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第二百三十七話 一体どうした?とにかく逃げろ!?

三話目。

 

「手もある…足もある…」


 続けて俺の体から発せられる声。だが、それは俺の意思で発せられた言葉ではない。

 俺の体は手を何度も握っては開き、握っては開いているが、俺の意思で動かしているわけではない。

 今、俺の体は、俺の意思では動かせない。

 しかし、俺の意思に反してこの体は動き続ける。何故なのか。

 それは恐らくだが、さっきぶつかった人魂が俺の体に乗り移り、操っている(本人にそうする気はなかったようだが)のだろう。なんとなく俺の体の挙動で分かる。

 だが、これだけのことがあれば、普通は動揺するものだ。だが、俺は冷静だ。それは何故か。

 動揺している他人を見ると冷静になる、というのは聞いたことがあるだろうか。あからさまに動揺した皆を見ると、冷静になってくる。

 皆からすれば、突然倒れ、起き上がったと思ったら訳の分からない事を呟いているような状態だからな。動揺するのも無理は無い。


「ま、守!?一体どうしちゃったの!?」


 今にでも喋って、そのことを伝えられればいいのだが、今の俺は体が動かせない。故にそれは出来ない。

 俺の体を操っている人魂がそれに気付いて、それを言ってくれればいいのだが…俺が考えている事をどうやって伝えるか…


(守…でいいの?伝わってるよ。)


 伝わってる?マジで?


(うん。今どんな状態なのか、私が何をすればいいのかも分かったよ。とりあえず、あの人達にこのことを言えばいいんだよね?)


 そうだ。よろしくな。


(分かった。)


「…皆に聞いて欲しい事があるの。」


「「「「「「「「「「『『!?』』」」」」」」」」」」


 元人魂が喋り始めると、皆は驚いた。喋り方のせいだろう。


「私はあなたたちの知る守じゃない。私はさっきの人魂…生前の名前は、優野ゆうの 令音れいね。この体に乗り移ったの。」


 優野令音か…聞いたことが無いな。


「乗り移った…?」


「…じゃあ守は!?元の守はどうなった!?」


 ルーが訊く。他の皆はというと、話についていけないのか呆然としている。お前らは魔法も魔物もいるようなファンタジーな世界で育ったんだろうに。タカミはともかく。


「守さんは…消えたわけじゃないので安心して。守の精神はこの体の中にあるの。守さん本人の意思ではこの体は動かせないみたいだけどね。」


「……興味深い。実に興味深いぃ!」


 あ、フラルのスイッチが入った。これはマズイ。


「え!?マズイってなにがなの!?」


「どうやって乗り移ったのか…さあ、教えてもらうよっ!」


 地味にまたフラルの口調が変わってるな。あと令音。逃げろ。質問地獄に堕ちたくなければな…


「質問地獄って何!?とにかく逃げればいいの!?」


「逃がさないぞぅ!」


 ふむ。新しいフラルの口調は語尾に小さい文字が入るのか。なるほど。


「納得してないで助けて!」


 俺の逃げろと言う言葉を信じ、必死に走る令音。それを追いかけるフラル。

 助けたいのは山々だが、俺は自分の体が動かせないのでどうしようもない。という訳で令音、頑張って逃げてくれ。


「そんな~~~~~~~~!!」


「待て~~いぃ!!」


 この追いかけっこは、俺が令音に案内をして俺の家に着くまで続いた。

 皆も二人を追いかけてきていたようで、後で迎えに行く必要が無くて良かった。

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