第二百五十八話 朝から気が重い?やっぱり注目が多い!?
二話目。
もうこんな時間か…
翌日…は風邪でずっと寝ていたため、二日後。
俺の風邪は完治し、問題無く学校へ行けるようになった。
無論、その間は例の本を全く読み進めていない。
「守?朝っぱらから暗いわね?」
「ああ…ちょっとばかし気が重いと思っただけだ…」
朝食中、タカミに気遣われた事には少し驚いたが、そんな様子を微塵も出さずに答える。
血も涙も無い酷い人間だと思っていたわけではないが、これも普段の行いのせいだろう。俺は悪くない。
「なんで?」
「例の本はあと五巻くらいあるんだが、どう頑張っても一日で二冊しか読めないんだよ。だから、少なくとも三日はこの姿のままって思うとな…
それ以上のペースだと俺がしばらく使い物にならなくなるし。」
「そんなことを考えたら気が重くなるのも無理無いわね…」
「まあ朝なんだからシャキッとしな!そんな調子じゃ、夜まで持たないよ!」
言われてシャキッと出来るなら苦労はしない。
だが、母さんの言う事にも一理あるな。ここは少し無理をしても元気を出さなければ。
「努力はする。」
と言って俺は朝食を口に運ぶ。
その後は元気を出そうとしたが、少しくらいしか出来なかった。寝起きだから…だと思っておこう。
今日も今日とて登校。やはりこの姿は男女問わず注目を浴びる。
黒髪や茶髪が多い日本としては銀髪はとても目立つ。
更に、自分で言うのもなんだが顔もかなり良い。これが注目を浴びずして何が注目を浴びるのか。
しかも、いつぞやのストーカーの気配がする。こちらに向かう視線が多すぎてどれがストーカーの視線かは分からないが。
まったく…犯罪なんざやってる暇があるならその分余分に仕事しろよ。
「お、守。風邪の具合はどうだ?」
「おお、俊太。見ての通りなんとも無いぞ?心配してくれてありがとな。」
「俊太だけじゃないよ。僕達も居る。」
「すっかり治ったみたいだね。」
「…元気で何より。」
ここで皆と合流する。相変わらず学校が違う太郎は居ないが。
…ん?ストーカーの気配が無くなったな。人数が増えたから警戒してどっか行ったのか?
「どうしたの?突然険しい顔なんかして。」
「…なんでもない。」
「…口調を真似ないで。」
「……真似たつもりは無かったんだけどな。悪かった。」
今のは本当に狙ったわけではなかったんだが、移図離は少し機嫌を悪くした。そこまでアイデンティティーが大切なのだろうか。
「まあいいだろ、ちょっと口調と被ったくらい。」
「…俊太はアイデンティティーの重要さを分かっていない…この本を読んで。」
そう言って移図離が取り出したのは”アイデンティティーは欠かせない!”と書いてある本。なんというか、なんのひねりも無い。
「遠慮しとく。」
「…そう…残念。」
俊太に断られた移図離は本をしまう。
俊太があんな本を読むとは思えないしな…読んでなくても手に持ってるだけでイメージが軽く壊れてしまいそうなくらいだ。
「と、とにかくさっさと行こうぜ!学校まで競走だ!」
と言って俊太は走り出す。だが、俺たちは俊太を追って走るような事はしない。
「逃げたな。」
「逃げたか…」
「逃げ方が子供…」
「本当に子供ね~。」
俊太の言動の幼稚さに呆れはするが。
こちらを全く見ずに走っていく俊太を見ながら、俺たちはいつもどおり校門の前にいた校長に挨拶を返し、校門をくぐった。




