魔法王国編16
「ありゃあ、言い過ぎでまとまりがない、と俺は思った」
アルフレッドの言葉に、膝を抱えて座るアズは力なく答えた。
「あたしだってわかってるわよ。あそこまで、落ち込んだカインにかける言葉じゃ、ないってことくらい」
「わかってたなら、いいけどよ」
「でも、見てられなかった。本当にカッコ良いって思ってたから」
「まあ、帰ってくるだろ」
「安請け合いはやめてよ」
「違うって。俺の知るあいつなら、きっと帰ってくる」
「お前に俺の何がわかるってんだよ?」
カインの声に弾かれたようにアズは顔をあげる。
「帰ってきた」
「やるよ。俺は炎の王を倒す。俺自身の壁を越えるために」
「なら、いいよ。私の前ではカッコ良くしててね」
「ハードルたけぇな」
「なんか言った?」
アズに主導権がいきはじめていることに、アルフレッドは気付いた。
気付いたが、特になにもしなかった。
「でよ。今回の目的忘れてねえよな?」
主導権はともかく、この探索の目的はアルフレッドの使命でもある。
そこは主張しとかないとまずい、とアルフレッドが思ったかはさておき。
二人は、完全に失念していたようだった。
「あ」
この一声が、それを証明していた。
フェルアリードの居城である。
このくらいの罠があることは想定しておかなければならない、とカインは言うだろうが、出たとこ勝負だ、とアルフレッドは思うのだ。
懐かしい思い出にも出会えたことで、アルフレッドは評価が甘いのかもしれない。
フェルアリードのことは信用してなかった、とはいえ一時は共に行動していたし。
ある意味、悲惨な幻影を見せられたカインとアズには申し訳ないが。
灰色の迷宮城、と呼ばれている通り城内部は迷路だった。
だが、壁壊しを会得したアズとアルフレッドにとってただの面倒な壁の連続に過ぎなかった。
「お前ら、ほんとめちゃくちゃだな」
「カインはどうやって、あの魔法使いのところまで行ったの?」
「いや、よく覚えていないんだが。あいつの気配?魔力の波長とやらをとらえて、そこまで炎を噴射して道をつくった、ような気がする」
「カインのほうが、メチャクチャだよ」
魔力の波長について、カインの中にはおぼろ気な認識しかない。
揺らめく波のような物が見える、というか感じるだけだ。
それでも、個人ごとの違いはなんとなくわかる。
その波長、それも知っている人物のものが上の階から流れてくるのがわかった。
リィナ・テリエンラッド、だ。
フェルアリードの娘を名乗る彼女が、ここにいるのは自然な気がする。
その他にも、何人かの気配はするがよくわからない。
まずは、上への階段を探そうと三人の意見が一致したのは一階の壁をあらかた壊し尽くした後だった。
階段は、すぐに見つかった。
だが、二階も迷路。
三階も、四階も。
その迷路の突破ーー破壊ともいうーーに時間がかかり、窓から見える景色はすっかり夜になっていた。
次の階への階段を見つけ、そこで三人は休息を取ることを決めた。
カインが、ぼろぼろの家具に火をつけ焚き火を起こす。
アルフレッドが用意した携帯食を温める。
干し肉を戻したスープに、乾いたパンをひたして食べた。
「なんか、妙に疲れたな」
「それ、こないだも言ってた」
「ああ、ジャンバラと会ったときだな」
「うるせーよ。俺は年なんだ」
「あれだけ、動いて壊してよく言うよ」
「しかし、あれだな。あのファイレムってのはなんだったんだ?」
「いきなり、でてきたよね」
「なんだよ?ファイレムって」
カインが意識を失っていた間に出てきた、自称大地の王のことを二人は話した。
第14階位の魔法を唱えたことから、おそらく本物だと思う、というところまでだ。
「大地の王ね。風の王らしき奴が出てきたり、王様ラッシュだな」
「心当たりはねえのか?」
「心当たりねえ」
いくら探しても、大地の王と関わったことはない。
炎の王ならともかく、だ。
だが、何かひっかかるものを感じてカインは、道具袋を探った。
指に触れるリング状の何か。
そして、記憶が反応する。
あの、夢の国の入り口で黒い羊にもらった指輪。
「大地の王の指輪」
と言いながらカインはそれを取り出した。
金で作られた輪と台座に、黄玉石が嵌まっている。
「そのものズバリじゃねえか」
「そっから出てきたのかな?」
しかし、指輪をいくらさわっても反応はなかった。
そして、カインとアルフレッドで見張りをすることにして、今夜は休むことにした。




