第九十七話 これで戻れる?世界はもうすぐ滅びる!?
三話目。
百部目だけど百話じゃない。ややこしや。
「…あれ?」
おかしいな、能力を使ってこの石に性能をつけたはず…今持ってるから触れてるって事で、元に戻ってもいいはず…
そう思い、石を持っていない左手で石に触れてみた。すると…
「おおっ!?」
石が一瞬光り、すぐに戻った。いったいなん…ああ!!
「戻ってる!!戻ったぞおおおお!!!」
自分の体を見てみると、さっきまであった胸の二つの膨らみは無くなっており、声も低くなり、男にあるはずのアレがあった。
良かった…良かったよ…ついに…ついに戻れたんだああああ!!!
…でも、この体に少し違和感を覚えてしまったのは凹むな…なんだかんだで何日もあの姿でいたから慣れが生じてしまったらしい。
もっとも、この体のほうが馴染むのは変わらないが。
「さて、障壁は出るかな…って、この石どうしよ。」
この石は触れるだけで性別が変わる機能付きだ。うっかり触れてしまってはまずい。
あ、そうか。障壁で箱でも創ればいいか。出るかどうかはまだ分からんが。
俺は、障壁を出そうとしてみた。すると…
「おお!出た!」
俺の左手の上に、黒い物体…障壁が現れた。どうやら、障壁は出せるらしい。
「じゃあ、この石を障壁で囲って…と…よし!早速ギーナの家に戻ろう!」
さて、早く戻らないとな!
俺は石を入れた障壁をポケットに突っ込んで、ギーナの家に戻っていった。
「……」
「「「「「「「「「「「「「『……』」」」」」」」」」」」」」
ギーナの家。ルーマが出て行った後、リビングには沈黙が流れていた。
誰も、何も喋らない。やはり、ルーマが出て行ってしまい、寂しさのようなものがあるのだろう。
「なあ…皆…」
沈黙を破ったのは、俊太だった。
「…なんだ?」
嫌な予感しかしない太郎が答える。
「…腹減ったんだが。」
「「「「「「「「「「「「「『……は?』」」」」」」」」」」」」
俊太以外の声が重なる。
「いや、だってさ、もう昼過ぎてんのに、まだ何も食ってなかったろ?」
「…そういやそうだな。」
ここに居る全員は、ルーマが帰ってきてから昼食にするつもりだった。が、帰って来た矢先に突然の宣告である。
そのため、まだ誰も昼食をとっていなかったのだ。
「しかし、なんで誰も喋らなかったんだ?誰も喋らないから俺も黙ってたんだが。」
「「「「「「「「「「「「「『何!!??』」」」」」」」」」」」」」
俊太が空気を読んで黙っていた事に驚く一同。
結局沈黙を破ったのは俊太であったが、雰囲気殺しとまで呼ばれた俊太が空気を読む、と言うのは、一同にとって、青天の霹靂だった。
「ばかな…!俊太が空気を読んだだと!?」
「あ、ありえない…そんなこと決してある訳が無い!!」
「なに?明日は世界が滅びるの?」
「……懺悔はしておかないと……」
「…お前ら、ひどすぎるぜ…」
言いたい放題とは、まさにこの事だろう。そうでなければ、言いたい放題の基準が相当厳しくなってしまう。
「さて、昼食の準備ね。」
ガーニャが台所へ向かう。その時だった。
「お~い!宅配便ダス~!開けてくんろ~!!」
どっからどうみてもふざけた声が玄関から聞こえてきた。
この声には、全員聞き覚えがあった。守だ。
「…今、なんか玄関から聞こえ…あれ?守の父上は?」
「ん?…あれ?いない…?」
ギーナの言葉に、その場の全員が、守の父親がいないことに気付いた。




