第二百三十八話 複雑な心境?疲れる食事!?
一話目。
まさか一気にこんなに書くとは…
家に着くと、すぐさま晩飯となった。
なかなか帰ってこなかったから片付かなかったと小言を言われたが、気にする必要も無いためさっさと飯を食い始める。令音が。
晩飯の途中、こんな事があった。
『次のニュースです。本日の夕方六時四十分に交通事故がありました。
被害者は学生で……』
テレビの画面に映っていた名前は…優野令音。俺の体に乗り移った、人魂の生前の名前だった。
「今の世の中恐いね~、守、他の皆もだけど、車には気をつけるんだよ!」
「は、ははは…」
その被害者にそんな事を言っても…という令音の心の声が聞こえてきた。比喩ではなくマジで。
まあ、その忠告は遅かったとでも言っておくか。あ、言えないんだった。
「何でそんなに微妙な顔してるんだい…守、何かあったのかい?」
自分が死んだと言うニュースを聞いているのだ。複雑な心境になっても仕方あるまい。
「い、いや、何も無かったよ…」
令音は元気無く答える。心の声が筒抜けだから分かるのだが、自分が死んだと言うニュースを見て、本当に自分は死んだんだと実感させられたかららしい。
ご愁傷様、としか言いようが無い。
「…ふ~ん…」
母さんの目は完全に疑ってる目だ。別に乗り移られた事を話してもいいのだが、令音がそうしない。
母さんとあったときに話したが、令音曰く、乗り移った事が知られて、変に気を使われるのが嫌だからだそうだ。皆にも一応その方針は伝えている。
分かるような分からないような…
「………」
仕事から帰ってきた父さんもこの場にいる。
ただ、無言なのが恐い。乗り移られた事は隠しているため、核心をつくような発言はして欲しくないが、無言なのも止めて欲しい。
令音も同意見の様だ。この調子じゃ、いつかばれてもしょうがないな…
晩飯の後、やたらと疲れた様子の令音が、俺のベッドにうつぶせに横たわる。
まあ、隠し事をしている手前、あんな疑われるような空気に当てられたらな…俺も疲れたぐらいだ。令音はもっと疲れているだろう。
「うん…今のでものすごい疲れた。」
そりゃそうだろうな。で、もう寝るのか?
「うん。だってする事も無いし」
「守。ちょっと来てくれ。」
令音が喋っている途中に部屋の外から父さんが呼びかけてきた。
これはもしかしなくても怪しまれたな。
「やっぱり?どうすればいいの?」
「何独り言を喋ってるんだ?早く来い。リビングだ。」
父さんがそう言うと、遠ざかる足音が聞こえてきた。父さんは先にリビングへと行ったのだろう。
「どうする?」
…まさか、喋らなくても俺には伝わることを忘れたのか?
まあ、ばれたら正直に話すことをお勧めする。そこまでして隠すことでもないし、例えごまかせても後でばれるだろうし。
(…まあそうだよね。)
とにかく、あんまり父さんを待たせないであげてくれ。早く行った方が良い。
(分かった。)
なるようになるさ。あんまり根つめないで気楽に行こう。
(そうですね。)
令音は部屋を出て、リビングへと向かった。
「来たか。」
リビングには、父さんだけでなく、母さんもいた。
「守に話がある。お前、何か隠し事をしてるだろ。それもかなり重要な事を。」
さすが父さん…達と言ったところか。伊達に俺の親を十五年もやっていない。
「根拠はなに?」
令音が一応訊く。まだ隠せる可能性はあるかもしれないと思っているらしい。
「まずはその喋り方だ。守は顔はともかくそんなに女々しい喋り方はしない。女にはなったが。」
おい、なんて事を言ってくれるんだ!誰が女々しい顔じゃ!
っと、そっちじゃない!女にはなったがのところで令音が訳分からずに固まってるぞ!!
「次に雰囲気。普段の守の雰囲気とは全く違う。」
「……他には?」
令音が再起動する。まだ弁解の余地があるかを探るらしい。
「さっきの交通事故のニュースの時の様子だ。あれは明らかにおかしかった。」
さて、ここまできてしまったらもう弁解の余地はあるまい。もうとっくにそんな物は無かった気がするが。
「……仕方ない。隠す気だったけど、全部話すよ。私は……」
令音の説明が始まった。




