君が飛ぶ理由
生まれつき翼を持つ京香。そんな彼女を特別扱いしない友人健太。これは少し不思議で、どこにでもある友情の物語。
「おーい。また泣いてんのか?」
君は、いつも強くて、美しかった。
「みて、あの子が噂の…」
私は、生まれつき背中に翼がある。
テレビに出たり、研究に協力したり。
特別変な被害にあったことは無いが、
忙しい日々を送っていた。
「すみません京香さんですか!?」
「この前NHK出てましたよね!」
通行人に話しかけられるのは日常茶飯事だ。
「あ、、はい!」
私はいつも通り笑顔で対応する。
「わー!すごい本物だ!握手お願いできますか!?」
「あと…つばさ見せてください!」
「……いいですよ!結構大きいので人の邪魔にならないようにこっちに移動しましょうか!」
こんなことはしょっちゅうだった。
プライベートなんてものは私とはかけはなれた言葉だ。
「久しぶり。元気か?」
うおっ、健太からLINE来てんじゃん。
「久しぶりぶりー!元気だよー!そういうお前は元気なのかー!??」
「元気だよ。」
「うそつけ。元気か?ってLINE送ってくる時お前毎回病んでんじゃん。笑」
「就活上手くいかなくて…」
「すぐ行くから待ってろ。どこいんの?」
「いつもの駅前のビルの屋上」
「死ぬ気か?笑」
「迷ったさ」
「お前死んだらぶっ飛ばす」
君は、その翼で現れた。
「おーい。また泣いてんのか?」
君は、いつも強くて美しかった。
「また飛んできたの……?人目とか気にならんの、?」
京香はふーっと息を吐きながら翼を折りたたむ。
「人目大歓迎。目立ちたがり屋だしね。飛んだ方が交通費かかんないじゃん!」
「まあそうだけどさ、、」
「んで?話聞かせてもらおうか。」
「……てことがあってさあ、中々上手くいかないわけよ。」
健太の声は弱々しい。
「ふーん、私就活の事とかよくわかんないからなあ。ほら、私って就活から逃げてきたじゃん?逃げた人間もいるなかそうやって頑張ってる健太凄いよ。尊敬してる。」
「……京香にしてはいいこと言うな。」
「おいどういう意味だそれは」
なんだかんだまた君に助けられてる。
京香とは、小、中の学生生活を一緒に過ごし、高校で離れ離れになったが、大学生になって再開した。
「健太!?健太だよね??」
「え、、あの子って翼ある子じゃなかった…?」
「ほんとだ!超有名人入学してきてるじゃん!」
生徒たちが京香の声で一斉に振り向く。
が、そんなことはお構い無しに京香は健太に駆け寄る。
「京香!?」
「ちょちょ!LINE交換しよーよ!健太はどこの高校行ってたんだっけ?」
「俺はあの…西の……」
「あー!健太うちより頭良かったもんなー、」
「京香はどこだっけ。」
「私はさ…東のさ…」
「京香昔から成績悪かったよな。」
「何が言いたい」
京香と俺は、昔の思い出を取り戻すように、仲良くなっていった。
一緒に食事に行ったり、俺がメンタルを病んだ時は必ずそばにいてくれたし、4年間を京香と過ごしたと言っても過言ではない。
京香は特別な、大切な友達だ。
相変わらず就活難を極めている中、面接を受けたある会社から合否の紙が送られてきていた。お祈り用紙はもう勘弁だ。恐る恐る紙を開く。
「え!!!内定決まった!!」
僕は早速京香にLINEを送った。
「内定決まったわ。」
京香からすぐに返信が来る。
「え!おめでとうじゃん!!!!!!ちなみに私もテレビでゴールデン出ることなったよ!」
「すごいじゃん。録画するわ。」
京香はいつも強かった。
小学生の頃。俺はいじめられっ子だった。
「おーい。泣いてんのかー?」
「うっ、うっ、うるさい!どっかいけ鳥人間!」
「はー!?心配してんだよ!」
バチンッッ
「うわ!ビンタされた!」
「お前なんで泣いてたんだよ」
「……いじめられた。」
「どいつに?」
「あいつらだよ……。いつも教室でうるさいグループ。中村くんたち……。」
「……わかった。」
次の日、中村くんたちは俺に謝りに来た。京香にボコられたらしい。
その時思ったんだ。なんで俺なんかにって。
でも今になってわかる。京香は人の痛みがわかるんだ。人のことに対して本人よりも真剣になれる。俺はそんな京香が人として好きだ。
ある日、俺は京香に呼び出された。
「京香?お前からこの屋上に呼び出しとか珍しいな。」
「そうだね…。」
「よく俺が病んだ時にこの屋上に来るけど…」
「……」
京香は俯いて黙ったままだった。
「…京香??」
「健太…辛いよ。」
