第二百二十四話 打開の策は考えてない?気付くのが遅かった!?
一話目。
「さて、とりあえず上に逃げてみたがこれからどうしようか。」
「何も考えてなかったの!?」
「ああ、さっぱり。」
「「……」」
二人の冷ややかな視線を受けつつもこの状況をどうするかを考える。
普通に下に降りようとしても囲まれるし、下の奴らが追いつかないように素早く移動しようとしても限界がある。
さて、この状況をどうしたものか…
「…こういう時、普通なら有名人とかは変装とかをするんだけど、予備の服とかは無いし…」
光が呟く。変装か…確かに予備の服があれば…
ん?そう言えば俺は予備の服はあるな。
でも顔でばれるから顔を隠さなければならないだろう。だからどの道…いやでも何かが引っかかって…
「あ。」
「え?どうしたの?」
「そうだ…服は障壁で創ればいいんだ…!そして顔は創る服を顔が隠れるものにすれば…!!」
「それよ!ナイスアイディア!」
今回は昨夜の後悔が生きた。その後悔が無ければこの案も出てこなかっただろう。
後悔して良かったと思いつつも障壁で顔が隠れるフード付きの真っ黒なローブを三つ創る。
そして一人に一つずつ渡し、俺もローブを着る。
「さて、皆着たか?」
「オーケー。」
「私も。」
二人がローブを着たことを確認し、下に降りる準備をする。
まずは人目の無い所を探す。その際、ローブを着たことを気付かれないようにする。
ちょうどいい場所を幾つか探し出すと、俺はその場所に向けて真っ直ぐに障壁を展開する。
いくつも着陸地点候補があるわけだが、実際に行くのは一つだけだ。そうすることで俺たちがどこに降りる気なのかを分からなくさせる。
一つ一つ徐々に下に行くように幾つもの障壁を展開させても良かったんだが、そうすると飛び移るところを見られてしまうので止めておいた。
「こっちだ。」
俺は小声で二人に指示する。
俺が音が出ないように走り出すと、二人もそれに続いた。
ようやく地面に辿り着いた。
その先には数人追っかけが居たが、「気になって登ってました、お騒がせしてすいません。」と言ってごまかし、さっさとその場を離れた。
だが、その中の一人はごまかせなかったようだ。
「やはりその手で来たか。」
そう。他の誰でもない、タムだ。
「さすがあの小説の作者。俺のそっくりさんの物語を書いているだけあるな。」
「…そっくりさん?」
タムが不思議そうに訊いてくる。その問いに、
「ああ。俺の経験とあの小説は違う点が多い。確かに大部分は似ているが、それだけだ。それに…」
「それに?」
「俺は一級フラグ建築士でもなければ、朴念仁でもない!!」
と、高らかに宣言した。
決まった…!と思うのも束の間、三人からのやたらと冷たい視線が刺さっている事に気付く。
「え?え?どうした?まさか俺は一級フラグ建築士なのか?それとも朴念仁なのか?」
「どっちでもないけど…」
「よくそんなことを堂々と宣言できるなーと。」
「激しく同意。」
「………」
今更ながらかなり恥ずかしい宣言を高らかにしたことに気が付いた俺は、しばらくうなだれたままだった。




