第23話:書かれた僕だけが、生きている。
※本話には軽微な性的表現が含まれますが、直接的な描写はありません。
登場人物の心理と“記録されること”を通じた愛の形を丁寧に描いています。
掃除なんて、久しぶりだった。
埃がたまるほど広い部屋じゃない。
だけどミオが買ってきた新しい芳香剤の匂いが、どこか落ち着かなくて――
空気を入れ替えるために窓を少しだけ開けて、ついでに床を拭いて、棚の隅まで布巾を滑らせてみた。
そこに、それは挟まっていた。
硬めの黒いカバー。B6サイズ。
表紙には何のタイトルもない。
けれど触れた瞬間、指先がほんの少し震えた。
――直感だった。開けてはいけないものに、触れたような。
でも、すぐには開けなかった。
指先がページを掴んだまま、しばらく動けなかった。
何かが変わってしまう気がした。
けれど――気づいたときには、もう紙の手触りが、掌に残っていた。
ページを、開いていた。
♢
一行目に目が止まった。
「5月17日/朝6:41 起床。起き抜けにまぶたを2回こする。顔色は良好。昨夜の睡眠深度安定。」
文字は小さく、丁寧で、癖がなかった。
鉛筆の筆圧が均等で、まるで記録用の帳簿のようだった。
次のページに目を移す。
「昼12:14/カレー完食。スプーンの速度に乱れなし」
「14:01/わたしの顔を見て3秒以上、微笑む」
「18:20/風呂上がりの髪拭き中、右耳の下に汗疹ひとつ」
息を飲む、というより、呼吸が止まった。
でもなぜかページを閉じられなかった。
それは、日記じゃなかった。
“観察記録”だった。
僕の、ひとつひとつの動き。
呼吸のリズム、食べる速度、笑うタイミング。
それが、言葉として、日付と時刻とともに、正確に書き残されていた。
ページをめくるたびに、自分の“記録された痕跡”が積み重なっていく。
「22:30/私の中に2回も出してくれた」
目が止まった。
文字は変わらず冷静だった。
でも、その内容だけが、そこにぽつんと熱を灯していた。
恥ずかしさや、怒りや、恐怖――どの感情にも結びつかない。
ただ、その記述の存在を、受け止めきれなかった。
なのに、次の瞬間――ふしぎなことに、ほんの少しだけ、胸があたたかくなった。
こんなふうに僕を見ていた人が、今までにいただろうか。
どれだけ近くにいても、
どれだけ触れていても、
誰かの“視線のなか”にいるという感覚を、僕はずっと持てずにいた。
でも今、このノートの中で、
僕は“誰かの注視の中で、生きていた”。
異常、なのかもしれない。
いや、きっと異常だ。
普通じゃないし、気持ち悪いと言われたって否定できない。
でも――僕は、嫌じゃなかった。
♢
誰にも見られていなかった自分を、ミオは全部、見てくれていた。
ノートの紙の手触りが、いつもより生々しく感じられた。
ページをめくるたび、誰かに心の奥を撫でられているような感覚に、全身がざわついた。
最後のページには、日付だけが書かれていた。
“5月21日”。今日の日付だった。
でも、その下は、まだ白紙だった。
まるで、“これから記録される今日の僕”を待っているようだった。
僕はノートをそっと閉じた。
そして思った。
誰かに“見つめられている”ということが、こんなにも安心するなんて――知らなかった。
ノートを閉じてからも、文字の影がまぶたの裏に焼きついていた。
「5月17日 朝6:41 起床。まぶたを2回こする」
「昼12:14 スプーンの速度に乱れなし」
「14:01 わたしの顔を見て3秒以上、微笑む」
たったそれだけの言葉が、こんなにも重たく、やさしく感じられるなんて思わなかった。
思い返してみれば、思い当たる節はたくさんあった。
確かに、朝――僕が布団から身体を起こす前に、ミオはよく隣でじっとこっちを見ていた。
目が合うと微笑んで「おはよう」と言ってくれていたけど、それまでの静かな視線には、ちゃんと意味があったのかもしれない。
話しているときも、彼女はたまに手を動かしていた。
