先生の特別授業
なんていうか、説明って難しいなぁ……
------学校 教室
「おぉー、速かったねぇ」
「先生、案外エグイっすねぇ」
「君は、存外メルヘンだねぇ」
俺は不満をぶつける視線を投げかけるが、アクラは俺の恰好を見てにやにやとしている。
まぁ、こんなローブ付けてたらそう言われたってしゃーねーか。
元が『赤ずきん』なだけあってローブは女用みてぇなもんだしな。
「さて、じゃあ、約束だし君の質問に答えようかなぁ?」
「俺の質問?」
「ん、そぉそぉ。行く前に言ったでしょ? なんで先生たちが魔王を倒しに行かないのかって。それについての答えだよぉ?」
「あ、あぁ確かに言いましたね」
「そ、だからそれについてのレクチャー、っていうか、先生の特別授業ぉ? 先生はりきっちゃうなぁ~」
キャハッ、とか言いながら黒板に何かを書き込むアクラ。
何書いてんのかわかんねぇけど、雰囲気的に地図、か?
「はぁい、レン君。これが何か分かるかなぁ?」
黒板に書いた地図を指差し、俺に問う。
馬鹿にされてんのか、これに重大な物が隠されてんのか…………わかんねぇな。
わかんねぇなら、無難な答えが妥当だろ。
「地図、っすかね」
「そ、だーいせーいかーい! よくできましたぁ。偉いね」
「で、それがどう関係するんですか?」
「ん、ここに書いてあるとーりね、この国は三つの同盟国と、けっして友好的とは言えない関係の国七つに囲まれてる訳なんだけどぉ、ここまでは分かるよねぇ?」
「はぁ、まぁ、常識っすから」
「基礎的な知識をレン君が持ってくれていて先生はとてもうれしいなぁ。で、この星がそれぞれの国の軍事力の指標だと思ってねぇ。同盟国は軒並みこの国よりも低い星二つか一つなんだけど、それ以外の国は高いんだよねぇ」
黒板のそれぞれの国の名前の書かれた地域に星を書き込んで行くアクラ。
友好関係に無い国はほぼウチの国より強いな。
「で、先生たちの国の軍事力は見て分かるようにけっして、高くないの。でも、自衛する分には十分なくらいなんだよぉ? はい、ここでレン君に第二問、この国の自衛力もとい軍事力はどうやって担われているでしょーかぁ?」
「そりゃ、ふつーに考えて国の軍が……」
ここまで答えてふと気がつく。あの館にすみついてたユナにさえ勝てない様な軍が充分な自衛力を誇れるのか? 何かほかにあるんじゃないか?
「気がついたかなぁ? この国の自衛力の要は軍じゃない、学校の教員なんだよぉ。」
「でも、なんで?」
「むかし、この国の勇者、あ、今の王様だよぉ? がね、和解しようとしなかった魔王の討伐を任された時にぃ、この国の優秀な兵士をね、ぜーんぶつれてっちゃったの。で、慣れない長旅の影響とかもあってぇ、帰ってきたのは十分の一にも満たない人数だったの。で、一から兵士を養成するには時間がかかりすぎるからぁ、国中から有志を募ったの」
「なんの?」
「…………人体改造を受け入れてくれる人をだよぉ」
「っ!?」
今の発言は、今までアクラの口から聞いてきたどんな言葉よりも衝撃を受けた。
人体、改造? んなもん非合法中の非合法だろ。特にアクラは女だろ? 女が人体改造を受けるって事はほぼイコールで、子供が産めない体になる。女にとって何よりつらい事だと、とんでもないバッシングを喰らったから禁止されたはずだろ。
「そんな怖い顔しないのぉ、レン君。いつもの澄まし顔じゃないと先生そわそわしちゃうなぁ」
俺の表情が変わったのを察して、いつもより明るくおどけた口調で話すアクラ。
「仕方がなかったんだよねぇ。周りには同盟国は居ても、隣接して友好的じゃない国もいる状況。そんな中で国の守りをいつまでも緩めておく訳にはいかないでしょぉ? だから、どんなに危険でも、非合法でもぉ、それに頼るしかなかったんだよぉ?」
「それくらい、俺だって分かります。でも、だからって……。それに、人体改造って、二度と普通の環境じゃ働けないでしょう」
「そうだねぇ。酷い人は日に一回はメンテナンスを受けなくちゃいけないし、全身に怪我とか手術痕が残るし、なにより精神に異常をきたす場合が多いしねぇ。先生のこの口調とか、たまにでる子供みたいな行動って、そーゆー後遺症の一種らしいんだよねぇ」
口調は、確かに少し舌足らずだったり、語尾を伸ばしたりするがキャラ付けとかじゃなかったのか。
それに子供みたいな行動って、家に来てたときに服の袖で遊んでたやつか。
「この服だって、体の傷痕を隠すために着てるんだよぉ? まぁ、さいわいってゆーのかどうか知らないけどもぉ、先生はメンテナンスいらないからねぇ、ある程度自由だよ? でも、普通の所じゃ働けない、こんな動きにくい服着てて、こんな喋り方でぇ、取り柄が強さしかなかったらぁどこも雇ってくれないしねぇ」
「…………だから、国が補償として教員として雇ってる」
「そーゆーことー。さすがレン君、飲み込みが早いねぇ。だから、先生たちはどれだけ強くても討伐にはいけないんだぁ。 強ければ強いほど、国の守りの要だからねぇ。でもぉ、いくら先生達が強くても人手が足りないのは変わらないから、国の兵士も討伐にはいけない。だから学校の強い子たちを集めて十分な支援をして討伐に行かせようとしてるんだぁ」
「よーく解りました」
「ん、飲み込みの速い子は先生大好きだよぉ?」
「先生は辛くなかったんですか?」
「ん? 心配してくれるのぉ? だめだよぉ、先生子供っぽいから、優しくされるとすぐ好きになっちゃうからぁ」
えへへーと、年に不相応なやけに子供っぽく笑うアクラ。
「なんちゃってぇ、先生はそんなに軽い女じゃありませんよぉー」
「あ、はい。そっすか」
「あー! ひどーい、そんなに軽く流されちゃうと先生傷ついちゃうなぁー」
「笑顔でそんなこと言われても、説得力に欠けるどころの話じゃありませんよ」
「んふふー、レン君と話してると退屈しないねぇ」
ニコニコと絶えず笑顔なアクラ。
能天気っつーか、なんつーか、ホントに人体改造受けたのかってくらいに明るいな。
いや、むしろ受けたからこそのハイなテンションなのか?
「さて、そろそろぉ、他の子たちも帰ってくる頃かなぁ? みぃんなそろったら、次の予定とか話すからねぇ」
そうアクラがいうと、本当に足音が聞こえてくる。
能天気に見えても、さすが教員か。
あー、にしてもだるい。次の予定ねぇ、学科についてよくわかんねぇから、何すんのかもわかんねぇな。ま、説明を待つとしましょうか。聞いた所で分からないかもしれないが。




