
一話目。
俺はまた魔法で体感時間を延ばし、作戦を立てている。
まず考えたのは各々の能力を使うこと。だが、火太郎や光の能力は騒ぎにならない方が難しい。何も無いところから光や炎が出るんだしな。
俊太や移図離の能力は使いようによっては何とかなりそうなんだが…逆に言えば使い方次第によっては騒ぎになる。特に移図離は。
しかし、いくら魔法で身体能力を上げようと限界はある。組織とやらの人数が洒落になってないからだ。多勢に無勢で押し切られる。
……これ、詰んだんじゃね?
もういっそ四人には逃げてもらおうか。俺と違って奴らや俺とは離れた位置にいるから位置的には逃げられるし。
……それが通るならまずここに来ないか。来たとしてもこの状況を見て何もせずに逃げてたろうな。
ではこの状況をどうするか。話を聞いてもらえるような状況ではないし、降伏もさせてもらえるかどうか…
…俺が男だったら障壁を使って上から…あ、障壁も騒ぎになるから駄目か……ん?上?そうか!
俺は体感時間を延ばしたまま身体能力を上げ、ジャンプで奴らを飛び越える。
少し届かなかったが、そこは奴らのうちの誰かを踏んで更に跳躍する事で届かせた。
俺は体感時間を元に戻し、皆に呼びかける。
「皆!逃げるぞ!」
「え!?守!?」
「どうやってここに!?」
四人どころか奴らも驚いていたが、説明してる暇は無い。なので、俺は行動で皆がするべきことを教えた。
「…逃げた。」
「お、おい!守!速過ぎだろ!俺達が追いつかない!!」
なんで俊太は自分の能力のことを思い出せないのか…
「俊太、能力。」
「あ!そうか!」
火太郎が何かをささやいていたが、恐らく能力のことを言っていたのだろう。四人の走るスピードが格段に上がった。
俺たちは必死に走っていく。ふと後ろを見ると、奴らの姿は無かった。
守達が逃げた後、組織の連中は急いで五人を追おうとしていた。
「あ、あいつら!なんでこんなに逃げ足が速いんだ!?逃がすな!」
「追わなくても良い。」
「な、何故!?」
「この程度の人数で怖気付いて逃げるようじゃ、俺達の組織に危害は加わえられない。こんな人数、氷山の一角に過ぎないのはお前も分かってるはずだろう。」
「しかし…わざわざ立てた別の作戦も失敗させられたんだぞ?」
この男の言う失敗した作戦というのは、守の学校に行き、ラブレター紛いの手紙で守を呼び出すという作戦だ。
尾行して学校を調べるところまではうまくいっていたのだが、学校に入ろうとした際、校門の前に居た校長に止められて作戦は失敗したのだ。
「良いんだよ。あいつらは俺達の組織に危害を加えるつもりは無かった。それが分かっただけでも僥倖だ。別に俺達は率先して悪事を働きたいわけじゃないしな。そうだろう?」
「……お前がそう言うなら良い。だが、組織の存在は知られてしまったぞ?それは良いのか?」
「良い。具体的に何をするのかは知られてないんだからな。それとも、あの二人が俺達”不可思議事象対策組”の事をばらしたのか?」
「そんな事は言ってなかったが…」
「なら良いだろう。これ以上奴らを追うことも無い。という訳で、解散だ。」
ある男の言葉で、その場に居た大勢の人は各々の家路に着いた。




