その6
オレは帰り道を考えながら歩いていた。それにしても黒川にはビックリだった。
教室の姿は猫かぶってたんだな~あの2人良い感じだ。
確か久志は3年に彼女がいる。オレだけじゃんかよフリー。1人寂し過ぎ……。
なんか暗くなってきたよ。気分転換が必要だ。
オレは電車に乗ってそのまま家に一旦帰って、ギターを持ってまた駅に向かった。
今日は歌ってやる。オレは路上で歌うのが好きだった。
中学の頃から駅で歌っている。ちなみにオレはバンドではベース担当だがギターも弾ける……というかケイゴより上手いと思う。
オレは、いつものポジションに座り歌いだす。曲はバラバラ、最近のヒットナンバーからオレが生まれる前の曲まで。何人かの人が立ち止まって聴いてくれる。たまにお金をくれる人もいたり。
何曲弾いて歌ったか忘れた頃、目の前に工藤が座っていた。
オレが気付いて歌うのを止めると……
「何で止めるの?原君って歌上手かったんだね」
「おまえの家って、この駅だったの?」
「そうだよ」
全然気付かなかった。この前同じ方向だと気付いてたけど、降りるのも同じだったとは。
「知らなかった。おまえ知ってたの?」
「さっきからおまえ、おまえって名前憶えてって言ったのに」
わざとらしい甘えた声が気になったがオレは言い直す。
「あ〜悪い。工藤は知ってたのオレと同じって」
彼女は嬉しそうに笑った。
「知ってたよ」
彼女は、オレが歌い終わるまで座って聴いていた。
オレがギターをケースにしまい帰ろうとしたら、彼女も立ち上がる。一緒に帰りたいらしい。
面倒くさいが、時間も遅いし彼女を送って帰る事にする。
話を聞くと家は結構近いらしい。2人で歩いていると彼女はオレの携帯番号とアドレスを聴いてきた。
「ねえおしえてよ」
「やだ」
即答です!
「へるもんじゃないでしょ」
「へる」
やっぱり即答です!
こんなやり取りが続いたのだが、しつこいので結局アドレスだけ教えた。オレ弱過ぎ。
彼女を家に送ってオレは家に帰った。あ~なんか今日は疲れた。