介入
最近、図書館に通うのがすっかり習慣になった。
別に勉強がしたいわけじゃない。
ここは時間を潰すのにちょうどいいし、「問題あり」とされている本の棚にある漫画を読むこともできる。
それにしても、どうして校長は漫画を読むのをそんなに嫌うのだろう。
「それは読書じゃない」だって?
馬鹿馬鹿しい。
まるで、どこかの天才養成校にでもいるつもりなのだろうか。
トロフィーを持ち帰らなければ怒鳴り散らし、
学校の名前が「全国有数」に入らないだけで騒ぎ立てる。
確かに、昔はそうだったのかもしれない。
だが、もう何年も、この学校は何一つ結果を残していない。
それでも、この場所は家から逃げるための避難所になった。
正確に言えば、外にいる時間を稼ぐための場所だ。
居心地がいいわけではない。
——だが今日は違う。
私は漫画の頂点を見つけてしまった。
棚の奥に隠れていた、宝石のような一冊。
それは、また生きていたいと思わせてくれるほどの作品だった。
「次も読みたい」と、心から思わせるほどに。
……そんな日に限って、
ヘンリーが「勉強しに」来る。
ああ、彼のいびき。
例えるなら、死にかけの水牛だ。
鼻水とよだれにまみれ、
数日後には絶命しそうな勢いで喘いでいる水牛。
図書館の一番奥に移動しても、
その音は容赦なく耳に届く。
時々、誰かをロープで絞め殺したくなることがある。
これは比喩だ。
……今回は例外だった。
殺したいわけじゃない。
ただ、何度か殴って、舌を引き抜いてやりたいだけだ。
私の苦痛と同じだけ、味わってもらいたい。
だが残念なことに、この世界には「法」というものが存在する。
刑務所、あるいは更生施設行きになりかねない行為は、控えるしかない。
自分への苛立ちに耐えきれず、
私は廊下を歩くことにした。
この時間帯、校内に人影はほとんどない。
「やあ、クロエ」
本を抱えたまま声をかけられる。
「図書館から?」
「うん」
「ヘンリー、どこかで見なかった?」
「ああ、いたよ。あそこ、寝てる」
「ありがとう。探してたんだ」
ベッカは、どこにでもいる典型的な女の子だ。
だから、わざわざ紹介する気もない。
ツインテールで、甘すぎる香水をつけている。
少し嗅いだだけで、三型糖尿病になりそうな匂いだ。
それに、いつもやたらと感じがいい。
どうしてそんなに親切なのか、不思議でならない。
前世では、世界征服寸前までいった口ひげの男だったのかもしれない。
そうでなければ説明がつかない。
ああいう人間は、大抵、
目も当てられない過去を抱えていて、
それを償うために善行に走っているものだ。
……それとも、ただの嫉妬だろうか。
オレンジ色の空が、帰宅の時間を告げる。
残念ながら。
それでも、気分は少し軽かった。
あの漫画のおかげだ。
結局、第一巻を読み終えることができた。
次は貯金しないと。
第二巻が、あの棚に置いてあるとは思えない。
鼻歌を歌いながら歩いていると、
廊下の先に影が見えた。
それは、激しく左右に揺れながら、
一瞬で消えた。
少し不安を覚えつつ、私は校舎の出口へ向かう。
その時——
鈍い音が床に響いた。
ほとんど感じ取れないほどの振動。
右手の廊下で、何かが落ちる音。
好奇心に負けて、近づいた。
靴音を立てないよう、慎重に。
緊張のせいで、私はいつの間にか這うように進んでいた。
そして、見てしまった。
女。
巨大な、金髪の女が、
別の女の首に噛みついている。
血。
血が牙の間で踊り、
白い制服との対比で、異様なほどに映えていた。
呻き声が、処刑の伴奏のように響く。
腹部から、
内臓がきしむような、生々しい音が聞こえる。
左手の指の動きに合わせて、
体が歪に蠢いていた。
その指先には、
爪と呼ぶにはあまりにも鋭い、
赤く染まった鉤爪。
首元から全てを吸い上げる姿を見ながら、
私は気づいた。
どれだけ近づいても、
彼女は私の存在に気づいていない。
信じられなかった。
これは幻覚ではないのか。
確かめたくて、触れたくて、
私は手を伸ばした。
——その瞬間。
腕が、私の首を掴んだ。
心臓が止まった。
女が、私を見ていた。
どうやって、こんな速度で動いたのか分からない。
唇は血に濡れ、
鼻を突くほど強烈な匂い。
光る瞳が、
暗い廊下を淡く照らし、
その圧が、直接思考を押し潰す。
私は解離したように、言葉を失っていた。
「……運がいいわね、子供」
女は言い、首から手を離した。
「もう、ここでの用事は終わったところだから」
「誰にも言わないほうがいいわ」
嘲るように続ける。
「どうせ、誰も信じない」
ふらつきながら後退し、
私は踵を返して走った。
残された、最後の意識で。
世界が回る。
体は震え、何度も躓いた。
——この町で、一体何が起きているの?