指先で、膝の上をなぞったり、テーブルの縁をなぞったり。
それが、ただの癖だと思っていたけど――
記録を、取っていたのかもしれない。
僕が笑ったタイミング、食べる速さ、言葉の選び方。
全部、ミオの中では“データ”として積み重なっていた。
彼女は、僕を見ていた。
ただの視線じゃない。
“見つめていた”。
観察して、測って、残していた。
……怖い、と感じるのが普通なのかもしれない。
監視されていた、と言ってしまえば、それはきっと正しい。
でも、僕は――そのことに、不思議と安心していた。
気づかれないままでいるより、ちゃんと“見つめられていた”ことが嬉しかった。
たとえば、僕が黙ってうつむいたときの表情。
寝返りを打つ前の呼吸の変化。
誰も気にしないような、細かすぎる仕草や反応を――
ミオは、ちゃんと拾ってくれていた。
それは、ただ一緒にいることよりも、ずっと深い“つながり”のような気がした。
僕が知らない僕を、ミオは知っていた。
ミオの視線の中で、僕は“存在”していた。
それが、どんなに細かくて、異常で、支配的でも――
僕はそこに、安らぎを感じてしまった。
あの日々の会話が。
触れられた手のぬくもりが。
夜、重なり合った時間さえも。
♢
全部、ただの“記憶”じゃなかった。
彼女の手元に、記録として、確かに“残されていた”。
人は、忘れる。
でもミオは、忘れないようにしてくれていた。
それが、嬉しかった。
♢
ベッドの上で泣いた夜のことも。
僕がはじめて「ミオ」と名前で呼んだ夜も。
息が浅くなって、手を握り返せなかったあの朝も。
すべてが、彼女の中に“残っていた”。
僕のことを、こんなふうに見てくれる人なんて――
他に、いるはずがない。
そう思ったとき、少しだけ喉の奥が熱くなった。
“愛されている”という言葉が、あまりに曖昧で頼りなく思えるくらいに、
このノートは、確かな形で僕を“肯定”していた。
記憶じゃなくて、記録。
思い出じゃなくて、事実。
誰にも見捨てられないように。
誰にも奪われないように。
――彼女は、僕を“書きとめて”くれていた。
静かだった。
あの行為のあと、窓の外の風の音さえ遠く感じるほど、部屋は沈黙に包まれていた。
ミオは僕の腕の中にいて、柔らかく息をしていた。
ベッドの端に、あの黒いノートがあった。
ページの角がわずかに開いていて、そこからは、ついさっきまで見ていたミオの文字の気配が、まだ残っている気がした。
僕は、迷いながら、口を開いた。
♢
「ねえ……これ。ずっと、書いてたの?」
声は囁きに近かった。
ミオの肩がわずかに揺れる。
彼女はゆっくり顔を上げて、僕の方を見た。
その表情は、すぐには読めなかった。
でも次の瞬間――ミオは、ふっと笑った。
少しだけ困ったように。
少しだけ申し訳なさそうに。
でも、そのどれよりも“優しくて、あたたかい笑み”だった。
「うん……ごめんね」
その言葉は、まるで謝罪の形をした愛情みたいだった。
ミオは身を起こして、ベッドの端に腰をかける。
裸の背中にシーツがかかっていて、肩だけが冷たい光に晒されていた。
「ユウのこと、全部……忘れたくなかったの」
そう言ってノートをそっと撫でた。
「見逃したくないの。たとえば、朝の寝癖とか、
声のトーンとか、ごはんの食べ方とか……。
ユウのひとつひとつが、ぜんぶ、大事で……記録しておかないと、わたし、怖くなっちゃうの」
ミオの指先は、ノートのページの端をなぞりながら、つづける。
「それにね、書いてると、安心するの。
“今日も、ユウがそばにいる”って、ちゃんと感じられるの。
ほんとうに、ここにいてくれるって、確かめられるの」
その言葉は、まるで子どもが宝物を話すようだった。
胸が、きゅっと音を立てて狭くなった気がした。
「……でも、それって、ちょっと……」
僕は言いかけて、言葉を途切れさせた。
“怖い”とか“変だ”とか。
本当は、そう言わなきゃいけなかったのかもしれない。
けれど、そのときのミオの横顔があまりに静かで――
