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カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
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魔法王国編18

「腑に落ちない顔だな」


紫の戦士は、怒りに満ちた顔でカインを睨み付ける。

ただ、友の仇と言われても思い当たることがーーまあ、無いわけではないが、今回はーーない。


「我が名は、パルプア。フェルアリード師の高弟の一人だ」


フェルアリードの弟子か。

ならば、その友とは。


「気付いたか?そうだ、貴様が焼き殺した幻影術士ゾフォンこそ、我が友だった」


ようやく得心がいった。

だが、カイン自身はよく覚えていない。

覚えていないほどの激怒だったのだ。

それを引き起こした奴を許す気はない。


「で、俺を倒したいわけか」


「そうだ。貴様の首を我が友の墓前に捧げる」


「はたして、お前にできるかな?」


カインはパルプアに剣を突きつけた。

パルプアは反応できていない。



ディラレフとアルフレッドの戦いは激しいものだった。

重装片手大剣使いのアルフレッドと、重装片手剣使いのディラレフ。

似たような戦い方の二人だが、優勢なのはディラレフの方だった。

攻撃の頻度は、より軽い片手剣のディラレフのほうが多い。

そして、アルフレッドの攻撃は当たらない。

アルフレッドの体術を併用した高追尾性能の攻撃をディラレフは避ける。

カインのような先読みの回避ではない。

来る場所がわかっているから避けている、という感じだ。


「おいおい、それでセト軍最強の騎士かよ?おっきな剣が泣いてるぜ」


アルフレッドは反論せずに剣を振るう。

それも、容易く回避された。


「情けなくて言葉もない、か?ハハハ、ロートルは大人しく砂漠で寝てな」


ブンッと刀身が、ディラレフの顔面寸前を通り抜ける。

ディラレフは反応できていなかった。


「ふう、ん?読めてきたぜ、テメェのからくり」


アルフレッドは笑みを浮かべる。


「なんだと?」


「言葉はいらん。ただ戦いを楽しめよ」


アルフレッドは一歩、踏み出す。



アズを目の前に、ロンダフ老人は二つのリングがついた杖をかざす。


「奪われた力、それを取り戻すために余はさらなる研鑽を積んだ」


杖を振るう。


「その結果がこれだ。余の命に答えて姿を現せ、オセ、フラロウス」


ロンダフ老人の声に反応し、二体の豹が出現する。

黄色い豹がオセ、赤い豹がフラロウス。


「ちゃんと魔族を召喚できるようになったのね」


以前の黒い影だけの召喚ではなく、ちゃんと姿形を備えて呼び出せるということは、召喚術士としてのレベルがあがった、ということだ。

すなわち、魔族と意志疎通をはかり、その名を知り、その姿を教えてもらったということでもある。


「だったらなんなのだ?魔族の心を知ることが、それほど大事なのか?私が欲しいのは力だ、力なのだ」


力を、と言葉を繰り返すロンダフ老人を哀れみの目で見てアズは小さく呟く。


「力にみいられたのね、いいわ。私が叩き潰す」


アズは集中し、意識の深淵で名を呼ぶ。

それに答えてエリゴールとバラムが姿を現した。

結界船で見せたような同時四体召喚は、今はできない。

というか、出来る気がしない。

まあ、二体召喚はできる。

そこは、ロンダフ老人と同条件だ。

オセとバラム、フラロウスとエリゴール、四体の魔族がそれぞれの召喚術士の命を受け戦い始める。



カインの踏み込みから、繰り出される斬撃。

瞬間的に炎をまとわせて、魔剣を形成している。

片手剣で防ごうとしていたパルプアは、慌てて後ろへ下がる。

悪くない判断だ。

あのまま、防御していたら剣ごと切り裂いていた。


「ふ、ふざけるな。真剣勝負に魔法を使うなど、恥を知れ!」


何を言っているのだ?とカインは不可解さを覚えた。

いつから、俺とこいつは真剣勝負ーーいや、やっていることは試合だーーをやっていたんだ?


「命のやりとりに、魔法を使うも使わないもないだろ?自分のもてる全てを使わなければ、勝てない。生き残れない。俺はそう思うが?」


「なんだとぉ?そうやって、ゾフォンも不意討ちにしたのだな?この卑怯者め」


恥知らずの次は卑怯者か。

なんだか、考え方にズレがあるよな。

こんなのが、よくフェルアリードの弟子なんかやってたよな。

そんなことを考えながらも、カインは剣を繰り出す。

剣の軌道に火花が走るが、パルプアはそれすら避ける。

さらに踏み込みを深くし、剣を振るう。

パルプアの芸術的な回避に感心しながら、カインは攻撃を続けている。



「ディラレフは、まだ未熟ね。パルプアは攻撃意欲が足りない。教皇はなかなか頑張ってる。まあ、まだ皆本気を出していないけどーーそれは、向こうも同じか」


ソファーでくつろぐリィナは楽しそうに笑うのだった。

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