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カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
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神聖皇国編05

これ以上の炎の王の侵攻はない、との確約を黒騎士はした。

確かに、市街にとどまった炎の王は止まった、との報告があった。

カリバーンは黒騎士をとりあえず信頼することにした。

そして、二人で闇の塔を登り始めた。


今日二回目の登りだ、とカリバーンは思った。

それ以上の思考はしない。

敗北した以上、勝者に従わなければならないだろう。


「炎の王は、魔のモノを滅ぼそうとしている」


突然、黒騎士が言葉を発した。


「魔のモノ?」


「その過程で、いろいろやる。村を焼き、魔法使いを倒す。そして、一つの国を滅ぼす」


「グラールホールドが何をしたというんだ?」


「それを今から見に行く」


魔のモノを滅ぼそうとしているという炎の王。

そして、それに狙われたグラールホールド。

その関係だけがカリバーンにはわからなかった。

けれども、教皇が関わっているような嫌な予感はしていた。


闇の塔の謁見の間は、誰もいなかった。

きらびやかな装飾もそのままだった。


「何もないように見える、が」


黒騎士の声に、カリバーンも目を凝らす。

確かに何も見えない。

しかし、かすかな違和感を覚える。


「今、見えるようにしてやろう」


黒騎士が手を振った。

そこに高濃度の魔力が発生し、手の軌跡に呪文が浮かぶ。

謁見の間の白く清浄な景色は突如崩れた。

どす黒い魔力が渦を巻く、血と肉の敷き詰められた狭い部屋。

それが、目の前にあった。

おそらく、幻影を見せられていた。

誰も気付かなかった高度な呪文と、それを破った黒騎士に寒気を覚える。

特に黒騎士だ。

手の一振りで空間に呪文を刻み、そこに魔力を注いで魔法にする。

聞いたこともない魔法技術だった。


「上にいくぞ」


黒騎士の声に、現実に戻される。


「あ、ああ」


と答えにならない声がでる。

容量を越え始めているのを自覚した。

アルザトルス神殿は、余人の立ち入りを禁止している。

だから、カリバーンも入ったことはなかった。

そして思った。

ここまでとは思わなかった。


神殿内は血まみれだった。

詰めていたであろう神官らの死骸がそこら中に転がっている。

内部には、巨大な魔法陣が描かれている。

黒騎士は、それを調べ始めた。


「ふん。ナス式の魔法陣か。魔法技術には優れていたが、それだけの国だったな、確か。その遺産、というわけだな」


それは、十数年前に滅ぼされた国だったと、記憶している。

なぜ、そんなものがここにあるのだ。


「この魔法陣は、何なのだ?なぜ、神殿がこのようなことに?」


「おそらくだが。この魔法陣は魔王ロンダフを召喚しようとしている」


「な、に?」


外から来たカリバーンですら知っている。

邪悪な魔王ロンダフの話を。

さっきのナス王国だってそうだ。

そんなことになれば、グラールホールドを中心に大陸中の、国家が動くことになる。

炎の王の懸念は、これだったのだ。

ロンダフとグラールホールドを天秤にかけて、グラールホールドを滅ぼしたほうが被害は押さえられる、と考えたのだろう。


「まあ、安心しろ。ロンダフの召喚は失敗している」


「失敗? ……そうか。失敗か」


「まあ、代わりに何か呼び出したようだが。それは本人に聞いてみないと、なあ?」


黒騎士の声に反応したかのように魔法陣の奥から、教皇が現れる。

「猊下。これはなんです?」


「余を貶めようとする、そこの黒騎士の策謀よ。騙されるでないぞ」


教皇の言葉に、傾きかけるカリバーンだったが、次の黒騎士の言葉に踏みとどまる。


「そうか、だったらその血にまみれた法衣は何かな?」


確かに教皇の法衣の裾がべっとりと血に染まっている。

表情を変える、いや失う教皇。

さきほどまでの笑みはない。


「うむ。仕方ない、ここはここまでだ」


教皇は、冷たい声で言った。


「猊下、いったい」


カリバーンの問いを無視して教皇は続ける。


「さきほど言っておったな黒騎士よ。ロンダフの召喚に失敗している、と」


黒騎士が頷く。


「違うのだよ。余が召喚したのは、ロンダフの力。邪悪に満ちたその力よ」


その声とともに魔法陣から、4つの影が現れた。

歪な人形の黒い影。

これが、魔王の力なのか?


「余の新しき玉座のため、滅びよ!!」


紡いで、待機させてあった呪文を教皇は解き放つ。


魔法陣の中心に黒い炎が灯る。

それが弾け、炎の球体となり拡散する。

激しい爆発が巻き起こり、その衝撃は神殿を吹き飛ばした。

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