あまりに、正直で――
僕は、言えなかった。
代わりに、ほんの少しだけ、声にしてみた。
本当は、拒否しなきゃいけないのかもしれなかった。
誰かに見張られるような日々は、僕の過去を思い出させる。
“母”の目の奥に潜んでいた、あの乾いた光。
「いつも見てるからね」という言葉が、ずっと呪いのようにこびりついていた。
笑顔も、声も、視線も、すべてが監視の一部だった。
――あの頃の僕は、“気づかれないように息をする”ことに必死だった。
けれどミオの目には、あのときの“怖さ”がなかった。
見張るんじゃない。
僕を“見つめている”だけだった。
それだけなのに、少しだけ泣きそうになった。
もしこれが、ただの錯覚だったとしても――
今は、そう信じたいと思った。
ほんとうに、ずっと――書いていたんだ。
そう思った瞬間、ふと脳裏に浮かんだのは、過去に見た光景だった。
ミオはよく、ひとりでキッチンの椅子に座っていた。
僕が洗面所に行っているとき。
シャワーを浴びている間。
ベランダで外気を吸っているとき――
どれも、ほんの数分、数秒のすれ違いだと思っていた。
でも、思い返すと必ずそこには、“音”があった。
鉛筆の芯が紙を滑る、乾いた擦過音。
ページがめくられる、ごくかすかな破裂音。
彼女が指で文字をなぞるような、リズムのない沈黙。
ミオはそのたび、僕の“消えた時間”を、書きとめていたんだ。
僕がそこにいないあいだも。
言葉を交わさないあいだも。
視界にいなくても、“存在”を見失わないように。
まるで、僕という輪郭が“空気に溶けてしまわないように”、ページの上に縫いつけていたみたいだった。
……それって、どれだけ、さびしかったんだろう。
“誰かがいなくなる”ことに、ミオはきっと、耐えられなかった。
いなくなってしまうこと。忘れてしまうこと。
思い出せなくなること――それが、何よりも怖かったんだ。
だから、書いたんだ。
♢
言葉で。時間で。動きで。
僕のすべてを、“記録”という形で縫いとめていた。
あれは確か、寝る前のことだった。
ミオは珍しく僕に背を向けて、机に向かっていた。
僕は声をかけず、そのままベッドに潜りこんだ。
でも、耳だけは、ずっと音を追っていた。
鉛筆の先が紙をなぞる、規則正しい音。
それはまるで、誰かの“命”を一文字ずつ確認するみたいに、丁寧で、静かだった。
しばらくして――ミオが、そっとページをめくった。
その音に、僕の心臓が一瞬だけ強く脈を打った。
きっといま、
僕のことを“書いている”のだと気づいたから。
……気づいていたのに、知らないふりをしていた。
怖くて、知らないふりをしていたのかもしれない。
でもいまは、違う。
もう、その“記録”が――僕にとって、祈りのようなものに思えるから。
ミオは僕のことを、ずっと“生かし続けよう”としていたんだ。
ページの上で。
言葉の中で。
日付の下で。
僕が「ここにいる」ことを、消えてしまわないように、証明し続けてくれていた。
そのことに、どうしてもっと早く気づけなかったんだろう。
僕は、ミオの言葉を聞きながら、じっと彼女の背中を見つめていた。
白いシーツが、背骨のラインに沿って落ちていた。
その細い肩が、どれほどの重みを抱えていたのか、ようやく分かった気がした。
それでも、書くことをやめなかったんだ。
誰かの“今日”を残し続けるために。
――それはきっと、愛よりも、祈りに近い行為だった。
「……でも、わかる気がした」
ミオはその言葉に、目を伏せて、息を吐いた。
それは、安堵の吐息だった。
僕は、そのまま彼女の背中に手を伸ばした。
肩をそっと包むように触れると、ミオは振り返って、また笑った。
その笑顔に、もう“違和感”なんてなかった。
不自然さも、気味悪さも、全部、消えていた。
ただそこに、“僕を愛してくれている”という事実だけが、静かに存在していた。
ミオが言うように――
もし“記録”が、ふたりを繋ぎとめる手段なら、
それは、きっと、悪いことじゃない。
