第二百五十四話 出ピンチ?どっちが悪だか!?
一話目。
…ん?寝てたみたいだな。俺いつの間に寝たんだ?
まあいいか。とりあえず起き…
…目が開けられない。
なんで目が開かないんだ?とにかく手を使ってでも目をこじ開けて…
…動けない。
何なんだこれは…とにかく寝る前のことを思い出そう。
え~っと、確か昨日は…あ、そうか。そう言えば縛られてたんだったな。
んで、何とか縄を解こうともがいてたんだが…恐らくそのまま寝てしまったのだろう。
何で俺は縛られたまま寝られるんだ…能天気にも程があるだろ。
で、目が開けられないのは多分誰かが悪ふざけで目隠しでもしたんだろうな。目の周辺の感触で分かる。
しかも耳栓までご丁寧に…なんも聞こえねえ!
………打つ手が無い。
視覚、聴覚が潰され、全く動作が出来ない。
考えろ!考えてこの状況を突破…もうこの時点で絶望感しかねえ!
何も持ち物無しで無人島に流れ着いた時ってこんな気持ちなんだろうか。
いや、まだ無人島の方が希望はあるな。今の俺には立ち上がる事すら出来ない。
とにかくなんでもいい。何でもいいから打開策を…
…………………………………あ、能力。
そうだ、今の俺にはチート染みた能力があるじゃないか!それを使って…
ロープに縛っても解ける性質を付ける。すると、いともあっさりロープが解ける。これで体の自由は取り戻した。
そこまでくればこっちのものだ。後は自由になった手で目隠し、耳栓を取る。
そして目を開けると…
「……なんだここは…」
俺の部屋ではなかった。俺の部屋の壁は所々にひびの入ったコンクリートではないし、家具を何も置いていないような殺風景な部屋でもない。
これはコンクリートは壁紙で、家具は運び出しました、というドッキリ染みた事なら良いが、コンクリートは本物、おまけに扉は開かない。
一応窓があるが、窓の位置は高く、手を伸ばしても届かない。
これではまるで…いや、そんなことは無いと思うが…監禁されているみたいではないか。
ギーナが誘拐されたと言ったが、まさか本当に…
…まあ、とりあえずここから出よう。話はそれからだ。
身体強化系の魔法で強化した蹴りを、扉に叩きつける。
すると、扉は紙くずのように吹っ飛んでいった。あれ?同じ方法で縄をちぎれたんじゃ…
一瞬よぎった思考をスルーし、外の様子を見る。そこには…
「…は、早かったね、守。」
引きつった笑みでその場で固まっているタカミが居た。
「…事情説明をさせてもらおうか。」
「…はい…」
有無を言わせぬ迫力で脅し、タカミからの事情説明を受けた。
タカミの話を要約すると…
昨日のメンバーで町中で俺の捜索が行われたものの、俺は見つからなかった。
だが、帰ってきてみると、俺の部屋で寝ている俺が見つかり、拍子抜け。
それどころか無駄足を食らったので、少々八つ当たり気味に目隠しと耳栓をつけ、俺を探している間に見つかった小屋のような建物に放り込んだとか。
で、タカミがここに来たのはその様子見で、そこを俺がドアを蹴って出てきたらしい。
…町中を捜し回ったあげく、それが無駄に終わったことには同情するが…だからと言って俺に八つ当たりするのはおかしい。勘違いしたのもギーナだしな。
大元の原因が俺?ちょっとなにいってるかわからないですねー
全く、このイライラは誰にぶつければ…
「おお!早起きは一文の得って本当だなー!ねえねえ、俺と一緒にお茶でも…」
「…ちょうどいいところに来たな。俺は今滅茶苦茶ムシャクシャしてんだ…」
「へ!?」
「という訳でくらえーーー!!あとそれを言うなら早起きは三文の得だーーーーーーーー!!」
ドゴオッ!!
「ちょ!?守!?今とんでもない音が…」
「ぶべらーーーーーーーー!!」
ナンパは俺の正義(魔法)のパンチで吹っ飛んでいった。
「悪は滅びた…」
「最初の台詞だけ聞くと明らかに守の方が悪だけど。」
俺はナンパをいつもの二割り増しで派手にブッ飛ばし、とても爽やかな気分で帰っていった。




