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カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
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砂の王国05

俺たちはラーナイル王都を出発した。

行程は、王都~オアシスの村~流砂の洞窟と約1日の道のりだ。


そのあいだに何度かモンスターの襲撃にあった。


このあたりは炎の精霊の力が強いらしく、火をまとったトカゲのサラマンダーや炎の塊が浮遊するヒートボールなどのモンスターが出現する。


一度、2メルトほどの身長を持った赤銅色の肌のオーガが襲いかかってきた。


「カリバーン!」


俺の声にカリバーンが前に出る。

そのままオーガの拳の一撃を両手剣で受ける。


「アベル!」


続く指示に魔法使いが反応。


「“杖”の第3階位“アイススパイク”」


起動呪の簡略化と属性呪の破棄、必要最低限の詠唱で放たれたにしては高威力の氷の槍だった。


相当な術者だ、と俺を含め全員が認識した。


それに、この間途切れないオーガの攻撃を防御し、なおかつ攻撃も何発かいれていたカリバーンも半端ない。


そして、俺の指示の前にカリバーンに回復呪文を重ね掛けしていたルーナもよくわかっている。


アベルの魔法で体勢を崩したオーガにカリバーンが追撃、さらに俺が跳躍し斬りつける。


俺の着地と、オーガが倒れるのはほぼ同時だった。


連携は完璧だった。

強いて言えば、リーダーの存在意義の薄さだったが、それはまず置いておこう。


ほとんど問題なく俺たちは夕刻にオアシスの村についた。

ここで休息し、明日以降を洞窟の探索にあてる予定だ。


村とはいえ、定住している村人は少ない。

近くにモンスターの巣もあるし、防御はこころもとなく、常駐の衛兵もいない。


こんなところに住みたい奴がいないのも道理だ。


結果、この村はこの先に進みたい旅人や冒険者の補給基地になっていた。


実のところ、ラーナイルのほとんどのオアシス村はそんな感じだという。


栄えているのは王都だけ、と商人が言っていた。

まあ、宿屋くらいはある。

二部屋とり、男女でわかれた。


「なあ、カリバーン」


「なんだリーダー?」


「魔法銀とはいえ、金属製の全身鎧なんて重くないか?」


「!」


素朴な疑問だった。

俺は、熱さと動きやすさを考慮してこっちに来てからずっと革鎧をつけている。

ていうか、革鎧くらいじゃないとこの砂漠で満足に動けないと思うのだが。


「それは僕も疑問に思っていました」


会話に参加したアベルが続ける。


「例えば僕のこのローブ」


とアベルは青いローブの裾をひらひらと動かす。

冷たい風が頬を撫でた。


「熱対策に中の温度を冷たく保つ、清水のローブというものを作成してきました」


「作成ってアイテム・エンチャントかよ。若そうに見えて、凄いんだなあんた」


俺が驚いたのも無理はない。

アイテム・エンチャント技術は、アイテム製造と魔法の両方に精通する魔法使いの秘技とされ、その技術は北の魔法王国ルイラムがほぼ独占している、と言われる。


魔法使いギルドの高位の連中ならできるかもしれないが、このアベルという若者がそれだという可能性は低いと思う。

ということは、こいつはルイラムの魔法使いか。

それがどうだ、ということはないがなんでわざわざ、とは思った。


カリバーンはカリバーンで、さっきの質問は忘れたかのように剣と鎧の手入れに集中している。


「別に凄いってことはないです。僕の国じゃ、子供でもエンチャントできます」


「できねえよ」


少なくとも、俺はできない。


「ところで、アベル。あの詠唱破棄と省略でなんであの威力がでる?」


カリバーンが今度は、質問する。

確かに、それは俺も聞きたい。

魔法をかじっただけの俺でも、凄さがわかる。


「それはまあ」


歯切れが悪いアベル。


「まあ、僕の秘密ってところですかねえ」


「秘密って」


まあ、そいつの発見した技術はその人のものだ。

軽々しく聞くものでもないか。


「それよりカインさん。あなたにも聞きたいことがあるんですが」


「なんだよ?」


「あなたの指揮ですが、誰に師事したんです」


「指揮?」


「はい。例えばオーガとの戦い。僕らが動く前に指示を出してますね。

いくら四人で、バランスのとれたパーティーといっても組んだばかりの僕らができる連携じゃなかった。その秘密教えてもらえますか?」


「別に秘密とかそういうわけじゃない。ただ教えてもらったのが“大賢者”と“軽業師”だっただけで」


二つの単語に、二人の仲間が反応した。


「“大賢者”と“軽業師”ですって」


「伝説の五人のうち二人から教えを受けた、だと?」


二人は俺にとって家族そのものだったし、そんな凄い人たちだったと知ったのも数年前だ。

まあ、そのおかげでこうして無事に冒険者を続けていられる。

とても感謝している。

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