第二百四十四話 遊ぶな怖い?休ませてくれ!?
一話目。
宿題の事はともかく、令音は…いや、俺たちは帰宅していた。
令音の魂が俺の体から出て行くのは成功した。だが、同時に俺の魂も出て行ってしまったのだ。
今、あの体はさっきの寺に預けてある。今の俺たちでは、すり抜けて持ち運べないしな。
「ただいま~。」
「おかえ…令音!?なんでドアをすり抜けられるんだ!?出来るとしても何でそんな事を!?」
ドアをすり抜けて帰ってきた俺に、タムが出迎えた。疑問付きで。
ドアをすり抜けてきた理由は簡単だ。ドアに触れないからだ。
あと、俺は令音じゃない。
「なんかよく見たら少し透けてるし…もしかして死んで」
「令音はとっくに死んでるだろ。あと、俺は守だ。」
「守!?」
「そうなんだよ~。」
令音も隣の壁からすり抜けてきた。
「誰だ!?」
あ、そう言えば誰も令音の姿を知らないんだった。俺もだったが。
「え~酷い、昨日も会ってたのに~…」
「昨日も?」
令音は大きなヒントを出すが、タムは分からない様子だ。
「答えは令音でした~。」
「守!?何で言っちゃうの!?もうちょっと考える時間をあげてもいいじゃないの!?」
「令音!?と言うと、昨日昼食の時に言ってた術とやらは…!」
「ああ、成功だ。ただ、俺もその術にかかったが。」
「え?一体どういう」
「その説明は皆に話す。だから、皆を集めてくれ。」
俺はタムに皆を呼ぶように頼み、説明の準備を始めた。
「という訳で、今俺たちはこんな事になってる。」
「そのすり抜けるの止めてくれない?気に入ったの?」
「ばれたか。」
皆への説明を終える。
説明しながら、何度もテーブルの下から手をすり抜けさせて遊んでいた。これがなかなか面白い。
ギーナから注意を受けたので、もう止めておく事にしよう。
「でも、これ面白いの~。」
ギーナからの注意を受けてもなお、令音はすり抜けて遊ぶのを止めない。よほど面白いらしい。
「してるそっちは楽しいでしょうけど、見てるこっちは怖いから!!」
ギーナが軽く震えながら言うと、さすがに令音も遊ぶのを止めた。
「なんかこの部屋寒いな…夏なのに。」
「止めて!」
お化けがいると部屋の温度が下がると聞いて言ってみたが、ギーナが必死に言う。まあ、俺の隣にいるのは正真正銘の幽霊なんだが。
俺?生きてはいるしノーカンだろ。幽体離脱している人間は死んでるわけじゃないし。
「で、話は変わるが宿題は?」
「今日は無理だけど、気合で終わらせる。ただ、男に戻るのは無理だ。あの本を読むのにどれだけかかることか…」
母さんからの問いに、俺は正直に答える。
宿題は何とか終わらせる。だが、数回ラブコメがあると羞恥で止まってしまうと言うのに、まだまだあの本はある。読めたのはまだ三冊だ。
内容は、主人公が置いてけぼりを食らって性転換したところで終わっている。これだけ読んでまだそこだとは…
「そうだね…なら、制服は光か移図離に借りるしかないねぇ。」
「…俺に女物の制服を着ろと?」
「え?そうだけど?」
「あの~、休ませるって言う選択肢は…」
「「父さんがそうさせない。」」
「そ、そう…」
ギーナの問いに、母さんと俺の声がハモッた。さすが母さん。父さんのことを良く分かっておられる。
「さすがにその姿で男物の制服はねぇ~。」
「確かにそうだけど!学校にはどう説明するんだ!!」
「ああ、あの学校は父さんや守の話を聞く限り大丈夫だろう。色々変だが、バカみたいに寛容な所もある。転校生だって校長に言えばテキトーに認めてくれるだろ。」
そこまでテキトーだったっけ?確かにあの高校は変だし、バカみたいに寛容な所があるが…なるようになるか。
「でも、俺が転校生になったら高壁守が出席しないことになるが…」
「……か、風邪って事でいいんじゃないかい?」
「結局仮病かよ!なら最初から行かなくてもいいだろ!!」
「……いっそ性転換のことを言えばいいんじゃないかい?」
「んなこと誰が信じるかああああああああああああああ!!!」
俺の叫びは隣の家まで響き、隣の家の人が怒鳴り込んできましたとさ。
さて、俺は学校には行かなきゃならんのだろうか。それとも行かなくていいのだろうか。
それは父さんが決める事だ。後者でありますように…




