その12
オレは金城の少し後ろを付いて歩いている。金城はさっきから黙ったままだ。
暇で何となく周りを見渡すと、何度か歩いた事がある道だと気付いた。
ケイゴの家に行った時に通った道だここ!! 思い出した~。こういうのって少し嬉しい。
「もうすぐ着くよ」
「おう」
オレが自分の記憶力に挑戦している間に家の近くに着いたらしい。
「あそこね」
「え、あのデカイ家?」
金城が指でさしている所と違う近くの家を言ってみた。金城の表情が暗くなった。
「そこは黒川さんの家だよ」
やばい地雷踏んだ!
つかこんな家近かったのかよ……。
絶句しているオレに金城は苦笑しつつ言う。
「置いてくよ」
自分に家に入ってしまった。後れないようにオレも入る。
そのまま金城に付いていくと玄関を上がって、金城の部屋? に通された。
結構片付いている……ではなく金城さんよ警戒心ゼロですか?
「適当に座っていいよ」
そう言うとクッションを抱きつつ座る。あ、何か可愛いかも、オレは向かい合うように座った。
金城が唐突に喋りだした。
「このくらい家が近いと聴こえてくるんだ~いろんな声が」
何の事だ? 金城は俯きながら涙声で言う。
「結構前から何んだよ。中学の時とか顔赤くしてた時あった……でも泣いているとこは見た事なかったんだ」
俯いていた顔を挙げて金城が続けて言う。涙が頬をつたう。
「私は本当は助けたかったのに、でも高橋君と急に仲良くなったりして、凄い嫌だった」
「……」
「何で私はあんな事言ったんだろう……ごめんなさい」
「オレに謝っても意味ないだろ。遠慮無しに言うと無神経な事言うやつは嫌いだ。けど後悔してんだろ。あの2人はもう気にしてないだろうし。謝れば良いんじゃね?」
「ほんと遠慮ないよ。原君にまで嫌われてしまった」
「別に嫌ってないけど」
「さっき嫌いって言った」
なに意地になってんだか。
「もう金城はあんなこと言わないだろ? だから嫌いじゃないよ」
金城が照れ笑いを浮かべつつ言う。
「そっか。泣いてしまったよ」
「良いんじゃない? 泣きたい時に我慢する事無い」
「聴いてくれてありがとう」
金城が凄く嬉しそうに笑った。
「どういたしまして」