幕間 魔道帝国と魔法王国
かつて、大陸を支配していた古代魔道帝国。
強大な魔力を持つ皇帝を頂点に、18の魔法騎士団を擁し、多くの大魔法使いを従えた巨大国家だった。
その落日は、反乱、暗闘、内紛に彩られた。
その結果。
心労によって皇帝が崩御。
その喪中にも関わらず、後継者争いが起こった。
帝国を支えてきた宰相も家族ごと暗殺され、多くの貴族が巻き込まれた。
宰相の養子となっていた天才魔法使いレイドック・ダスガンは養父と婚約者を失い、魔王となった。
帝国各地が魔王の配下である魔法使いや魔獣に襲われ、帝国を見限った属国が次々に反旗を翻した。
四大精霊王や魔道皇帝、黒の王らの活躍で魔王は封印された。
だが、その次の皇帝の代でついに帝国は崩壊。
千年の長きに渡る混乱の時代が訪れたのだった。
魔道帝国の魔法技術や、秘宝を隠匿し保存しようとした集団があった。
魔道学院の院生や、指導者などが中心となったこの一団は帝国の崩壊に際し、技術や秘宝を持ったまま北へ移動する。
北の片田舎の村に拠を構えたその一団は、その地にルイラムと名を付け、魔道帝国の遺産を守ろうとした。
ルイラムは中原の混乱に巻き込まれず、その技術と血を残して今に至る。
そして先代の王ジャンバラ・ダ・ルイラムがこの国と大陸に混乱をばら蒔いた。
それが、フェルアリードをはじめとした若き野望の魔法使いたちである。
強い意思と、好奇心を持った彼らは例外なく禁術に手を出した。
死霊術や、生け贄魔術、悪魔召喚などだ。
そして、彼らは大陸中に散った。
いろんな国に取り入り、その国の要職につき国を内部から蚕食していった。
最近も、砂の王国ラーナイルで内乱が起きた。
それもルイラム出身の魔法使いフェルアリードが原因であったという。
ガッジール戦役の際に、各国の連携が今一つだったのはこの混乱のせいだったともいう。
その現状が変わったのは、十年ほど前だ。
ルイラム国内でクーデターが起きた。
ジャンバラの娘であるイヴァ・ルイラムが腹心の魔法使いとともに国王を幽閉、退位に追い込んだ。
イヴァ・ルイラムは史上最年少の第13階位到達者であり、“氷雪の女王”の称号を得ている。
それから、イヴァの配下は次々と潜伏していたルイラム出身の魔法使いを狩りはじめた。
その結果、イヴァはルイラム国内で磐石の地位を築き諸国の信頼も得ることになった。
そのルイラムに一人の冒険者が近づいてきていた。
炎の左目を持つ青年。
黒き羊の予言に導かれ、彼が魔法王国に現れる。