表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
67/410

炎の王編08

「かつて我が前に倒れ伏し、絶望と怒りに身を震わせる少年がいた」

炎の王の言葉が、バラミッドの玄室に響く。

「かつて我が前に立ち、炎を背に剣を手にした戦士がいた」

俺の声も同じように響く。

「その少年は時を経て成長し、今我が前に立つ」

「その戦士は今も変わらず、炎を背に剣を手に我が前に立つ」

「今、その決意を認め、決着をつけるとき」

「今、その強さを認め、決着をつけるとき」

炎の王が、深紅の大剣を構える。

両者ともに剣を構え、戦う準備が整った。

俺は、万感の思いを感じながらも、それを心の奥底へ押し込みーー駆けた。


両者の剣がぶつかりあうことで戦いが始まった。

黒い残光を描く魂の魔剣と、炎の軌跡を刻む深紅の大剣が幾度も幾度も、ぶつかり合う。

カインの口には笑み、炎の王の兜の中の顔も笑っていることだろう。

小細工なしの真っ向勝負。

どちらかが引くまで剣を打ち続ける。

それは、かつてグラールホールドでの戦いに似ていたが、明確に違う点もある。

カインが炎の魔力に頼っていないことも、その一つだ。

幾度もの死線をくぐったことで、カインの強さは無限魔力なしでも炎の王に匹敵している。

いや、むしろ無限魔力を使うと炎の王には勝てない。

グラールホールドでの戦いでそれを悟った。

永遠に戦い続けることはできるだろうけど。

欲しいのは結果だ。

勝つにしろ、負けるにしろ、全力で戦ったという結果。

もちろん、負けるつもりはない。


幾度もぶつかり合った剣撃は、両者が前方にすれ違い距離をとったことで一旦、終わりを迎えた。

「準備運動はこれくらいでいいだろう」

「丁度、体が暖まってきたところだ」

炎の王は、剣を両手で持った。

全力で戦う合図だ。

カインは逆に、力を抜いて片手で魂の魔剣を持つ。

そして、両者が同時に動く。


炎の王の空気を焦がす突きを、左手で受ける。

生まれた隙に、魔剣で切りつけ。

絶妙のタイミングだったが、炎の王も神業的タイミングで回避。

すかさず追撃。

炎の王は俺の読みとは、逆の方向へ爆風を発生させ距離をとる。

あんなのありか?

だが、よくよく考えればアルフレッドとの初戦闘のとき似たようなことをしていた、ような気もする。

憎い相手と知らず知らずのうちに戦い方が似ていた、というのも皮肉だ。

ならば、同じような戦い方をすれば相手も嫌がるだろうな。

俺は、背中で爆風を発生させ吹き飛ばされながら距離を詰める。

ダメージのない攻撃魔法というのも、おかしなものだが、こういう使い方もあるのだと炎の王を見て学んだ。

爆風に後押しされて繰り出した剣は、普段より威力を増して炎の王を襲う。

無理矢理な距離の取り方をしたせいで、炎の王の態勢にわずかなぐらつきがある。

俺自身の加速と、炎の王の隙が噛み合って魔剣が炎の王の頭部を直撃!!

まさに会心の一撃だった。


「やりやがった。あの化け物相手に」

アルフレッドの呟きは、この場のほとんど全員の思いそのものだ。

一度炎の王と剣を交えたカリバーンにしても、あそこまでダメージを与えたことはない。

「カインは強くなった。剣の腕もそうだが、魔法の使い方もな」

「しかし、妙なことがあった気がするんだが」

ホルスの疑問に、アズも続ける。

「それはあたしも思った。炎の王の剣をあいつ、素手で受け止めてなかった?」

何度か、炎の王の大剣をカインは素手で受けとめ、あるいは受け流していた。

かといって、熱がる、痛がるといったダメージは受けてない。

さらに言えば、杯の呪文である結界を張っている様子もない。

理解に苦しむ状況ではあった。

「アズ、それがそんなに不思議か?」

見かねたように、そしてどことなく嬉しそうに黒騎士が口を挟んできた。

「そりゃあ、不思議よ」

「魔法の五大属性、即ち地火水風闇は循環の関係にある」

急に講義が始まる。

カインと炎の王から目を離さず黒騎士は続ける。

アズは、どちらにも目をやりながら精一杯聞く。

「地から火がおこり、火から風がおこり、風から水が生まれ、水から地が湧く。その関係が、そのまま威力や防御に関係してくる。例えば火の場合だと、風属性に干渉すると威力があがる。逆に地属性に干渉すると威力が減少する」

「なんとなく、わかってきた。じゃあさじゃあさ、火が水に干渉した場合は?」

「強化でなく、また弱体化でもない関係性の場合、それぞれが打ち消し合う。この場合の火と水は打ち消し合い、どちらも消滅する。ただし、どちらかの威力が強い場合、そちらが残ることもある」

「海に松明投げ入れても、火が消えるだけってことね?」

「そうだ。では、カインと炎の王の場合はどうしていると思う?」

黒騎士の方からかけられた問いに、アズは考え始めた。

カインと炎の王は激戦を続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