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カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
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魔法王国編14

“杖”の第14階位“マインドダイブ”の呪文をさらっとファイレムは唱えた。

あっさりと到達者級を越えた魔法に、しかしアルフレッドとアズはそんなに反応しなかった。

基本前衛のアルフレッドと魔法覚えたてのアズは、その凄さがわからなかったのだ。

魔法のわかるものが見れば、ひっくり返って喚きそうなくらいの衝撃を受けるかもしれない。

その魔法を受け、二人はカインの中に吸い込まれた。

その奥深く、精神と記憶の領域へ。


気付くと二人は、深い森の中にいた。


「ここは?」


「わからん。はじめての場所だ」


「ここは、クード村。プロヴィデンスの北東部、モーレリアの南部にある小さな村じゃ」


いい加減、はじめての人物が多くアルフレッドの対応はおざなりになっていた。


「で、あんたは?」


「わしはマーリン。マーリン・ディランというしがない魔法使いじゃ」


「だ、大賢者!?」


さっきから、大地の王やら大賢者やら大人物ばかりで心臓に悪い。


「そう呼ばれておるな。まあ、ワシ自体はその影に過ぎぬよ。言うなれば、カインの中のマーリンの残滓じゃな」


そういえば、カインはマーリンの養子だった。

と、報告を受けた気がする。

本人から聞いたわけではないから、確証はない。


「さて、ここはカインの記憶から再生された数年前のクード村じゃ。お主らにはここであったことを見てもらう。それが、カインの傷じゃ」


思わず身構えてしまう。

覚悟は決めてきたはずだが、少し震える。


深い森は暗く、月明かりも届かない。

そこを旅人が歩いている。

疲れきったような旅人は、遠くに村の灯りを見つけ安堵の表情を見せる。

旅人は、クード村に着き民家に泊めてもらえることになった。

この辺りの村にしては、豪華な食事を与えられ旅人は満足そうに食べる。

食後、旅人は暖炉をすすめられ、その前で暖をとる。

やがて、旅人は不自然なほどの眠りにつく。

そこへ、狭い家の中に収まりきらないほどの、村人が入ってくる。

その全員が、旅人を見ている。

そして、襲いかかる。

思わず、アルフレッドはアズの目を塞ぐ。

これは、子供に見せてはいけない。

けれど。


「大丈夫、あたし大丈夫だから。覚悟決めてる。全部見るって決めたから」


アズの意思を確認し、アルフレッドは手を外す。

その間にも、旅人は村人に引き裂かれ、食いちぎられた。

その断末魔の顔が、その目が偶然だろうがアズとあった。

その目から光が消え、旅人は命を落とす。

だが、旅人の受難はそこで終わらなかった。

バラバラになった亡骸を村人は掲げ、歩き出した。

その村人の目に光はない。

旅人の最後のように、彼らは死んでいるように見える。

村人たちは、村近くの洞窟に入っていった。

アズたちの視界も、洞窟に入る。

そこには、やせぎすの男がいた。


「持ってきたか。若い男の、か。まあいいだろう」


男は、地面に魔法陣を描き、その上に旅人の亡骸を置いた。

そして、長い呪文を唱える。

呪文に応じて、亡骸が赤い球体に変じて魔法陣の上に漂う。

その全てが、赤い球体になると男は締めの呪文を唱える。


「我が声に応じ、姿を顕せ魔族よ」


宙を漂う赤い球体が一つに集まり、その場に穴をあけはじめる。

が、ほんのわずかの時間で穴は消えた。


「失敗か。やはり、若い女の亡骸がいいのか」



それを見ているアズが震えている。


「おい、落ち着けよ、アズ」


「違うの、あたしじゃない。魔族が怒ってる。これは契約違反だって」


「そう、件の男は正式な手続きを経ないで魔族を召喚する方法を模索していた」


「なんだってそんなことを」


アルフレッドの問いに、過去の男が答えるように呟く。


「俺だってできるんだ。フェルアリードやベルオレワだけが黒魔機関じゃない。俺の、俺が見つけた簡易な魔族召喚を必ず」



「聞いての通りじゃ。奴はルイラム出身の魔法使い。そして、クード村の村人を操り自身の研究をしていたのじゃ」


「こいつ、ぶん殴っていい?」


「これは、過去の幻影じゃ。殴るのは無理じゃな。それに、ここからが核心じゃ」


そうだった。

これはカインの過去。

まだ、カインの傷のことに触れていない。


突如、ルイラムの魔法使いの洞窟が爆炎に包まれた。

あっという間に、魔法使いも村人も魔法陣も燃え尽きた。

視点は、村の方に戻る。

そこには、炎に包まれた村とその上空を羽ばたく赤い竜の姿があった。

竜の上には、深紅の鎧をまとった戦士が立っている。

過去の幻影であろうと、その力の欠片は感じられた。

そして、二人はあれが炎の王だと確信する。

先程の洞窟の炎上も含め、この大火災を引き起こしたのが彼だということも。

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