第二百四十六話 今日だけで三回目?致命的なミス!?
一話目。
やべえ…テスト前なのにほぼ勉強してねえ…
やべえよ…マジでやべえよ…
「い、いってええええええええええ!!??」
「た、太郎!?守!何をしたか知らないけど、いきなり蹴られたからと言ってそこまでしなくてもいいじゃないか!!」
「俺何もしてないんだけど…」
太郎が壁に突っ込んだのは、火太郎の中では俺が悪い事になっているらしい。勝手に自滅しただけなのに俺のせいにされても困る。
「な、何ですり抜け…しまった!守がすり抜ける事をすっかり忘れてた!!」
「そう言えばそうだった!」
さっき言ったばっかりだろうに。なんでもう忘れたんだか…
「で、そろそろ本題に入っても良いんじゃないか?何しにきたんだ?」
「宿題チェックだ。少なくとも守以外は終わったが…守はどうなんだ?」
「…あのな、さっき言ったごたごたの中に、宿題する暇なんてあったか?」
「……そこは素直に同情しよう。」
「まあ、あとは読書感想文を残すのみだが。」
「暇あるんじゃねーか!」
「いつやったの?」
「テキスト関連は最初の三日。」
「早!?」
「魔法を使えば余裕でした。」
「ずるいぞ貴様!」
「しょうがないだろ!そうでもしないとたった一週間で全て宿題を終えられる訳が無いだろ!!しかも最初は例の本を読みきるつもりだったから余裕が欲しかったしな!!」
「うっ…そう言われれば仕方ない…のか?」
正論に次ぐ正論で太郎を黙らせる。火太郎についてはこの空気になった時点で黙っていた。
「…ハッ!?どこはここ!?誰は私!?」
突然光が起きる。混乱しすぎて逆になってやがる。
「よう、起きたか。」
「ん?…守の幽霊!?」
「死んでないし、幽霊でもない。」
「…やっと起きた。」
移図離はいつの間にか正気を取り戻していたらしい。
ドタドタドタ!
「おい!なんで俺を置いていくんだよ!騒がしいから文句を言いに来た奴らにゲラゲラ笑われただろうが!!」
俊太が部屋に入ってくる。俊太も再起動を果たしたらしい。
「笑われたのか!ハハハハハハハ!!」
「ハ、ハハハハハハ!それじゃあ笑われてもしょうがないな!!」
「アッハハハハハハ!!」
「ハ、ハハハハ、ハハハハハハハハハ!!」
「…ププッ。」
「お前らまで笑うな!!」
騒がしい、と言うのはもしかしなくてもこの五人の絶叫のことだろう。
それでうるさいと文句を言いに来た近所の方々に思いっきり笑われたのだろう。
だが、何故固まっている俊太を見て笑われたのか。それは俊太の顔に答えがある。
「か、鏡見ろ、鏡見てこ…ハハハハハ!!」
「鏡…?一体何が…!?」
俊太は俺に言われ、部屋にあった鏡を見る。
そこに映っていたのは……落書きされた俊太の顔だった。
「な、なんじゃこりゃああああああああああああああああああ!!??」
さっきの絶叫を思い出させるような俊太の叫びが、町中に響いた。この後、また近所の方々が怒鳴り込んできたのは言うまでもない。
ああ…今日だけで三回も怒鳴り込まれたか…
「…で、そう言うことなら宿題はどうするんだ?始業式明日なのに。」
「明日ぁ!?」
明日だと?まだ帰ってきて六日しか経ってないのに…確か、戻ってくる直前に光が一週間って言ったよな!?
「ああ、光が少し間違えたみたいでな。一週間後に始業式、というのを、あと一週間休みがある、と誤認してたらしい。」
なんて致命的なミスを…!今の俺はペンがすり抜けて持てないから進められないというのに!!
「こうなったら朝一で寺に行って元の体に戻って、それから書くしかあるまい…」
「間に合うの?」
「納品には間に合わせます!なんとしてでも期限に間に合わせます!」
「宿題は商品ではないわよ…」
普通なら無理だが、魔法を使えば何とか終わらせられるかもしれない。
あるかないかも分からない主人公補正を、今こそ使うのだ!主人公補正は現実には存在しないなんてツッコミは受け付けない!!
「…守の奴、焦りすぎて訳分からん事になってないか?」
「そのような事があろうはずがあるまい!亀の歩みの勢いで宿題を終わらせるのです!!」
「亀の歩みは遅いんだが…」
「完全におかしくなってるね…」
「……憐れ…」
「誰か早くなんとかして。僕には無理だ…」
「俺にも無理だ…」
五人の哀れむような声なんて聞こえやしない!さあ、宿題!期限なんか捨ててかかって来い!
その後、俺は母さんの精神分析チョップのおかげで正気を取り戻した。その頃には皆帰ってましたとさ。




