11/15
その11
駅を出ると金城が話しかけてきた。
「どこいく?」
「家帰るんじゃないのか」
「私の家に行きたいの?」
何だその疑いの目は……まあ言いたい事はわかるが。
「家に向かいつつ考えよう駄目か」
「いいよ。こっちだから」
そう言うと、先に金城が歩き出す。オレも後れないように歩く。
何となく黙って2人で歩いていると唐突に金城が言った。
「私の家の方って何もないんだよね」
「そう言う事は早く言えよ」
「今更引き返すのもないよね」
「だな」
「私の家に招待してあげるよ」
「親とか居るとめんどくさいからいいよ」
「うち共働きだからまだ平気」
ぶっちゃけてるよ。それは平気なのか?
「余計まずくない?あ、兄妹は居るのか」
「私一人っ子だけど」
「……」
「一人になりたくないんじゃないの?」
何となくわかった。金城も一人が嫌なんだ。
「招待受けるよ」
そうオレが言うと、金城が嬉しそうに笑った。
ちゃんと笑ったの今日初かな。
「じゃいこう」
オレたちは、金城の家へ行く事にして歩き出した。