だって、こんなに僕を見てくれる人なんて、他にいるはずがないのだから。
シャワーの音が止まり、浴室の扉を閉めた瞬間、部屋の静けさが戻ってきた。
湯気がまだ身体にまとわりついていて、肌の表面がほんのり火照っていた。
バスタオルで髪を軽く拭いながら、ふと視線を上げると――
机の上に、あのノートが置いてあった。
黒い表紙。無地。重たい沈黙のような存在感。
けれど今の僕には、それが“あたたかいもの”に見えた。
触れられないぬくもりのような、確かさを持った何か。
ゆっくりと歩み寄る。
手を伸ばすことはせず、ただ少しだけ身を屈めて、そのページをのぞき込んだ。
今日の日付が、左上に書かれていた。
“5月21日”
その下には、まだ何も記されていなかった。
空白だった。
まるで、“僕の今日”が、まだミオの中にだけ残っているようだった。
行動も、言葉も、表情も――
このノートの中に記されて初めて、“一日”として完成する気がした。
ページを閉じようとしたとき。
背後で、バスタオルをまとったミオの気配が近づいてきた。
素足のまま、静かにフローリングを歩く音。
振り返ると、濡れた髪が肩に張りついたミオが、微笑んでそこにいた。
「今日のユウは……ね、ちゃんと見てたよ」
その言葉に、胸の奥がきゅっと締まった。
嬉しい、とか、安心、とか、そういう明確な感情じゃなかった。
ただ、“見られていた”という事実だけが、確かにそこにあった。
ミオはノートに視線を落とし、ページの空白を見つめてから、
そっと手のひらを添えた。
「ちゃんと、書いておくからね。……今日のことも、ユウのことも」
ミオの指先が、ノートの端に触れた。
その仕草は、聖典でも扱うように、慎重で、丁寧だった。
……いや、違う。もっと“決まりきった手順”のようだった。
指の角度。ページをめくる速度。視線の動かし方。
すべてが、何百回と繰り返されてきた動きに見えた。
まるで“儀式”のように。
ノートに触れるミオの表情は、どこか祈っているようだった。
今日のユウは、ちゃんと生きていたか。
記すに値する価値が、あったのか。
ページに並ぶ文字のひとつひとつが、僕という存在の“証明”になっていた。
……その証明が、彼女の手によって書かれることが、どうしようもなく安心だった。
僕がちゃんとここにいて、
ここで呼吸して、
ミオと目を合わせて、
紅茶を飲んだことが、
――ノートの上に“存在したこと”として残る。
ただの記録じゃない。
それは、ミオの愛のかたちだった。
そして、僕がいま信じられる、唯一の真実でもあった。
その声は、とてもやさしかった。
何かを押しつけるでも、縛るでもなくて――
ただ、私を“覚えておく”という静かな祈りのようだった。
僕はその場に立ち尽くしたまま、何も言えなかった。
ミオがページを閉じる音だけが、部屋にふわりと落ちた。
“見られている”というのは、怖いことだと思っていた。
けれど、違った。
ちゃんと誰かの目に、自分のすべてが映っているということ。
記録されて、残されて、存在が証明されるということ。
それは、孤独とは反対の感覚だった。
“誰にも見られていない自分”が、世界のどこにもいないという不安を、
このノートが、静かに救ってくれた気がした。
ミオの手が僕の手に触れた。
冷えていない。ぬるくて、やわらかくて、濡れた髪の先が肩を撫でた。
その接触ひとつひとつが、
今この瞬間も、“記録されている”という予感と共に胸に刻まれていく。
何も言わず、ふたり並んでベッドに向かう。
音はなかった。
でもそこに、確かなものがあった。
ページの上にまだ残された“空白”が、
明日には“愛の証拠”として文字で埋められていくことを――
僕はもう、疑っていなかった。
……空白は、可能性だった。
明日、笑ったかもしれない。怒ったかもしれない。
どんな顔をして、どんな声で、どんな呼吸をしていたか。
そのすべてを、ミオが“記す”ことで決まっていく。
そう思うと、心が落ち着いた。
