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5***













































































****

*****



















日が暮れて一日の終わり。

俺はランプの灯りが揺れる薄闇の中、ベッドに寝転んで、ネズミを手にじゃれつかせていた。


「暗殺かー、ファー姉は見る目があるなあ」


部屋に時計は無い。

2階のダイニングに掛けられた柱時計が、ボワワン、ボワワンと鳴った。

俺には聞こえないけれど、じゃれつかせていたネズミが、耳をぴくぴくさせ後ろ足で立ち上がる。


「そろそろいいかな?」


真夜中、皆が寝静まった頃に、俺は動き出す。

窓を開き、外壁のくぼみに指を引っ掛けて張りつく。


「それじゃ、窓のカギ閉めといてね」

「チュウ」


俺はネズミに手を振り、外壁をするすると登っていく。

屋根伝いに歩き、屋敷の東端までやってくる。

その先には高い城壁があり、その向こうには畑が広がっていて、さらにもっともっと向こう。


大きな河が行く手を遮るように流れていて、その向こう岸。

そこはもう魔物が住む、闇の森だった。

俺はネズミと協力して、コードウェル家の宝物庫からくすねてきた、黒曜石のナイフを腰のベルトから引き抜く。


それは空間を切り裂き、ある場所へと転移するためのマジックアイテムだった。

起動させるには、魔力が必要だけれど大丈夫。

俺には魔力はなくても、ガルド13の能力があった。

右手と黒曜石ナイフを「融合」させ、ナイフに(こも)っている魔力でナイフを起動させる。


この7年間、ただ朝稽古で指を飛ばされてただけじゃない。

俺はじっくり年月をかけて、ガルド13の能力を自在に発動させるコツを掴んでいた。


なぜゲームキャラの能力が使えるのか?

その理屈は未だに良く分からん。

ただ分からなくても、実際に使う、使わないって言うのは別の話だった。

能力が使える。

今の俺にはそれで充分。


黒曜石のナイフが、グラスハープのような音色を響かせた。

すると一瞬で、屋敷から川沿いに廃棄された砦へと転移する。


朽ちた城壁から見る、黒々とした森。

そこはもう、魔物の生息する闇の森だった。



    *



「さあ、どんな感じになっているか。楽しみでしょうがない」


数日前のこと。

俺はいつものように屋敷を夜抜け出し、国境の街「バベル」でフラフラしてたら、ちょっとした話を小耳に挟んだ。

それは冒険者組合(ハンターギルド)が、闇の森に新しく出来た「陸棲型のイカ(デス・テンタクル)」の巣を討伐すると言う話。


この巣のせいで、デス・テンタクルに追い立てられたゴブリンが、町近くに出没してトラブル続きらしい。

だから元凶の巣を叩く。


どうやら大掛かりらしくて、50人以上の部隊(パーティー)を編成して討伐なんだってさ。

それを聞いて、俺はわくわくが止まらなかった。

だってそれ、完璧にレイドボス狩りじゃないかっ。


と言うことで、俺はその狩りを見物したいのだった。

本当は参加したいけれど、7歳じゃお話にならない。


「このクソガキがっ、生意気言ってんじゃねえ」とか言われて、蹴飛ばされるだけだ。

だから今回は、見物でガマンしといてやる。


「広大でシームレスな森林フィールドに、新しく実装されたレイドボスを、皆で狩りに行く。

みたいな感じ? あーくっそ、いいなーっ」


この世界に生まれて、俺はもう7年経った。

随分とこっちの水に慣れたもんだ。

けれど俺の心は未だに、「VRMMO・ディガウーサ・ビートゥルス」を求めていた。


もうプレイできないと諦めて忘れたつもりでも、こういうイベントがあると、熱い思いが沸々と湧き上がる。ああ、たまらねえ。


「くっそー」


狩りの場所はよく分かんないけど、まあ、何とかなるでしょ。

俺は森の奥深くに分け入る。


GARARARARARARA!

「うひゃあっ」


あんまり、何とかなってなかった。

森に住む魔物「俊足の擬態者(アクセル・カメオ)」が、俺をエサと勘違いして追いかけてくる。

いや、食おうとしてんだから、俺はしっかりエサなんだろうな。


アクセル・カメオは簡単に説明すると、めっちゃ足の速いカメレオンみたいな魔物。

体長は3メイル。

見た目が気色悪いのもあるけれど、なんだか足の速いゾンビに通じる、ゾッとしたものを感じる。

お前が速く走るの、ズルいって突っ込みたくなる。


こいつは俊足で、さらに射程の長い、伸び縮みする舌が厄介だった。

狙いが定まらないように、森をジグザグに走って逃げた。

俺はそんな状況が、楽しくてたまらない。


「はっはー! この俺の動きに付いて来れるか、カメ野郎!

俺がギャラクティック・リーパーのMVPを、何回とってると思っ――」


ぺちょ。

背中に何か、温かいモノが張りついた。

見なくても俺なら分かるね。

それは、カメ野郎の舌だった。


「あ」


しまったー! 気持ちは現役でも、体は7歳児だった。

こういう縛りプレイは嫌いじゃないが、残機1しかないのが洒落(しゃれ)にならない。

俺は、舌の引き戻しの早さに圧倒される。

柔らかいくせに身が引き締まって、イカの足みてーな舌だ。





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