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カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
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砂の王国18

戦いは熾烈を極めた。


巨人の拳、蹴り、体当たりを食らう覚悟で突っ込む。

一発一発が致命傷になりかねない高威力だが、ルーナの結界で無理矢理突破する。

一撃ごとに結界が割れていくのが見えるが、気にしてられない。

もちろん、こちらも少なくないダメージを与えている。

奴の耐久力が持つか、ルーナの限界が来るか、あるいは俺の限界までか。

左目の熱も、もはや感じられない。

魔力の供給が切れそうなのか、俺の容量から溢れそうなのか。

一瞬、油断したのか、集中が途切れたか、タイミングがズレたか。


俺の前から結界が消えた。

目の前には巨人の拳。

唸りをあげて襲いくる白い塊。

ルーナを責める気はない。

むしろ、よくやってくれた。

数十回の高速結界展開を実現できるレベルにたどり着いたことも嬉しい。

ああ、でも約束守れなかったかな。


衝突の音と衝撃。


だが、予想していたダメージは無い。


俺と巨人の拳の間に男が立っていたからだ。


彼が、攻撃を防いでくれたのだ。


「確か、聞かれたことがあったなカイン。なぜ、重装備の全身鎧を着るか。それはな、守るためだ。私の後ろを全て守るためだ」


白い鎧のその男は言った。


「カリバーン!!」


そこに極太の光の束。

巨人の拳が、腕ごと消失する。

複合魔法でしか出せない高出力。


「パーティー会場を探すのに手間取りまして。遅れて申し訳ありません」


青いローブの青年は言った。


「アベル」


「お二人とも無事でしたのね」


パーティー四人が再び集った。


「あの闇に飲まれたあと、私は夢中で闇から脱出した。砂漠に放り出されて途方に暮れたが、幸いラーナイルに戻る部隊の一つと合流し、状況を知った」


「僕は、闇に飲まれる前に効果範囲からでて転移せずにすみました。ですが、あの洞窟に一人取り残されて半泣きで帰ってきました」


あの闇って脱出できたんだな。


「二人とも助かった」


さっきのことに、素直に礼を言う。

そして、続ける。


「全員で奴を倒す」


「前衛は私が守る」


「僕の魔法ダメージには期待してください」


「皆さんの傷は私が癒します」


パーティーは巨人を向いて戦いを再開する。

再会の喜びもそこそこに。


パーティーの連携が上手くハマっているのを感じる。

カリバーンが防ぎ、俺とアベルがダメージを与え、ルーナが回復する。

ただそれだけのことだったが、ダメージ効率が二倍以上にあがった。


ルーナが結界を張る頻度も落ち余裕がでる。


俺も捨て身の攻撃をするのも控えられる。


鉄壁の防御のカリバーン。


魔法をぶっぱなすアベル。


パーティーを組むメリットはこれだ。

俺一人だと、回避重視で長期戦か捨て身の短期決戦くらいしか、戦術はない。

だが、ルーナと組めば回復と結界のサポートで攻撃特化の戦法が取れる。

そして、カリバーンとアベルが合流したことで安定的な高ダメージ連発という状況に持ってこれた。


勝てる。


希望でも、推測でもなく、これは事実だ。


「ルーナ!一気に決める。カリバーンに最大限の結界を」


「まかせて」


さきほどからの高速結界展開にも関わらず、フェルアリードに匹敵する強度の結界が生まれる。

あまりの強度に巨人の拳も弾かれる。


「アベル、でかいのを打ち込んでやれ」


「わかってますよ」


アベルが呪文を詠唱し始める。

詠唱破棄でもそれなりの威力を叩き出せるアベルが詠唱するということは、凄まじい威力が期待できる、ということだ。


「カリバーン、耐えろよ」


「無論だ」


巨人の蹴り、拳、体当たりをルーナの結界が全て受けきる。

アベルの呪文は半ばだ。

巨人の再度の拳がついに、結界を割る。


そこへ、巨人のタックル。

生身のカリバーンが受け止めた。

グシャリ、と音がする。

カリバーンの立っていた位置に血溜まり。


「カリバーン!?」


俺の呼び掛けに力強い声が答える。


「守る、といったはずだ」


生きていた。

白い鎧も半壊していたが、カリバーンは生きていた。


「この猶予、無駄にはしません」


アベルの絶叫とともに、直径5センチメルトほどの光の束が巨人の右肩を貫く。

それだけでは終わらない。

光は消えず、斜めに巨人を切断する。


「“杖”の第十階位“レーザーディバイド”」


滑らかな断面を見せながら巨人の上半身は、ずるずると落ち、その呪われた命は終わる。


かに見えた。


「“杯”の第十階位“リボディアサイン”」


不吉な声色とともに巨人の断ち切られた体が闇色に包まれ、その闇が触手のように伸び、絡み合い、一つとなる。


その闇が晴れると、そこには傷一つない巨人の姿があった。


俺たちの脳裏に閃いたのは、絶望、だった。

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