第二百六十一話 ボロぞ…ストーカーの後始末?放置すると増殖するのか!?
一話目。
「とまあこんな事があったんだ。」
「……食事中に人の気分を悪くするようなことを言わないでくれる……?」
今は夕食中。今日遅れて帰ってきた理由を訊かれたので、さっきあった出来事を話した。
すると、誰もが一様に顔をしかめ、ギーナからは理不尽な事を言われた。
あのキャビですら怯えている。
「そっちから聞かせろって言ったのに、それは理不尽じゃないか?」
「確かにそうだけど、誰がこんな答えが帰ってくるなんて予想も出来ないよ。」
「まあな。」
むしろ出来ていたら怖い。もしそうだったら、監視でもされてるんじゃないかと疑ってしまうだろう。
「んで、その人はどうしたの?」
「ああ、あのボロ雑巾…じゃない、ストーカーはそこに放置しといたよ。ボロボロで気を失ってはいたが、逆に言えばそれだけだしな。」
「それはそれだけで片付けられないような気はするけど…まあ、あの変態だしいいや。」
まあ、こっちも悪気は無かったしな。つい身の危険を感じてボコボコにしたって感じだったし。
異世界の死闘も今回の件に少なからず影響を与えているのだろう。
闘わなければ俺が殺されてたわけだし、遠慮や躊躇を許せば死んでたような状況だったしな。
そこでこの話は終わり、また各々の会話が始まった。
とある場所。ここにはテーブル越しに向かい合う数人の男とそれを囲む大勢の人が居た。
辺りは真っ暗で、男達の顔は見えない。
「何でわざわざ真っ暗にしたんだ?」
「ムード作りのためだ。別に良かろう。」
「結局はお前の気分という訳か…まあいい。それより、本題に入るぞ。」
ある男は気分で部屋が真っ暗になったことにげんなりしつつも、話を進める。
「ああ、変態二人がやられた事か。別に良いんじゃないか?あの変態二人には俺達も困ってたんだしな。」
「良くない。確かにあの二人には困らされてはいたが…もし我々を狙っていたのだとしたらどうするのだ。もしかしたら宣戦布告かもしれん。」
この会話に出てきた変態二人。実は、守が現代で撃退したナンパとストーカーのことである。
「本人の証言からすると、犯人は銀髪の美人らしい。」
この銀髪美人とは当然守のことである。
…こんな時は写真を出す?真っ暗だから見えないんだよ。なんで真っ暗にしたのか…
「…この件、あの二人がそいつにちょっかいかけて、しかるべき罰を受けただけなんじゃないか?」
「……確かにその線は否定し切れんな。だが、そうでない可能性があるのも事実。念には念を入れるべきだ。」
変態二人の事を良く知っている男達は、ある男が言った事の可能性の高さにげんなりしつつも、話を続ける。
「それで、対策を立てるべくお前らを集めたのだが…どうする?」
「こちらから乗り込む、と言うのはどうだ?待っていては奴の準備が整ってしまう。」
「なるほど。奴の準備が終わる前に叩くという訳か。」
「ふむ。それで行こう。で、具体的には…」
男達の会議はまだまだ続き、守への襲撃作戦は練られていった。
守は別に男達を狙っている訳ではない事を知らずに…
夕食の後は例の本を二冊読み進めた。
その翌日。俺はいつものメンバー(太郎を除く)で下駄箱の前にいるのだが…
「それ、守の下駄箱よね?」
「真っ白だな。」
ラブレターが増殖し、下駄箱が真っ白になっていた。靴も入れられやしない。
知らなかった。ラブレターって放置すると増えるのか…どこの海草だよ。
「これ、どうするの?」
「……全部断りに行くなんて荒業は出来ないから鞄に入れておいて、その後に処理する。」
学校で捨てて、書いた奴がごみ箱の中のラブレターなんて見らたらかわいそうだ。
だから持って帰って捨てるとしよう。家で捨てるならそうなる心配も無い。
「早く行こうぜ。いつまでも下駄箱の前に居ても何にもならないしな。」
「そうだな…って、もうこんな時間か!」
「急がないと!全く、俊太がいつまでも起きないから!」
「俺のせいかよ!」
「「「「そうだ!」」」」
「………」
無言になった俊太を置いて、俺たちは教室へと急いだ。
俺はこの時、俺が階段を駆け上がっているときに校門前で校長が学校の敷地内に入ろうとした不審者を取り押さえたことをまだ知らない。
そして、その不審者の狙いが俺である事も。
…校長がやたら強いのは百八意味不の一つなんだ。何で強いのかは皆も俺も分からないんだ。
だから「何で校長強いの?」とか訊かないでくれ…




