第二百三十五話 行き先が決まらない?フラグじゃねえか!?
一話目。
さて、十三人というどこのゲームでもそんな固定パーティーの数は無いであろう人数で外に出たは良いが、特にどこに行くかを決めていたわけでもない。
こんな時、創作物内の人間ならどう動くか。
ゲームセンター、遊園地は却下。人数が多すぎて金が足りない。
カラオケも却下。俺とタカミ以外は誰もこちらの歌を知らない。
金がかからない、何も知らなくても教えるのに時間が掛からない。そんなやたらとシビアな条件の中、俺が出した結論は…
「…何か行きたいところとかは無いか?金のかからないところで。」
皆に行きたいところを訊くことだった。もう何も思いつかない。降参だ。
「この前帰ったっきり戻ってこない五人の家とかは?」
「宿題に集中するから無理、だと。」
俺はギーナの案を否定する。
昨日気付いたのだが、俺のケータイに、「宿題が終わるまで六人で集まらないようにしよう、休遊協定だ。」という文が俺たち六人の通信アプリのグループに、太郎から送られていて、皆も賛成の意を示していた。こんな時に限って皆はまじめになる。
俊太もなんだかんだ言いながら毎年冬休み、夏休みの宿題は頑張って終わらせてるしな。
まあ、原因は俺たちにあるわけで、出会って間もない中学時代の時に俺たちは始業式の前日なのに宿題に全く手をつけていなかった俊太について、ず~っと宿題をさせてたしな。あまりにも辛すぎてトラウマにでもなったのだろう。
あの時ばかりは六人集まると宿題もせずに遊んでばかりの俺たちも、何故か心を鬼にして俊太に宿題をさせ続けた。
それからというもの、俊太は宿題を必ず期限内に終わらせるようにしたそうな。めでたしめでたし。
「じゃあ、この町を案内してよ!」
「お前ら…自分が目立つ格好してるって分からないのか?」
「「「「「「「「「『『え?』』」」」」」」」」」
どうやら俺が言った意味が分かってないようだ。タカミとギーナ以外は。
異世界の服装は現代の服装とは異なっている。
具体的に言うと、ギーナの皮の防具、タカミの翼とわっかなどがあげられる。
それだけではない。日本人は黒髪が多いが、この中で黒髪の奴は少ない。特にギーナの青い髪なんて得に目立つだろう。昨日の帰り道でもやたらと視線を集めてたからな。顔がいいこともあるだろうが。
とはいえ、もう既にこいつらは俺の許可も無しに昨日外に出てしまっている。その点ではもう手遅れであろう。だから俺は、
「とにかく、お前らはただでさえ目立つ格好をしてるから、くれぐれも目立つ事はするなよ。」
とだけ言って町の案内を始めた。
フラグくさかったが、何とか問題も起きずに町の案内を終えてほっとできた。
「今の守も大概だって事を忘れてない?」
俺は何も聞いてない。タカミの言葉なんて聞こえなかった。幻聴だろう。
町の案内が終わる頃には、もうすっかり空は黒く変色していた。別に何かの化学反応が起きたわけではない。単に夜になっただけだ。
そこまで案内する場所なんて無い町なのだが、この前帰ったっきり戻ってこない五人の家で時間を取られたのが原因だ。
で、今は帰っているのだが…
「なんで夜に墓場の前なんて通るの…」
「こっちのほうが近いし、さっさと通って終わりだから別にいいかと思ってな。」
実際、墓場の前なんてすぐに過ぎるからな。考慮の必要も無いだろう。
「…あ…あれ…」
キャビがなガタガタと震えながら墓場の一点を指差す。俺を含めた皆もその一点を見る。そこにあったものは…
「人魂!?」
ふわふわと浮かぶ、一つの人魂。
それはあっちこっちと動き回り、俺たちに幻覚などではない事を証明した。
俺は驚きはしたものの、同時に強い興味を覚えた。この一ヶ月、異常事態なんて何度も起こった。だからこそ余裕があり、なおかつ興味を覚えたのだろう。
「ちょ、ちょっと、守!」
俺は墓場に入っていき、その人魂に近づいていく。
俺以外には誰も入ってこない。暗くてよく見えないが、その顔は驚愕に包まれているのだろう。
ギーナが止めるが、俺は、
「大丈夫だ!」
と言ってそのまま進む。
この判断が後に後悔する事になるとは、この時の俺には知るよしも無かった。