俺はその時初めて京香の涙を見た。
「私ってさ、なんのために生まれてきたんだろうね。それが分からなくなっちゃったよ。」
「えっ…それは…」
「せめて生まれてきた意味を無理矢理作るために人のために一生懸命やってきたけどさ、何一つ分からないよ。…健太はなんのために生まれてきたかわかる?」
俺は、答えられなかった。
京香はずっと強いように見られてただけなんだ。
とうとう生きる意味を見いだせなくなるまで、京香は自分を騙し続けていたんだ。
「健太。死なせて」
京香は翼を折りたたんだ状態でフェンスを乗り越えて屋上から飛び降りようとした。
その時、俺はもうどうしたらいいか分からなくなって、とにかく京香を助けることに必死で、フェンスを乗り越えて京香を抱きかかえようとした。
しかし、足を滑らせて俺は屋上から身を投げ出してしまった。
「うわっっっ!!!!!」
「え!?」
京香が屋上から驚いた様子でこちらを見ている。
あ、俺死んだわ。どうしよう。
目に映る全ての光景がゆっくりに感じられた。
俺はただ、京香に死んで欲しくなかっただけなのに、俺が死んだらだめじゃないか。
短い人生だったな。
その瞬間俺は翼に助けられた。
「おんも!!!!!!!」
京香は滑空しながら一生懸命翼をバタバタさせて屋上にたどり着いた。
「なにしてんの健太!!」
「ははっ…。」
安堵と恐怖が入り交じった変な笑いが出た。
「何とか言えよ!!!」
「ほら。助けてる。」
「……え?」
「人をさ、助けることで京香は目が輝いてる。」
「……そんなこと言うために健太はあんな危ないことしたの……?」
「ああそうさ。人騒がせだのドジだの好きに言え。ただ、俺は京香が生きてればそれでいいんだ。」
俺は泣き出してしまった。
「はは、、また泣いてんの…。……でも私は、未だに生きる意味がわからないよ。」
俺は、ただ京香に生きて欲しいというエゴに取り憑かれていた。
「そんなこと考えたってしょうがないだろ!生きる意味なんてなくたって、人に生きて欲しいって思われてんだったら生きろよ!!俺は!!お前に生きて欲しい!!!!!!」
京香はビックリしていた。
「……はは、、なんだそれ。そんなんお前のエゴじゃん。」
「そうだよエゴだよ。でも、俺は京香がいなくなったら誰をこの屋上で待てばいいんだよ。」
「……そうだね。」
京香は泣きながら笑った。
結果的に京香を救えたのか分からないけど、
とりあえずはこれで良かったんだ。
それから2年が経った。
京香からいつも通りLINEが来た。
「やっほー。今日屋上で待っててくんね?」
「どうして?」
「なんか健太最近元気なさげじゃん。」
「バレてた?」
「バレてた。」
屋上についたとき、また京香は飛んで現れた。
「ふー!マフラーあっつ!」
「あのさあ、なんでいつも飛んでくるの??」
健太は少し呆れた顔をしながら言う。
「えっなんで??」
「普通に夏とか汗かいてんじゃん。それなりに体力使うんでしょ。飛ぶの」
「んー…。まあそうだけどさ…。」
私は健太の喜ぶ顔が好きだ。
小学生の頃は、私が飛ぶところを見る度にかっけえ!と喜んでいた。その度に私も嬉しくなった。
未だに健太の前では無理してでも飛びたくなる。
健太の喜ぶ顔がみたくて。
「健太、カフェオレ飲みたい。」
「落ち込んでる俺に奢らせるつもりか?」
「そうだよ」
「そうだよ言うな」
「ところでなんで落ち込んでんの。」
「……プレゼン失敗した。」
「どーせそんなこったろうと思ったよ。」
「どーせって…。」
「よーし。今日は私がキャラメルラテを奢ってあげよう。」
「甘いの苦手……。」
「つべこべ言わず駅前のカフェ行くぞ。」
俺と京香は、駅前のカフェへ向かった。
京香はカフェオレを飲みながら健太を見つめる。
「健太ってさ、私の事特別視しないよね。」
「それは友達だし…。良くなかった?」
「いや。特別視しないのがすごく心地いい。今までの友達たちはみんな、私とつるんでる事がステータスって感じの子達ばっかりで好きじゃなかった。」
京香は雪空を眺めながら言った。
「なのに健太は普通の友達として私の事見てくれるもん。」
「だって京香は京香だから、、。翼があるからどうって訳でもないし、かっこいいとは思うけどな。」
「厨二病こじらせてんのかー?」
「そりゃ翼生えてる友達いたらこじらせたくもなるよ。」
俺はキャラメルラテを飲みながら雪空を眺めた。
「案外美味いな…。」
今日も君は、強くて美しい。




