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カインサーガ  作者: サトウロン
魔王の章
159/410

幕間 十人の魔導師

薄暗い部屋の中にボウッと灯りが灯った。

魔力に反応して蝋燭のように輝く魔法灯だ。

照らし出された室内は、古めかしい調度品で埋め尽くされている。

そして、十の影。


「皆。千年ぶりに全員が揃った。まずは重畳」


調子のいい声が響き渡る。

黒い髪、黒い目、若い男。

仕立ての良い、高級な衣装を身にまとい、皮肉そうに口元を歪めている。

マハデヴァ、だ。


「お前が仕切るのか?」


青いスカーフを首に巻いた年齢不詳の男。

今は青いローブを着ている。

ニーラカンタ。


「誰が仕切っても良い。我らはそもそもそれほど仲良くはないはずだ」


白髪だが厳めしい顔、鍛えられた体躯。

ハラ。


「それもそうだな」


と短く言う女性。

長い髪はまとめ、黒い槍を寄りかかるように握る。

マハタパス。


「なんでもいいよ。何の用なんだ?」


若い男。

ガンガーダラ。


「俺はどうでもいいよ。早く戦いたい」


赤い髪をドレッドにまとめ、五本のダガーを爪のように手にした男。

バイラヴァ。


「ふむ。これでは建設的な意見などでようもないな」


進行に興味をなくしたように目を瞑る男。

ブロンドの巻き髪が美しい。

いわゆる美中年。

プーテスバラ。


「ならば、私が仕切らせてもらおう」


誰も聞いてない。

パシュパティ。


「私はカインさえ倒せればそれでいい」


蛇の目の男。

ムンダマーラ。


「まとまりのない。まさに我らは混沌の使徒」


牙の仮面の男。

シャンカラ。


まさに、まとまりのない集団だった。

しかし、この十人が古代魔道帝国を傾けた魔導師達であることを忘れてはならない。

ハラが苛つき、剣の柄に手をかける。

マハタパスが嬉しそうに槍を握る。

ガンガーダラが、ニーラカンタが、ムンダマーラが、プーテスバラが、バイラヴァが、パシュパティが、シャンカラが。

皆、武器や魔法をいつでも撃てる状態に構えている。

一触即発の状況だった。


「やめなよ」


マハデヴァの声が全員に差し込まれるように聞こえた。

それが、上位存在の人間との会話方法だと気付いて、何人かが顔をしかめる。


「僕らは皆、偉大なる魔王様のしもべ。しもべ同士が相争って、魔王様に何の得があるというんだい?」


「で、あるならばお主が口を慎めばいいだけの話。吾が輩らは好んで争おうとは思っておらん」


ニーラカンタが言った。


「口を慎む?誰が?僕は君らが誰も仕切らないから、口を出しているだけさ」


しれっとした口調に、全員の敵意がマハデヴァへ向く。

しかし、マハデヴァはそれを何とも思ってないようだ。


「まあ、そんな話はいいじゃないか。今日集まってもらったのは二つ報せたいことがあるからなんだ」


「なんだ?」


柄に手をかけたまま、ハラが応じる。

決してマハデヴァを信用してはいない。

しかし、話が進まないのはごめんこうむる。


「良い知らせと悪い知らせがある。まずは良い知らせなんだけど、魔王様はあと一月以内に目を覚まされる」


場にざわめきがおこる。

近くなっていたことは皆勘付いていたが、正確な時まではわからなかった。

一年か、五年か、はたまた十年以上か。

千年待つのに比べればなんてことのない年月だが、待つだけなのは辛い。


「悪い知らせ、とは?」


冷静なプーテスバラが尋ねる。


「我らを駆逐し、魔王様覚醒を妨害せんとする輩がいる」


十人全員が、何らかの人物を思い浮かべた。

マハデヴァは見透かしたように、一人ずつ名を呼んでいく。

十人の名を。


「アーサー・カリバーン」


「アズ・リーン」


「ベスパーラ・ランスロー」


「モルドレット・ガッジール・バニジュ」


「グウェン・アル・ヴィア」


「シュラ・アンティラ」


「エミリー・ダンフ」


「ディラレフ・ストレージ」


「アベル・イノセンス」


「カイン・カウンターフレイムの十人だ」


マハデヴァの言った名前に、何人かが反応する。


「でもね。こいつらはまあ問題じゃないんだよ。そりゃあ、それぞれこの時代の最強クラスの力量は持っているだろう。けど、僕らが油断しなきゃ撃退できる」


「じゃあ、何が問題なんだ?」


ダガーをもてあそびながら、バイラヴァが聞く。


「こいつらの背後には“黒騎士”がいる。僕らが力を合わせてやらないとこいつは倒せない」


珍しく、マハデヴァが真面目な顔をして言った。

それほど重要なことなのだ、と言われずとも十人全員が理解していた。


「油断せずに、力を温存し、倒す、か」


ハラが言葉を深く吐く。

そして、周りに聞こえぬよう小さく呟く。


「カイン、今度は本気で相手をしてやろう」



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