ページが空白である限り、
僕はまだ“ミオの中で完成していない”存在だ。
でも、きっと明日には埋められる。
彼女の手で、僕の一日が“意味づけられていく”。
それは、自由の終わりだった。
けれど、僕にとっては“安心の始まり”だった。
自分で何かを決めることが、もう、こわかった。
だから、誰かに決めてもらう方がずっと楽だった。
……ミオの中にいる僕が、“ほんとうの僕”なんじゃないかと、
少しだけ思ってしまった。
“記録される”ということが、こんなにもやさしいものだなんて、知らなかった。
“見られる”ことで、ようやく「存在できた」僕。
それは、自由の終わりであり、安心の始まりだった。
でも――このノートを読むたび、
僕は“自分の言葉”を、少しずつ忘れていく気がする。
かつて僕は、言葉で自分を繋ぎ止めようとしていた。
わかってもらえなくても、伝えることだけは手放せなかった。
けれどいまは、違う。
僕が何を思ったかより、『彼女がどう書き残したか』のほうが、本当のような気がする。
……それが、愛だとしても。
ページを閉じても、ミオの文字が、頭の中で鳴り続けていた。
丁寧で、冷静で、歪みのない書体。
それはミオの“声”よりも正確で、記憶よりも強く僕の中に残っていた。
――きっと僕は、これからもこのノートを読むだろう。
今日の僕が、明日のどこかで“書かれていた”ことを確認するように。
その一文字一文字に、「存在してもよかった」という許可をもらうように。
怖いことだと、思う。
だってそこに“僕の意志”は、どこにもないのだから。
でも、楽でもあった。
何も考えず、ただ記録されるままに、存在を委ねること。
――そんなふうに、誰かに“自分”を預けてしまえたら。
思考も感情も、全部“あとから知る”という生き方。
ミオの手を通して、ようやく自分が“何者だったか”を理解する生き方。
そう思うと、少しだけ息がしやすくなった。
ページの余白が、もう怖くなかった。
そこに何が書かれるのかを、僕はただ、受け入れることができる気がした。
“誰かの言葉のなかでしか生きられない僕”――
それでもいいと思ってしまったことが、たまらなく、やさしかった。
たとえそれが、ゆっくりと自分という存在を失っていく過程だったとしても。
たとえそれが、“愛”という名前のなかで静かに沈んでいく溺死だったとしても。
――それでも、もういい。
♢
ちゃんと見てくれる誰かがいて、
ちゃんと記してくれる誰かがいて、
僕が「ここにいた」と言ってくれる誰かがいるのなら。
それだけで、僕は……救われたような気がした。
たとえ、僕という存在が、もう曖昧なものになっていたとしても。
ここまで静かに、読み進めてくださって、本当にありがとうございます。
今回のお話では、「見られること」や「記録されること」が、ただの監視や束縛ではなく、“救い”として作用していく関係を描きたいと思いました。
本来なら、不安や恐怖を呼び起こすはずの視線や観察の行為。
けれど、それがもし、“忘れたくない”という祈りから生まれたものだとしたら――
その行為はきっと、歪でありながらも、ひとつの愛の形になりうるのではないかと。
ユウの“存在を委ねる感覚”と、ミオの“記録という儀式”が交わったとき、
ふたりは「自由」という輪郭から、そっとはみ出していきます。
でもその先にあったのは、怖さではなく、静かな安堵だったように思います。
そしてこの作品も、いよいよあと二話で第一章が完結を迎えます。
ここまで読んでくださった皆さまの存在に、何度も救われてきました。
もし、何か一言でも感じることがありましたら、感想をお聞かせいただけると嬉しいです。
評価やレビュー、そしてブックマークは、物語を綴るうえでの大きな力になります。
応援のかたちとして、そっと残していただけたら、とても心強く思います。
第二章以降も、ふたりの“かたちにならない愛”を、丁寧に描き続けていきます。
どうか、これからも見守っていただけたら幸いです。




