第百五十七話 第十試合は二対一?絶対的な優位!?
一話目。
休日だから時間があると思っていましたが、そんな事はありませんでした。
無念。
第十回戦は、何と言う事でしょう、出場選手は三人です。
ここまで出てこなかった太郎、火太郎、ガーニャの三人だ。
「「よろしくお願いします!師匠その3!」」
「はい、よろしく。」
そう言えば、ガーニャも皆に訓練させてた教師側だったって言ってたっけな。太郎が。
「第十試合開始!」
審判は俊太になった。あの後何とか復活し、ついに審判の座を太郎から奪い取る事に成功したようだ。
まあ、この試合が終わったら奪い返されそうだがな。
「さて、二人まとめてかかってきなさい。」
「「はい!」」
師匠の余裕か、ガーニャは火太郎と太郎に一気に掛かって来させた。
「若いって良いわね~。」
年寄りくさ…
い、いやなんでもない。決して殺気を向けられたから思考を中断したわけじゃないぞうん。
あれ?皆顔がこわばってるような…気のせいだよな?
「さて、と。失礼な事を考えかけてた輩はほっといて、試合に集中しないとね。」
「「……は、はい!」」
太郎と火太郎も顔がこわばっていた。お前らもか。
「さあ、行きますよガーニャさん!」
そう言って火太郎が突っ込んでいく…わけでもなく、炎の玉を飛ばしてガーニャに攻撃した。
皆が魔法で出すような火の玉ではない。もっと強力な、赤い炎だ。
「やっぱり炎を使ったわね。まあ、能力って言う点では十八番だから当然と言えば当然ね。」
火太郎にも能力が目覚めてたのか。
となると、太郎は何なんだ?仲良し六人組(守、太郎、火太郎、俊太、光、移図離の六人)で能力が明らかになってないのはアイツだけだが。
「でも、そんな攻撃単調すぎるわ。小手調べのつもり?仮にも師匠の一人に向かって。」
「いや、本番はこれからですよ。」
火太郎にはなにやら秘策があるらしい。
と思っていたら、炎が徐々に失速し始め、地面に落ちた。
「…なにやってってえ!?」
地面に落ちた炎は消えてなくなると思いきや、地面に落ちると小さい幾つもの炎となり、ガーニャに向かっていった。
「でも、甘いよ!この程度なら対処くらい出来る!」
ガーニャは風をゴウ!と言う音とともに壁のように展開し、炎を防ぐ。
「そのくらいは分かってましたよ。太郎!」
「おう!」
どうやら、ガーニャが炎に気を取られている隙に、太郎が回りこむ作戦だったらしい。
太郎がガーニャの後ろから近づき、殴りかかる。
…どっかで似たような作戦を実行したような…気のせいか。
「…まだまだ甘いよ。なんで風の壁で火太郎君の攻撃を防いだのか、分からない?」
「「?」」
どうやら二人は分かっていない様子だ。
だからと言って、俺も分かっている訳ではないが。
「ただ防御するだけなら土の壁の方が良いに決まってるじゃない。
なのに何故風の壁にしたかって言うと…」
太郎の攻撃はあっさり避けられ、そのまま風系統の魔法か何かを使ったのか、太郎はリング外に吹き飛んでいった。
「視界を遮らないからよ。風は色が付いてるわけじゃないから壁の向こう側も見れる。
だから後ろに回り込もうとしていた太郎君の姿も見れた。炎が散らばったあたりで牽制目的じゃないかって分かったからね。前もってこういうことの対策は考えてたの。
どこかの誰かさんがその手に引っかかったから。」
そのどこかの誰かさんはというと、苦い表情をしている。
言ってやるなよ。
とりあえず、太郎は負けだな。
「く、くそっ!」
リング外から太郎の悔しそうな声が聞こえる。
「はははははははははは!太郎ザマァ!俺の審判役を取った罰だ!!」
そしてその負けを笑う俊太の声が聞こえる。
「なんだと!それとこれとは関係ないだろ!?」
更にその声に反論する太郎の声。もうこいつらはほっとこう。
「……それで、どうするの火太郎君?」
「うっ…」
火太郎は返答に詰まっている。他の作戦は考えていなかったのだろうか。
「じゃあ、アタシから行くわね?」
ここからはガーニャのワンサイドゲームだった。
火太郎が炎を出してもことごとく防ぎ、逆にガーニャの攻撃は通じる。
ガーニャは火太郎を試すように試合を長引かせたが、結局最後までガーニャの優位は覆らなかった。
そして…
「勝者、ガーニャ!」
火太郎のリングアウトで第十試合は幕を閉じた。




